音楽制作ソフトは基本的にジャンルを選ばないが、中には特定ジャンルに強い、といわれるソフトもある。「FL STUDIO」シリーズもその1つだ。バージョンアップしたばかりの最新版がどんなソフトか、他のソフトとなにが違うのか、チェックしてみよう。
初心者でもわかりやすいチュートリアルビデオも用意される
ベルギーのImageLine Softwareがリリースする音楽制作ソフト「FL STUDIO 7 XXL EDITION」(以下、FL STUDIO)は、オーディオ / MIDIレコーディングやMIDIシーケンス機能を備え、多彩なソフトシンセとエフェクトが付属し、そしてミキシングが可能。つまり曲を作るために必要な機能が一通り揃っており、その意味では音楽制作ソフトとして一般的なCakewalkの「SONAR」シリーズやSteinbergの「Cubase」シリーズなど、DAWソフトと呼ばれる種のソフトに似ている。
しかし、FL STUDIOは一般的なDAWソフトとはアプローチがかなり異なっている。それはパターンシーケンスが前提である、ということ。まずドラムやベースといった楽器別にフレーズをMIDIパターンとして作成しておき、そのパターンをプレイリストで並べて曲として組み上げる、これがFL STUDIOの基本的な概念だ。
この制作手法により、FL STUDIOはテクノ / トランスといったいわゆるダンスミュージック向きという評価を受けることが多く、また実際に、ヨーロッパでは多くのアーティストが使っているようだ。一般的なDAWソフトとはどう違うのか、本当に特定のジャンルの音楽制作に向いているのか、チェックしてみることにしよう。
FL STUDIOを起動してみると、他のDAWソフトを使ったことがある人はちょっと戸惑うはず。一般的なDAWソフトはもちろんソフトやメーカーによって多少操作方法が異なるが、基本的な制作の流れというものはあまり変わらない。そのため、ソフトを乗り換えてもなんとなく使い方はわかるのだが、FL STUDIOは操作方法がまったく異なるのだ。
そこで役立つのが、インストールCD-ROMに収録されているチュートリアルビデオ。Windows Media Playerで再生できるこの30分強のビデオは、FL STUDIOのインタフェースや操作方法の基本、そして簡単な曲を作るまでの流れを解説してくれる。後に述べるがFL STUDIOはかなり直感的に操作できるインタフェースのため、音楽制作ソフトにはじめて触る人でも、このチュートリアルビデオを見ればすぐに使い始めることができるだろう。
用途に合わせて使い分ける2つのインタフェース
FL STUDIOでまず基本となるのが、フレーズをパターンとして作成すること。そのための特徴的なインタフェースが、ステップシーケンサだ。これはボタン1つが16分音符に相当し、デフォルトでは16個のボタンが並んでいる。つまり1小節分だ。ドラムマシンを触ったことがある人なら操作方法はすぐにわかるだろう、鳴らしたい位置のボタンをクリックすることでパターンを作成する。非常にシンプルで、4つ打ちドラムなどすぐに出来てしまう。
このステップシーケンサは縦方向それぞれのチャンネルが音色に相当し、たとえばドラムであればバスドラ、スネア、ハイハット……と並べていく。それぞれのチャンネルはサンプラー機能を備えており、音源としてわざわざサンプラーを立ち上げなくても、直接サンプルファイルを読み込むことができる。FL STUDIOシリーズの中でも上位版のXXL EDITIONはサンプル集のDVD-ROMが付属し、実に13,000種類以上ものサンプルが使えるだけでなく、音を作り込んでいくことも可能だ。
ステップシーケンサは単純に読み込んだサンプルをトリガーするだけでなく、ベロシティの強弱を付けたり、音程のあるサンプルならばそれをコントロールすることもできる。ただしボタンが相当する音の長さは16分音符で固定のため、万能とはいえないだろう。
そこでパターン制作のためにもうひとつ用意されているのが、MIDIの打ち込みではおなじみのピアノロール。こちらもクリックでノートを配置、右クリックで消去とステップシーケンサと基本的な操作は共通だが、入力するノートの長さはもちろん変更でき、またドラッグすることでスピーディーに長さの変更が可能だ。
この2つのインタフェースを使い、パターンを作成していくわけだが、それだけでは曲の形にならない。パターンを組み合わせるための重要なインタフェースがプレイリストだ。次回からはプレイリスト、そして豊富に用意されたソフトシンセやエフェクトについてチェックしていこう。