ヴィンテージアンプやエフェクタのサウンドを再現できるソフトがギターアンプシミュレータだが、根っからのギタープレイヤーにとってはマウスやキーボードでの操作は好きになれないかもしれない。そこで今回は、パソコンベースながらもハードウェアエフェクタと同じように操作できる製品を紹介しよう。
憧れのヴィンテージ機材は扱いが難しい!?
音楽の世界では新しい機材が必ずしもベストとは限らない。たとえばギターもその一例で、特定のヴィンテージギターが、その独特の音により現代でも根強いファンがいることは、ギタープレイヤーでなくともご存知だろう。
そして楽器そのものであるギターに限らず、周辺の機材でもこれは同様だ。ギターアンプやエフェクタも、技術的には古いものでも、それが出す独特の音が珍重されており、現代の音楽でもそのサウンドが活用されていることは少なくない。
そういった音楽を聴き、また自分でも使ってみたいと思うのは自然なこと。ただし当時の機材を手に入れ、使うことはなかなか難しい。まずは機材そのものが既に廃盤で、新品では入手できない。名機と呼ばれるような機材はプレミア価格で取引されていることも少なくない。また仮に入手したとしても、メンテナンスの面で困ることもあるだろう。特別な情熱をもって使う人は別として、気軽にちょっと使ってみるにはヴィンテージ機材の敷居はなかなか高いものだ。
ただし、当時の機材そのものにこだわらないのであれば、昔風のサウンドを手軽に使う方法はある。たとえばハードウェアであれば、現在はさまざまなエフェクタが販売されている。当時のエフェクタの音を再現することに主眼を置いた製品はもちろんだが、マルチエフェクタには豊富なエフェクトが搭載されているだけでなく、機能の一つとしてヴィンテージ・アンプをモデリングできるものもある。
また、パソコンで当時の音を再現することも出来る。ソフトウェアで再現したギターアンプ・シミュレータ・ソフトもあるし、オーディオインタフェースに真空管アンプモデリング機能が搭載されているものもある。今回はそんな製品のひとつで、面白い特徴のあるNative Instrumentsの「Guiter Rig 3 Kontrol Edition」を紹介しよう。
ハードウェアエフェクタと同じように踏める同梱コントローラ
Guiter Rig 3 Kontrol Editionはさまざまなギターアンプやスピーカー・キャビネット、エフェクトを組み合わせて多彩なギターサウンドを作り出すソフト「Guiter Rig 3」と、オーディオ/MIDIインタフェースの「Rig Kontrol 3」がセットになったパッケージだ。ソフトウェアについては次回に詳しく紹介するが、このRig Kontrol 3がかなり変わっている。
「Guiter Rig 3 Kontrol Edition」に付属するソフトウェア「Guiter Rig 3」、アンプやエフェクト、キャビネットといったコンポーネントが豊富に用意され、さまざまなギターサウンドを生み出すことができる |
まず基本的なところから確認すると、このRig Kontrol 3はUSB2.0で接続し、オーディオ入出力は2in2out、MIDI IN/OUTも各1系統を備える。スペック的にはごく普通なのだが、かなりサイズが大きく、ハードウェアエフェクタのようにフットペダルといくつかのスイッチを備える。
外観を見て想像できたかもしれないが、Rig Kontrol 3はMIDIコントローラ機能も備えており、ハードウェアエフェクタと同じように足でペダルやスイッチを踏み、Guiter Rig 3をコントロールすることができる。スイッチやペダルでどのパラメータをコントロールするかは自由に割り当てることができるが、標準状態ではスイッチでプリセットを切り替えたり、エフェクトのオン/オフを切り替えたり、ペダルでエフェクトの効き具合をコントロールできるのだ。
プリセットナンバーを表示するディスプレイと入出力レベルメータを装備。スイッチはそれぞれ赤いインジケータが用意され、エフェクトのオン/オフなどをパソコンのディスプレイを見ることなく、Rig Kontrol 3で把握できる |
パソコン上でシミュレートするギターアンプシミュレータソフトは、基本的にはマウスやキーボードでの操作が必須となる。そのためギターを弾きながら操作することがなかなか難しく、ちょっと冷めてしまうこともあるのだが、Guiter Rig 3はこの特徴あるコントローラをセットにすることで、ハードウェアエフェクトと同等の操作性を実現しているのが面白い。
このRig Kontrol 3は足でガンガン踏むことを前提としているためか、筐体はアルミニウム製でかなり頑丈な作り。その分、重量も約2.6kgと決して軽くはない。一般的なオーディオインタフェースに比べるとちょっと持ち運ぶのは辛いが、自宅に限らずノートパソコンと共にライブハウスやスタジオに持ち込めば、パソコンベースとは思えない快適操作が可能となるだろう。またオーディオインタフェースとMIDIコントローラが一体化されているので、別の機材を用意したり接続する必要がないのもシステムとしてシンプルだ。