去年くらいまでは10,000文字くらいの原稿ならば、1時間もあれば一気に書けた。ここ半年はどうにも筆が遅い。言葉が転がらず並びも悪い。ヘタレ感がある。

このところうっかりマジメに仕事をしてしまい、アウトプットがインプットに比べて多すぎるからなのか。「遊び」「襠」「裕り」に欠く。

ココロを拾いに久々に青山を歩いた。

以前勤めていた職場の近く。渋谷二丁目界隈。ななめ小道に革物屋のファクトリーショップがある。今でもたまに来る。狭い店舗に長く居座らせてもらう。

高い。高い。けっこう高い。相変わらず。
でも欲しい。全部手作り。

安物が好きなわけではないが、入口脇にある「きずもの」たちが好きだ。サラの品を買って汚さぬようキズつけぬようハラハラするよりも、きずものを普段使いにするのがいい。気持ちが楽なのだ。

きずものだけが持つ彼らのコンプレックスもまたカワイイ。

新品より個性的。「固有名詞」を持つ。訪れる常連客に、間違って名刺を差し出してうっかり「はじめまして」と挨拶しかねない危うげさがある。

「きず」が持つ独特のキャラをもっと多くの人々に知ってもらい愛着を持ってもらいたい。ちょっとしたプロフィールでも添え書きがあり、優しい注目が集まるとよい。

革小物だけではない。

くだもの、のりもの、服、人、顔……コンプレックスは美しい。


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサー等を経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2015年4月より東北芸術工科大学にて教鞭をとる。