"機械"(ネットやアプリ)に仕事を振るのが得意だ。自分が面倒だと思うことは大抵まずは、機械が代わりにできないか考える。スケジュール管理をクラウドで管理できるようになってから紙のスケジュール帳を持ち歩かなくなった。一覧性は紙の手帳が優れている。しかし、私のように毎週同じ曜日の締切日が続いたり、一度入れた単発の用事が何度も変更が入ったり、ひとつの案件でいくつもスケジュールの仮押さえたりする者には、やはりネット上に管理する方が便利だ。

他にも、ホテルやフライト予約、映画作品のレンタル、雑誌・新聞・ニュースの購読、コラム執筆、講義資料の作成、タクシー迎車、買い物、その他の情報収集、友人との連絡、自分の仕事の宣伝……大抵のことは、まずは"機械"で済ますようになった。

ところがふと気が付くと、最近は"機械"に使われていると感じることが増えてきた。"機械"はとても親切なので、忘れていればそれはそれで済むようなことまで、丁寧に思い出させてくれる。

ほぼ毎日のように、私の持つ何らかの端末で、ソフトウェアやアプリのアップデートを勧める通知がくる。大して機能や見た目に変わり映えしないアップデートだとは思いつつつも、"セキュリティー改善"や"バグ修正"などと書かれていると、ついつい心配でアップデートせずにはいられなくなる。そのために何分も作業が止まることがある。

自分が登録したからなのだが、ニュース配信アプリや交通情報からは頻繁に定時ニュースや速報、交通情報、天気情報が通知される。ついついこうした最新ニュースには気を惹かれて見てしまう。

SNSからの通知も気になる。スマホ画面を見るたびにアプリのアイコンには"赤丸"が付く。ついつい開いて確認してしまう。

こんな感じで自分の一日の時間のうちの結構な割合を、"機械"に振られた仕事に割くようになった。端末から通知されてくる、ちょっとしたスケジュールやニュースなどは、確認し忘れないようになった。もっとも、今度は何か重要なことを忘れているような気がして心配になることもある。

先日、ふと帰宅途中の電車の中で妻の誕生日だと"機械"に知らされた。自宅近くで申し訳程度の誕生日祝いを買って、それとなく持ち帰った。"難"を逃れた。

危ない、危ない……

やっぱり、"機械"は役に立つではないか。


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサー等を経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2015年4月より東北芸術工科大学にて教鞭をとる。