ソニーより新たに登場したリニアPCMレコーダ「PCM-D50」は、ある製品にも通じるデザインテイストで評判となっているようだが、果たしてどんな製品だろうか。早速実機を触ってみることにしよう。
あのPCM-D1の廉価版登場か?
会議の音声メモ録音などが主用途となるいわゆるICレコーダとは違い、高品位な内蔵マイクを搭載して非圧縮PCMのWAVフォーマットで高音質に録音できる機材、それがリニアPCMレコーダというジャンルの製品だ。本連載でも以前にEDIROLの「R-09」を取り上げたが、最近はソニーから「PCM-D50」という新製品が登場して注目を集めている。これはどんな機材か、スペックや使い勝手をチェックしてみよう。また手元にあるR-09との比較も行ってみたい。
ソニーが発売したリニアPCMレコーダはPCM-D50が初の製品というわけではない。PCM-D50の特徴的な配置の内蔵マイクを見て連想した人もいるだろう、2005年には「PCM-D1」という製品を発売している。PCM-D1は4GBメモリを内蔵し、変形X-Y型マイクを搭載し最高24bit96kHzでリニアPCM録音が可能というスペックで、ボディパネルにはチタンを採用、アナログの入力レベルメータを搭載するなど、非常にこだわりの強い製品だ。そのデザインもメカメカしく話題となったが、実売価格が約20万円とかなり高価であったため、実際に購入した人は限られていたはずだ。
そして新たに登場したPCM-D50は、変形X-Yマイク搭載、最高24bit96kHzでの録音、内蔵メモリ4GBといった基本的なスペックを受け継ぎつつも、実売価格は6万円前後とかなり手頃になっている。PCM-D1で目立ったアナログレベルメータこそ搭載されていないが、デザインの基本線は継承しており、この値段なら欲しい、と思った人もいるはずだ。もちろん単純な廉価版というわけではなく、PCM-D50で新たに搭載された機能もあるので、そこにも注目したい。
変形X-Yマイクは2ポジション可動に
まずは外観から見ていこう。本体は前・後面パネルはアルミ製、側面はマグネシウム製となっており、ボタン類なども含めて質感は非常に高い。サイズは72.0×154.5×32.7mm、重量はバッテリ込みで365gだ。サイズ・重量的にはPCM-D1よりはかなりコンパクトになっているものの、このジャンルでロングセラーとなっているEDIROL R-09に比べるとふた回りほど大きいといった印象だ。
バッテリ駆動時間はアルカリ乾電池使用時、24bit96kHz設定でヘッドフォンモニターしながらだと約12時間、モニターなしだと約20時間の録音が可能。ちなみにPCM-D1ではモニターの有無に関わらず約2時間の録音が可能となっていたので、かなりのロングライフを実現しているといえる。
目立つのはやはり変形X-Y配置の内蔵マイクだろう。実はこのマイクがPCM-D50では可動式となっており、PCM-D1と同じく左右90度で向かい合っているX-Yポジションに加え、左右120度に開いたワイドステレオポジションに切り替えることができる。X-Yポジションはソロ演奏など近い距離での録音、ワイドステレオポジションはホールでのオーケストラ録音など遠い距離での録音に向く、と説明書には記載されている。
右側面には録音レベルを調整する大型ダイアルを配置。マイク入力端子はプラグインパワーにも対応する。外部機器を接続するラインイン端子はS/PDIF入力も兼ねており、CDやMD、またDATなどを接続してPCM-D50でデジタル録音することもできる。これもPCM-D1にはなかった機能だ。またメモリースティックDuoスロットも搭載、本体メモリに加えて利用することが可能だ。
録音レベルダイヤルは側面がガードされるデザイン。ラインイン端子はS/PDIF接続した場合、外部機器とシンクロ録音も可能だ。メモリースティックDuoスロットはこちらに配置されている |
ラインアウト端子はアナログ/デジタル兼用、REMOTE端子はオプションのワイヤードリモコン「RM-PCM1」を接続する。マイクアッテネータスイッチも用意され、0/-20dBの入力切替が可能だ |
左側面にはホールドスイッチやヘッドフォンボリューム、ラインアウト/ヘッドフォンアウト端子、USBポートなどを装備。DPCというスイッチは再生速度を+100~-75%で可変させるデジタルピッチコントロール機能のオン/オフを切り替えるものだ。
なお背面には、突然の大入力時に音のひずみを防止するデジタルリミッター、風切り音などを低減するローカットフィルタのスイッチ、そして三脚穴が配置されている。次回は録音レベルの調整や録音モードの設定など、実際の使い勝手をチェックしていくことにしよう。