ヴィンテージ機材も含め、多彩なギターアンプやエフェクトのサウンドを再現できるアンプシミュレータ。これまでにもさまざまな製品が発売されているが、ZOOMの新製品「ZFX PLUG-IN」は2万円前後という低価格でありながら、オーディオインタフェースも同梱される注目の製品である。今回はこのZFX PLUG-INをチェックしてみよう。

ギタリスト向けオールインワンパッケージの弱点!?

エレキギター、ベースを弾くプレイヤーには必須の機材がアンプ、そしてエフェクタだ。どちらも過去の製品を含めれば非常に種類が多く、それぞれに音の個性がある。そのためいろいろなアンプやエフェクタに触れれば触れるほど、次々と買い足したくなってしまうだろう。

そしてさまざまなギター/ベースアンプのサウンドをパソコンで再現できるソフトウェアが、アンプシミュレータソフトと呼ばれるもの。現在はアンプに限らず多彩なエフェクトも収録されている製品が多く、ソフト1本だけでいわゆる"ヴィンテージ"と呼ばれるような名機材を贅沢に繋いだ音を出すこともできる。

これまで、このアンプシミュレータは基本的にマウスやキーボードで操作するため、演奏中のコントロールなど操作性は、やはりハードウェアとしてのエフェクタには一歩劣ってしまう。そこでアンプシミュレータの中には、フットコントローラ型のオーディオ/MIDIインタフェースを同梱し、ハードウェアエフェクタと同様の操作性を実現した製品が出てきた。以前紹介したNative Instrumentsの「Guitar Rig 3 Kontrol Edition」もそのひとつだ。

Native Instrumentsの「Guitar Rig 3 Kontrol Edition」はアンプシミュレータソフトの定番「Guitar Rig 3 Software Edition」に専用のフットコントローラ型オーディオインタフェース「Rig Kontrol 3」を組み合わせたオールインワンパッケージ

国内でも近日発売が予定されているIK Multimediaの「StompIO」、同社のアンプシミュレータ「Amplitube 2」や「Ampeg SVX」などのソフトウェアと、オーディオインタフェース「StompI/Oハードウェア」、専用エクスプレッションペダルなどがセットされるオールインワンパッケージ

この種の製品には、足でペダルやスイッチを操作できるという便利さや楽しさだけでなく、パソコンでの音楽制作に必須であるオーディオインタフェースが同梱されたオールインワンパッケージとなっているという利点もある。アンプシミュレータソフトの存在を知り、初めてパソコン&ギターの組み合わせを試そうとする初心者でも、パッケージを購入すれば必要な環境が一度に揃う。同梱オーディオインタフェースも、もともとギタリスト/ベーシスト向けに設計されているため、ギターを直接接続できるHi-Z対応入力端子を備えていることはいうまでもない。

これまで、初心者や若年層にとってこういった商品は価格の高さがネックになっていた。ソフトとオーディオインタフェースがセットになっている前出のGuitar Rig 3 Kontrol Editionは実売価格で7万円前後で、気軽に手を出しづらい。同様のオールインワンパッケージではIK Multimediaも「StompIO」という新製品の発売を予告しているが、楽器店の予約受付価格を見る限りではGuitar Rig 3 Kontrol Editionよりも高価なようだ。このようにオールインワンパッケージに興味はあっても、価格の面から手を出しかねていたギタリストに注目の製品がZOOMから登場した「ZFX PLUG-IN」シリーズである。

驚きの低価格でフットコントローラ型オーディオインタフェースを同梱

マルチエフェクタやMTRといった機材をリリースしているZOOMは、比較的手ごろな価格で豊富な機能を備えている製品が多い。そんなZOOMの新製品ZFX PLUG-INシリーズはアンプシミュレータソフトZFX PLUG-INとオーディオインタフェースを組み合わせた、ギタリスト向けオールインワンパッケージとなっている。

「ZFX STACK PACKAGE」に同梱されるデスクトップ型オーディオインタフェース「S2t」はスタックアンプのヘッドを模したデザイン。Hi-Z入力1系統、ライン入力2系統、マイク入力2系統、ステレオのAUXイン1系統などを備える

「ZFX CONTROL PACKAGE」に同梱されるペダルコントローラ型オーディオインタフェース「C5.1t」。フットペダルと5個のフットスイッチが装備され、足で踏んでZFX PLUG-INをコントロールできる。サイズは390×245×83mmで、重量は約3.2kg

ZFX PLUG-INシリーズには2つの製品があり、どちらもソフトウェアは共通。違いは同梱されるオーディオインタフェースにあり、「ZFX STACK PACKAGE」には「S2t」というデスクトップに設置して使う、一般的な形状のオーディオインタフェースがセットされる。そして「ZFX CONTROL PACKAGE」には「C5.1t」というペダルコントローラ型オーディオインタフェースが同梱される。こちらはマルチエフェクタと同様の操作感で、ソフトウェアであるZFX PLUG-INをコントロールできる。機能的には先に挙げた他社の製品と非常に似ていながら、標準価格はなんと2万4,150円に設定されている。オールインワンパッケージとしては、かなり驚きの低価格だ。

入出力端子はヘッドフォン出力も含め背面側に集中。マイク入力はファンタム電源供給にも対応し、コンデンサマイク、ダイナミックマイク両方の接続が可能。電源はUSBバスパワーで駆動し、ACアダプタは不要

筐体、フットスイッチ、フットペダルとも金属製で、作りは非常にしっかりしている。価格から想像する以上に質感は高い

ソフトウェアは次回に紹介することにして、まずはオーディオインタフェースであるC5.1tをチェックしてみよう。パソコンとの接続はUSB1.1で、電源はUSBバスパワー供給。入力端子はギター/ベースの直接接続が可能なHi-Z1系統、通常のライン入力2系統、マイク入力2系統、そしてiPodなどを接続できるステレオミニプラグのAUXイン1系統となっている。サンプリングビットレートは最高24bit/48kHzまで対応。またMIDI入出力は備えていない。

上面左上には入力端子やファンタム電源の切り替えスイッチ、入力レベルや出力レベルを調整するノブなどが用意される。なお入力レベルメータは搭載されていないが、入力レベルを調整するためのCH1/CH2ノブ左上にはそれぞれピークインジケータがあり、クリップすると赤く点灯する

S5.1tの電源が入っている(パソコンとUSBケーブルで接続されている)状態では、パンチングメタルとなっている筐体からオレンジに光る真空管が透けて見える。なお搭載される真空管はギターアンプのプリ管として代表的な「12AX7」が選ばれている

特徴は一目見てわかるようにフットペダルと5個のフットスイッチを備えており、足で踏んでZFX PLUG-INをリモートコントロールできること。本体上面にはいくつかのノブが並んでおり、入力レベルやヘッドフォン/マスターアウトのレベル調整を行う。またC5.1tをパソコンとUSBで接続するとノブ類の上部がオレンジに光るのだが、これはプリアンプとして搭載された真空管だ。Hi-Zに入力したギター/ベースの信号はTUBEノブを回すことで真空管での増幅レベルを調整したり、SOLID STATEノブを回して真空管とソリッドステートのミックスバランスを調整することもできる。次回はソフトウェアであるZFX PLUG-INはどんなソフトか、またこのC5.1tでのコントロールについて紹介していく予定だ。