個人情報の漏洩が社会問題となっている。企業や行政が個人に関連する情報を漏洩させてしまうのは大きな問題だ。一方で私は全く違う切り口で個人情報の問題を考えている。それは「セルフブランディング」という視点からである。

自分の情報を「どう公開するか」がセルフブランディングに

自分自身の情報に関して、誰に、どのように、どのタイミングで「漏洩(公開)」していくか。これは自分自身をプロデュース(セルフブランディング)していく上で、非常に大事なことである。もう随分と前の話になる。ある若い企業経営者の女性の方が、「クリエイティブな仕事をしている人の名刺の住所が"足立区"になっていて残念」とブログに書いて、物議を醸したのだ。

「足立区」=「クリエイティブ」な印象でない。 →クリエイティブな仕事をするのであれば、セルフブランディングにふさわしくない →「残念な名刺」

上記の意見について、私はある意味正しいし、ある意味間違っていると思っている。

というのは、「足立区」よりも「表参道」の方がより「クリエイティブな仕事」のイメージに近いことは、一般論としては紛れもない事実だろう。誤解しないでいただきたいのは、これは「良い・悪い」の話ではない。「丸の内」よりも「台東区」の方が一般的に「人情味あふれる地域」というイメージが強いのと同様である。

つまり上記の「セルフブランディング」の考えはその「意味」においては間違っていない。では何が間違いだというのか?

それは、上記の「セルフブランディング」に関する自らの考えを「漏洩(公開)」してしまうことが間違っているのだと思う。簡単に言うと…自己の「セルフブランディング」に関する考え方として言ってる内容は間違っていない。むしろ正しい。でもそれを自分自身の口から言ってしまうことが、最悪の「セルフブランディング」になることがある。

現代社会において、自分の個人情報を一切露出させないというのは非常に難しい。多かれ少なかれ、自分の個人情報を、自分が知らない多くの人が目にしているだろう。「どこの」「誰が」「いつ」「どうやって」「何の目的で」私の預金残高や通院カルテなどの個人情報にアクセスしたかなど想像もつかない。

私自身はすでに「個人情報の漏洩」を完全に防ぐことなどはどだいムリだと割りきって、むしろ、どうやって個人情報を公開するか、セルフブランディングの問題として考えている。公開する個人情報を、時と場合と相手に応じて選択的にコントロールしていかねばと思っている。

自分にとって最も「害がなく有効な」個人情報漏洩という視点で、あえて「セルフブランディング」について考えてみた。


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。