ソフトシンセ&エフェクトが豊富に付属するFL STUDIO、実は他のソフトで活用したり、またFL STUDIO自体を他のソフトからコントロールしたりすることもできる。その柔軟な使い勝手は、ある意味驚きだ。

40種類以上の強力なエフェクトが付属

ソフトシンセに続き、エフェクトも非常に数多く用意されているFL STUDIO。実に40種類以上ものエフェクトが付属するため、かなり多彩な音作りが可能となっている。

ディレイやコーラス、フランジャーといった基本的なエフェクトから、8機ものフィルタバンクを搭載して強力なモジュレーションを可能にする「Love Philter」、視覚的にセッティングできる7バンドパラメトリックEQの「Parametric EQ2」など、使いこなすのが難しいほど高機能なエフェクトまで用意されている。

さまざまなフィルタが用意されているFL STUDIOの中でも、8基のフィルタユニットを搭載し、複雑なディレイ、ゲート、フィルタ効果を生み出すフィルタプラグイン「Love Philter」

スペクトル解析機能も備え、各バンドのタイプもハイ / ローシェルフ、ピーク、ノッチ、バンド / ハイ / ローパスから選べる7バンドパラメトリックEQプラグイン「Parametric EQ2」

これらのエフェクトはミキサーでセットするのだが、各チャンネルにはエフェクトをセットするためのFXスロットが8つ用意されている。これはインサートエフェクトとして使う場合だが、FL STUDIOのミキサーにはセンドバスも4本用意されており、こちらも同様に8つのFXスロットを装備。もちろん、マスタートラックにもFXスロットは用意され、ここにエフェクトをセットすればマスターエフェクトとして使うことが出来る。このようにインサート / センド / マスターエフェクトとして、豊富なエフェクトを使いこなせるのだ。

各チャンネルはミキサー右側で設定、チャンネルを選択することで表示が切り替わり、8つのFXスロットにエフェクトをセットできる。また各チャンネルにはトラックEQも用意される

なおエフェクトは付属するものだけでなく、DirectXやVSTプラグインをインストールし、FL STUDIO上で活用することも可能となっている。

付属プラグインは他のソフトでも活用、ReWireにも対応

このように数多くのソフトシンセやエフェクトが付属するFL STUDIOだが、その大部分はDiretX / DXi、VST / VSTiのプラグインとして動作する。ソフトシンセのDXi / VSTi、エフェクトのDirectX / VSTはWindowsのDAWでは標準といってよい形式、つまりFL STUDIOに限らず、CakewalkのSONARシリーズや、SteinbergのCubaseシリーズを始めとして、他のDAWソフトでもこの付属プラグインを活用できるのだ。他のDAWソフトユーザーにとっては音楽制作ソフトとしてはもちろん、この大量のプラグインを購入すると考えてもお得かもしれない。

FL STUDIO付属のプラグインの多くはVSTi / DXi、VST / DirectX対応のため他のDAWソフトでもそのまま読み込み、音楽制作に活用できる。画像はSONAR 6の音源として「SimSynth」と「Sytrus」を読み込んでいる

ReWireで他のソフトと連携活用も可能、ホスト / クライアントのどちらでも動作するため、ReWire対応ソフトを使っている人ならすぐに試すことができる

そして、二つのソフトを内部的に仮想接続し、同期して動作するReWireにも対応。ReWireはPropellerheadsが提唱した規格で、コントロールする側(ホストアプリケーション)とコントロールされる側(クライアントアプリケーション)という構成になる。ホストアプリケーションとしてはSONARやCubase、クライアントとしてはReasonなどが代表的だが、FL STUDIOはホスト、クライアントどちらとしても動作する。

かなり自由度の高い音楽制作ソフトであることはもうお分かりだろうが、これで終わりではない。実はそれぞれのプラグインだけでなく、FL STUDIOそのものがVSTiおよびDXiのプラグインとして機能してしまう。ここまで来ると使い手の工夫によって、どのようにでも使えるソフトといえるだろう。

ソフトシンセやエフェクト単体だけでなく、FL STUDIOを丸ごと、DXi / VSTiのプラグインとして他のDAWソフトから使うことまで可能だ

さて4回に渡ってFL STUDIOを使ってみたが、実際のところ、ダンスミュージックに特化しているのだろうか? これはステップシーケンサによるパターン作成というインタフェースによるところが大きい。ボタンによるステップ入力は現在でもリズムマシンでよく見られるが、そもそもそういった機材はダンス系でよく活用されるからだ。その意味では、ダンス系の音楽を作っている人にはなじみやすいソフトである。

とはいえピアノロールも用意されているので、単純なフレーズ以外を作ることはもちろん可能。ただし一般的なDAWソフトに比べれば数値でMIDIエディットするリストエディタ、五線譜で入力するスコアエディタといったインタフェースが用意されていない。そのほかにも、割り切ったところがあるのも事実だ。

他のソフトをこれまで使っていた人なら戸惑う場面も多いFL STUDIOだが、逆に基本的な操作を理解すれば直感的に使うことができる。その意味では初心者にも、また連携機能の強力さは他のソフトを使っている人にも、一度は試してもらいたい面白いソフトだ。