DJ用CDプレイヤーで定番とも言えるパイオニアのCDJシリーズ。新製品のCDJ-400は手ごろな価格でスクラッチ機能も備えている。前回は概略を紹介したが、今回はプレイヤーとしての機能をチェックしていく。
上位機種と同様に2つの動作モードを用意
まずはCDJ-400の外観からチェックしていこう。全体的なデザインはパイオニアのCDJシリーズ従来機種と共通している。天板の手前中央にキューポイント探しなどに多用する大きなジョグダイアル、その左に再生/一時停止を行うPLAY/PAUSEボタンとキューポイントを設定するCUEボタン、右側にはテンポをコントロールするテンポスライダーが配置されている。上側には再生位置やタイムカウンタを表示するディスプレイを配置。CDは前面から挿入するスロットローディング方式だ。
パイオニアのCDJは「CDJ-1000MK3」「CDJ-800MK2」といった上位機種と、「CDJ-200」「CDJ-100S」の下位機種で筐体サイズがはっきりと分かれており、上位機種は正方形に近いデザインで大型、下位機種は一回り小型で縦長デザインになっている。CDJ-400はサイズ的にはCDJ-200とほぼ共通でサイズは横217.9×縦296.3mmだ。基本セットとしてはCDJ-400×2台+DJミキサーとなるが、この組み合わせはDJミキサーの機種にもよるが意外と幅を取るため、ホームユースではスリムデザインの筐体のほうが設置場所を選ばず、使いやすいだろう。
DJ用CDプレイヤーの基本操作として多いのは、再生を開始するポイントを探し、キューポイントとしてメモリすることだ。全体的な操作の流れとしては、まずキューポイントを設定する。次に現在フロアに流している曲と繋げる曲を、DJミキサーのヘッドフォンモニタでミックスして、CDJのピッチコントロール機能でテンポを調整する。そしてテンポが合ったら、現在流している曲にタイミングを合わせ、次に繋げる曲を再びキューポイントから再生し、ミキサーで徐々にフロアへ出力する。アナログターンテーブルの場合は再生を始めたいポイントでレコードを押さえておくが、CDJならばキューポイントとして設定すれば、ボタン一発で再生開始できるという仕組みだ。
CDJ-400はJOG MODEボタンでジョグダイアルの動作を切り替え、この設定がキューポイント操作だけでなくスクラッチや、エフェクト操作にも影響を与える。ボタンの「VINYL」が点灯しているとVINYLモード、消灯時はCDJモードとなる |
ここで少しややこしいのは、CDJ-400はキューポイントを探すために使うジョグダイアルの操作として、2つのモードが用意されていること。具体的には「CDJモード」と「VINYLモード」という。
違いはVINYLモードではアナログターンテーブルの操作をジョグダイアルを使って再現しているのに対し、CDJモードではパイオニアCDJシリーズが登場当初から採用している、CDJ独特の操作をする。このあたりは実際に使ってみないとわかりづらいが、パイオニアのスクラッチ対応CDJシリーズはすべてこの2種類の操作となっている。なお下位機種ではモードの切り替えは無く、CDJモードのみとなる。
CDJ-400のVINYLモードでは、再生中にまず一時停止し、ジョグダイアルをまわしてキューポイントを探すと、アナログターンテーブルでレコードを回したときと同じように、ジョグダイアルを回すスピードに合わせて音が再生されるようになっている。そしてCUEボタンを押せば現在位置がキューポイントとして記憶され、再生中にもう一度CUEボタンを押せばキューポイントに戻って一時停止、PLAY/PAUSEボタンを押すとキューポイントから再生開始、という仕組みだ。
操作インタフェースは上位機種「CDJ-800MK3」などと同様で、PLAY/PAUSEボタンだけでなく、ジョグダイアルを押さえることで一時停止状態となり、そのままジョグダイアルを回してキューポイントを探すことも出来る。ただ先に挙げたように本体デザインがスリムなため、ジョグダイアルのサイズそのものは上位機種よりもやや小さくなっている。これによりジョグダイアルをグルグル回すときの操作感は、やはり上位機種に比べて少し落ちるが、仕方がないところだろう。
キューポイントはジョグダイアルを押さえる、またはPLAY/PAUSEボタンで一時停止状態にしてから設定する以外にも、再生中にRIALTIME CUE(HOT LOOP)を押せば、その位置がキューポイントとして設定される |
なおDJプレイで微妙に2曲がずれているときは、テンポを一時的に速めたり、遅くしたりして微調整するわけだが、この操作もジョグダイアルを回して行う。ただしVINYLモードではジョグダイアル上面で回すと再生が停止してしまうため、ジョグダイアルの側面を回すことになる。
初めてでもすぐに楽しめるスクラッチプレイ
テンポコントロールはボタンによりコントロール幅を4段階で切り替え、ディスプレイには具体的な数値が表示される。MASTER TEMPOボタンが赤く点灯していると、テンポを変えても音のキーは変化せず再生される |
テンポコントロール機能はスライダーが長くて使いやすく、コントロール範囲を±6/10/16%、さらにWIDE(±100%)と切り替えて使える。テンポを変えてもキーが変わらず再生できるマスターテンポ機能ももちろん用意されているので、事実上、どんな曲でもミックスできるだろう。
そしてCDJ-400の特徴であるスクラッチ機能。これは先に挙げた、VINYL/CDJという2つのモードにも関係している。具体的にはVINYLモードではスクラッチ機能が使えるが、CDJモードでは使えない。その意味でもVINYLモードはアナログターンテーブルを再現した動作モードなのだ。
CDJ-400のスクラッチは基本的にアナログターンテーブルと同様の操作感を再現している。ジョグダイアルを押さえる(=レコードを押さえて止める)と曲の再生が止まり、その状態でジョグダイアルを前後に動かせばスクラッチとなる。とてもわかりやすく、また違和感はない。レコードを使ったスクラッチプレイでは針飛びやレコードの痛みも気にする必要があるが、CDならばその心配もなく、思い切り楽しめるのもいいところだ。
ジョグダイアルを押さえてから高速回転させれば、レコードを高速回転させたときと同じようにスピンの効果も再現されている。またレコードを逆回転させるように曲を逆再生できるリバース再生も搭載、このあたりはスクラッチ非対応の下位機種には用意されていなかった機能だ。
スクラッチ対応の普及価格帯モデルといえるCDJ-400だが、上位機種にも搭載されていないエフェクト機能がある。ディスプレイ下部に配置された3つのボタンを、それぞれを押してからジョグダイアルを動かすと、それに合わせてエフェクトが掛かる。
実はこのエフェクトもVINYL/CDJモードで動作が分かれている。VINYLモードでは「スクラッチジョグエフェクト」となりバブルスクラッチ奏法を再現する「BUBBLE」などスクラッチプレイをエフェクトとして再現し、CDJモードでは「デジタルジョグブレイク」としてレコードの2枚がけによるフランジャー効果を再現した「JET」などを使うことが出来る。
そのほか、多彩なループ機能などももちろん搭載。手ごろな価格でありながらも、スクラッチ機能を含めて上位機種に迫る多機能なプレイヤーとなっている。
VINYLモードとCDJモード、それぞれ3種類の効果が用意されている内蔵エフェクト。基本的にはジョグダイアルを動かしている間だけその効果がかかるが、ジョグダイアルから手を離してもエフェクトがかかり続けるHOLDボタンも用意される |
このほかにCDJ-400の特徴といえるのが、USBポートを搭載していること。次回はこのUSB関連の機能について紹介していこう。