リニアPCMレコーダのベストセラー「R-09」を発売しているローランドから新たなポータブルリニアPCMレコーダ「R-09HR」が発表された。R-09にくらべどう変わったのか、発売に先駆けてチェックしてみることにしよう。
24bit/96kHzのWAV録音に対応、1ランク上の音質を目指す
ローランドがEDIROLブランドで発売しているリニアPCMレコーダ「R-09」は、手ごろな価格とコンパクトサイズが受けたのか、発売以来ワールドワイドで12万台を出荷したという。音質面でも評判はよく、ある意味ではリニアPCMレコーダという新しいジャンルを牽引した存在ともいえるだろう。
そのローランドが新たに送り出すリニアPCMレコーダが、ドイツ「musikmesse 2008」で発表された「R-09HR」である。3月13日には国内でも発表会が行われ、3月28日より国内販売が開始される。リニアPCMレコーダの購入を検討している人には気になる新製品だろう。本連載でもちょうどリニアPCMレコーダの新製品を取り上げていたところなので、R-09との比較も含め、早速チェックしてみよう。また先日行われた発表会では生演奏を録音する機会も設けられたので、その録音ファイルもサンプルとして次回公開する予定だ。なおR-09については過去の記事でも取り上げているので、気になる方はそちらも合わせて参照していただきたい。
まずは外観から。主要ボタン類の配置を含め基本的なデザインは変わらないものの、R-09は比較的丸みを帯びていたのに対し、R-09HRはスクエアに変わった印象。サイズは62×113×27mm、重量は174g(電池、メモリカード含む)で、R-09に比べると少し縦に伸び、微妙に薄く、そして30gほど重くなっている。
表面の処理はR-09では光沢のあるプラスチック素材だったが、R-09HRはマットな処理が施されており滑りにくくなっている。ヘッドフォンでモニタしてみると、ボタン操作したときなどのグリップノイズも微妙に減っているようだ。
バッテリは単三形乾電池を2本使用。公表値はアルカリ電池および内蔵マイク使用時に約4.5時間録音可能となっている。現在では標準的なレベルといえるが、R-09は同条件で約4時間録音であり、バッテリの持ちも微妙に向上しているようだ。なおACアダプタでの駆動も可能で、R-09HR/R-09とも標準で付属する。
バッテリスロットは、R-09はSDカードスロットと共に底面に用意されていたのに対し、R-09HRでは背面に移動した |
カードスロットはUSBポートと共に底面ゴムカバー内に配置、少々動きが硬いスライド式の蓋を備えていたR-09より、カード交換は行いやすくなった |
記録メディアはSD/SDHCカードスロットを搭載し、最大32GB SDHCカードをサポート。製品には512MBのSDカードが付属する。
記録フォーマットはR-09HRで注目される進化点の一つだろう。R-09では最大24bit/48kHzのWAVまでの対応であったのに対し、R-09HRでは最高24bit/96kHzのWAVに対応した。R-09は高い評価を得ていたとはいえ、ソニーのPCM-D50やオリンパスのLS-10など最大24bit/96kHzに対応したライバル製品が登場している。リニアPCMレコーダは高音質で録音することを命題としているためR-09のスペック面に物足りなさを感じていた人もいるだろうが、R-09HRはふたたびライバル機と同じ土俵に上がったことになる。なおMP3での録音も引き続きサポートしている。
内蔵ステレオマイクの開き角は120度固定でR-09からの変更はない。カバーに覆われているため違いがよくわからないところだが、R-09HRでは録音音質を向上させるため、マイク本体、基盤ともに新設計された。さらにマイクを基盤から分離し、ゴム素材のダンパーで覆うフローティング構造を採用することで振動を低減。ローランド独自のアナログ回路「IARC(Isolated Adaptive Recording Circuit)」もR-09に引き続き搭載されているが、こちらもより進化しており、結果としてR-09HRはR-09に比べ、残留ノイズレベルを約10dB低減させることに成功したという。
価格はオープンで、大手家電量販店のショッピングサイトでは39,800円で予約を受け付けている。同じサイトでR-09は32,800円で販売されており、発売当初に比べてR-09の実勢価格が下がったこともあるが、機能同様に価格的にもR-09より上位機種といえるだろう。24bit/96kHz対応製品の中では、ソニーPCM-D50やオリンパスLS-10より手ごろな価格だ。なお現時点ではR-09は製造中止になるわけではなく、当面は併売されるようだ。
リミッタを新搭載、便利なリモコンも付属
R-09ではマイクゲインの切り替えやローカットフィルタのオン/オフなど、シチュエーションに合わせてよく切り替える機能は背面のハードウェアスイッチ、録音フォーマット設定などはメニュー画面から設定という操作体系になっていたが、これはR-09HRでも変わらない。背面側で目立つのはモノラルスピーカーが搭載されたこと。オリンパスLS-10にも同様にステレオスピーカーが搭載されていたが、音質はともかく、ヘッドフォンを接続しなくともすぐに録音結果を確認できるので意外と便利な機能だ。
背面にはリミッタ/AGC、外部マイク端子へのプラグインパワー供給、ローカットフィルタのオン/オフ、そしてマイクゲインの切り替えスイッチを用意。ホールドスイッチはR-09の右側面から背面に移動、スイッチ類の上にはスピーカー(モノラル)も新搭載された |
また背面スイッチで切り替える機能は変わっていないというわけではなく、きちんと進化している。まずは過大入力があった際にクリッピングを防止するリミッタが追加された。リミッタは録音レベルを自動設定するAGC(Auto Gain Control)と排他利用になっており、メニューで切り替えて背面スイッチでオン/オフを行う。また風切音などを低減するローカットフィルタはR-09では単純にオン/オフをできるだけだったが、R-09HRでは動作周波数を100/200/400Hzと選択可能となった。
R-09HRでは便利な付属品も追加されている。それが録音/再生/停止や録音レベル調整を行えるワイヤレスリモコンだ。内蔵マイクを使ったレコーディングでは録音開始などのボタン操作でどうしてもノイズが入るが、リモコンならばそれを防止できる。自分のギター演奏を録音する、また屋外で離れた場所にセッティングして生録するといったシチュエーションでも、リモコンがあれば本体に近づく必要がないので非常に便利だろう。
なお、このリモコンはコンパクトながらもボリューム調整やファイルのスキップ、そして録音中にファイルを分割する「SPLIT」ボタンまで用意され、R-09HRの基本操作をほぼカバーしている。そのため数曲続けて演奏・録音するときに曲単位でファイルを分割するといった実用的な使い方はもちろん、R-09HRにスピーカーを繋げればオーディオプレイヤー的にリモコンを使う、といったこともできるだろう。
次回は強化された再生機能や、実際の録音手順などをチェックしていこう。