企画関連の仕事をしていると、必ずといっていいほど予定通りに計画が進まずに何らかの修正を行わなくてはならないことがある。

企画を立てたり、計画を作成したりするのと同じか、それ以上に難しく、心を悩ませる。特に問題は、この企画の修正をどのタイミングで行うかということだ。

サンクコスト(埋没費用)の問題

他にいくらよい案が出てきたからといって、最初に立てた企画や計画が、まだ十分に効果が出る前に早急にプランの修正を行ってしまうのは、あまりに忙しない。修正に手を付けるのが早ければ早いほどいいという単純な話でもない。頻繁に修正を行いすぎては結局は非効率になる。

一方、修正を行うタイミングを逃してしまうと、これはこれでタイミングを逸してしまい、取り返しがつかないこともある。後になって「あ~なんでアノ時に修正を決断しなかったのか…」と後悔することも多い。まさに後悔先に立たずだ。

従って結局は、まだ様子をみたいうちには、あまりにドタバタと施策を変えたりして冷静に修正案の準備を進める。そして、もうこれ以上、判断を遅らせると取り返しがつかなくなるというギリギリのタイミングで一気に修正を行う。

これが理想なことはわかっているのだが、このタイミングの見極めが難しい。

もっとも、修正のタイミングを逃してしまった時に負う痛手は、判断が早かった時の痛手に比べると通常は大きい。だから「修正案を考えておいた方が良いのでは…」と思い始めた時には、すでに「なる早(なるべく早く)」で修正を決断してしまった方が良い。

話をあえて堂々巡りさせてしまったが、サンクコスト(埋没費用)という用語がある。サンクコストとは、事業や投資などに投下した資金や労働力の中で、撤退・縮小・中止などを行っても戻って来ない投下資金などのリソースのことをいう。

例えば、映画のチケットを1800円で購入し、映画館に入ったとする。上映時間は2時間の予定である。ところが上映開始から10分後に映画がつまらないことに気がついた。この時、映画を見続けるか、あるいは映画館を出て、残りの1時間50分を有効に使うべきか?

つまらないと思う映画を我慢して見続けた場合は、チケット代1,800円と上映時間の2時間がムダになる。しかし、映画を見るのを止めて退出した場合、1,800円と10分間はムダになるが、残りの1時間50分は有効に利用できる。

つまらない映画を我慢して見続けることに合理性はないが、多くの場合「すでに払ってしまった1,800円がもったいない。元を取らなければ」と考えて、見たくもない映画を見続けてしまいがちである。

やはり決断は早ければ早いほどいいのか??

いやいや、とはいえ冒頭から10分間は少しも面白くはないが、12分目くらいから急におもしろくなり目が離せなくなる、人知れず埋もれていた作品も多くあるからこそ、判断のタイミングに迷うのである。

どのタイミングで修正を行うべきか? 結局答えは出ないまま、いつまでも迷い続けてしまうのだ。


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサー等を経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2015年4月より東北芸術工科大学にて教鞭をとる。