もうすぐApple Watchが販売開始になる。販売前からすでに多くの記事が掲載されている。専門家の方のレポートやレビューがさらに増えていくだろう。ここでは製品の詳細には触れない。
「一本道」と「迷い道」
Appleはとかく"最先端"の製品を開発製造・販売するブランドだというイメージがある。しかしApple Watchが"最先端"の技術を用いた製品かというと必ずしもそうともいえない。ウェアブル端末という意味ではすでに多くの製品が市場に出回っている。必ずしも"最先端"ともいえない製品をどうやってより"使いやすい"製品として市場に提供していくか。新しい"ライフスタイル"として定着させるか。他社製品との違いをどのように打ち出し話題にしていくのか。こういった点に興味がある。
話は変わる。世代による意識の違いも大きいのかもしれないが、1970年生まれの私よりも上の世代の方は"バブル世代"(この呼び方はあまり好きではないが…)と呼ばれている。よくも悪くも消費(時に浪費)に対して前向きで"最先端"を好むと言われる。(もちろん人にもよるが…)一方、私よりも下の世代は"団塊ジュニア"や"氷河期世代"(この呼び方も好きではないが…)と呼ばれる。上の世代に比べると必ずしも"最先端"好みではない。むしろ"個性的"であることを望む人が多いと言われている。消費に対して決して後ろ向きなわけではないが、あくまで慎重だ。
とかく時代が上り調子で真っ直ぐな一本道の時代には"最先端"を往くことが受け入れやすかったのだろう。「今より明日は良くなる」という空気を暗黙のうちに感じれば"最先端"であることにネガティブな要素はない。ところが、時代が"下がり調子"になってくるとそうは言っていられない。「明日は今日より悪くなるかもしれない…」と感じる時代には "最先端"なるものに疑念も生じる。そもそも"最先端"っていった何? という迷いもある。
その昔、日本には終身雇用、年功序列制度というものがあった。この秩序の中で生きた世代の方にとっては企業内での"序列"が最大の関心ごとであったのだろう。この秩序から外れてフリーランスあるいは独立して起業するような方も中には多くいた。とはいえ、大きな時代の流れの中では、まだまだ大企業(ブランド)や金融機関との関係に今よりも重きを置かなくてはならなかったのかもしれないし。「◯◯と取引がある」ことが"変わり者"として一種のステイタスだったのかもしれない。
その後"真っ直ぐな一本道"とは正反対の"霧の中の迷い道"の時代が長く続いた。"最先端"を我先にと突っ走るよりも、チームを組んで互いに声を掛け合い視界の悪い中"正しい道"を選択していくことが多くなった。中にはものすごい勢いで"プチ・バブル"の中を全速力で駆け抜ける人もいたのかもしれないが、多くのバブルは消えていった。
きょう(コラム執筆は4月8日)は東京地方は季節外れの雪(みぞれ?)である。今週から新学期が始まった方、新しい生活を始める方も多いかもしれない。
日本の経済は都心部などでは良くなってきていると報道されているが、これがかつてのような「一本道」なのか。はたまた、あくまで「迷い道」の最中なのかはわからない。Apple Watchに限らずウェアブル端末というのは、こんなどっちに転ぶのか"よくわかない時代"には実に都合がよい。とりあえず私も持っておきたいとは思う。
<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。(現 株式会社東京片岡英彦事務所 代表取締役)主に企業の戦略PR、マーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2011年から国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。2013年、一般社団法人日本アドボカシー協会を設立代表理事就任。