有名人ブログのアクセスランキングをみると、元女子プロレスラーでタレントの北斗晶さんが常に上位にある。一見、見ただけでは、ご家族との何気ない日常が綴られ、楽しげな写真などがアップされているだけのようにも思える。
仮に、私がアクセス数を日々稼がなくてはならないアフェリエイト狙いのブロガーだったならば、何で北斗さんのこうした日常の生活を綴ったブログのアクセス数が多いのか不思議に思うのかもしれない。単にアクセス数を狙うだけであれば、文章やデザインといったテクニックを駆使し、小技に徹すれば、ある程度の「数字」は稼げる。
コミュニケーションのツールとしての成功
一方で、企業のマーケティング責任者(特に大手企業)の視点で考えると、ブログの広告的価値を考える上でアクセス数というのは必ずしも最優先として考える事項だとは思わない。単にアクセス数の多さを求めるのであればネット上ではブログよりも費用対効果の高い広告手法はある。またネット上でのコミュニケーションにこだわらなければ、他のマスコミュニケーションツール(メディア等)を活用すればよい。その点、北斗さんのブログをみると、アクセス数だけでは計ることのできない価値を感じることだろう。
例えば、ブログでは「ファミリー層」を対象に「鬼嫁キャラ」という自分のキャラを前面に出しつつ、ブログだけではなく、マスメディアへの出演情報やマス媒体出演時の話題なども盛り込んで、しっかりとブランディングを行っている。「見た目」は非常に"ほんわか"とした手作り感のある作りだが、コミュニケーションのツールとして、見事に固定ファンの気持ちを掴んでいる。
これこそ「質」の高いコンテンツだと思わず感心してしまった。
もちろんブログにはさまざまなタイプのブログがある。基本的には自分の思ったことを思ったように書けばよい。(もちろん他人の名誉をむやみに傷つけてはいけないことは当然だが…)また、必ずしも「価値」がある必要もなければ、ムリに「質」の高さを追求しなければいけないことはない。
同時に、それなりの多くのアクセスがあり、かつ継続して人気を得ているブログには、一目見ただけでは分からない工夫やこだわり、あるいは、そのブログ運営者ならではのこだわりがあったりもする。これは単に「炎上狙い」の投稿や、「釣り」の記事、あるいは他人の記事やコンセプトの「寸借」(場合によっては盗作)などとは根本的に異なる次元でのクリエイティブ性の高さがある。
デビューから30年、引退から10年以上、一線で活躍しているからこそ、今、自分が、誰に向けて、どういうイメージで、どういうツールを使ってコミュニケーションをしていけばよいのか、肌で感じてきたからこそ、できる広義の「芸風」であり、「自分ブランディング」でもあるのだ。
<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。(現 株式会社東京片岡英彦事務所 代表取締役)主に企業の戦略PR、マーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2011年から国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。2013年、一般社団法人日本アドボカシー協会を設立代表理事就任。