パソコンを音源に変え、曲作りを可能にするソフトシンセ。現在はホストアプリケーションに複数のソフトシンセを読み込み、使うことができるプラグイン形式が主流だ。今回はスタンドアロンとプラグインの違い、そしてプラグイン規格について解説しよう。

スタンドアロンとプラグインの違い

ソフトシンセを音源として演奏するには、大きく分けて2つの概念がある。1つはスタンドアロン、もう1つはプラグインだ。

スタンドアロンとはその字の如しで、スタートメニューやショートカットを使ってソフトシンセを単体で起動し、演奏するパターン。他のソフトは基本的に使用しない。もう1つのプラグインとは、ソフトシンセをコントロールするためのホストアプリケーションを起動し、ホストアプリケーションからプラグインとしてソフトシンセを起動、MIDIトラックの出力先としてソフトシンセを指定するパターンだ。

スタンドアロンとして起動したArturiaソフトシンセ「moog modular V2」

プラグイン形式が対応しているホストアプリケーションであれば「moog modular V2」はプラグインとして起動できる。これはVSTiに対応したCakewalkの「SONAR」に読み込んでいる

現在主流となっている方式はプラグインで、これにはさまざまなメリットがある。まずプラグインという名称の通り、ソフトシンセをインストールすることでホストアプリケーションから音源として利用できるソフトシンセがどんどん追加できること。ホストアプリケーションは一般的にDAWソフトと考えてもらってよいが、使い慣れた環境で新しい音源を曲作りに活用することができる。現在のDAWソフトは音源として複数のソフトシンセがあらかじめバンドルされていることが多いが、このプラグインを活用すればさらに音源を増やすことができるのだ。またプラグイン規格さえ合えば、DAWソフトを乗り換えたときに、以前のDAWソフトで使っていたソフトシンセを流用することも基本的には可能だ。

またスタンドアロンでは複数のソフトシンセをうまく同期させて演奏することはなかなか難しいが、プラグインならば同じホストアプリケーションからコントロールするため、完全に狙ったとおりのタイミングで演奏ができる。他にもソフトシンセ側が対応していれば、ホストアプリケーションのオートメーション機能を使ってパラメータのコントロールも可能だ。

プラグイン規格はいくつか存在する

プラグイン形式のソフトシンセは1つに完全統一されているわけではなく、いくつかの規格が存在している。そのためホストアプリケーションが対応しているプラグイン規格と、ソフトシンセのプラグイン規格が同じでなくてはホストアプリケーションに読み込むことはできない。購入前、インストール前にこの点は確認しておく必要がある。

まずWindowsの世界だが、VSTiとDXiがよく知られているプラグイン規格である。VSTiはSteinbergが提唱した規格で、同社のCubaseシリーズをはじめとして、数多くのソフトでサポートされている。DXiはMicrosoftのマルチメディア技術、DirextXをベースとした技術、CakewalkのSonarシリーズなどでサポートされている。他にはDigidesignのProtoolsシリーズで使用されているRTASという規格も存在する。

VSTi規格のソフトシンセに対応したSteinbergの「Cubase4」、サウンドフレームという概念を取り入れ、VST3プラグインであればプリセット音色の快適なブラウズや検索などが可能となっている

次にMacの世界だが、VSTiとRTASはこちらでも利用されているが、DXiは存在しない。他にはAudioUnitsやMASといったプラグイン規格が存在している。

なお、ホストアプリケーションによっては1つに限らず、複数のプラグイン規格をサポートしている場合もある。異なる規格のプラグインには基本的に互換性はないが、そういったホストアプリケーションならば、規格の違いは意識せずに対応プラグインを使うことができる。たとえばSonarシリーズやFL StudioシリーズはVSTiとDXiをサポートしており、どちらの規格であっても同じように読み込み、音源として使うことができる。

ソフトシンセが豊富に付属する上位版「SONAR6 Producer Edition」には9種類のソフトシンセがバンドルされているが、DXi/VSTiのプラグインをインストールすれば、バンドルされているソフトシンセと同じようにシンセラックに読み込み、使うことができる

現在単体販売されているソフトシンセはスタンドアロンとしても動作し、また複数のプラグイン規格に対応しているものが多い。たとえば前回にも紹介したArturiaの「moog modular V2」はスタンドアロン/プラグインどちらとしても動作し、プラグイン規格はVSTi/RTAS/AudioUnitsに対応している。またWindows/Mac両方で使用できるハイブリッド形式となっているが、もちろん対応環境は製品によって異なるため、購入前に確認しておこう。

次回はホストアプリケーションでのプラグイン追加方法などを解説しよう。