手ごろな価格ながらもDTM向けとして十分な機能

図1

ローランドの新USBオーディオインタフェース「UA-1G」

「The NAMM Show 2009」で発表されたローランドの新USBオーディオインタフェース「Cakewalk UA-1G」(以下UA-1G)(図1参照)。日本でも4月中旬の発売が予定されているが、それに先駆けて製品をお借りしたので、どのような特徴があるのかチェックしてみよう。

ローランドは様々なUSBオーディオインタフェースを発売している。UA-1Gは2in2out仕様で、「UA-4FX」のような真空管アンプモデリング機能や内蔵エフェクト機能を装備していない、構成的には非常にオーソドックスな製品だ。実売予想価格も1万2,000円前後であり、パソコン標準のサウンド機能では物足りなくなったエントリーユーザー層にも手を出しやすいところだろう。しかも機能的には本格的で、最高24bit/96kHzに対応、DTMソフト各種を使うにあたり必須ともいえるASIOドライバにも対応している。このあたりはいかにもローランドらしい。なおこれまでローランドのDTM向けハードウェアは「EDIROL」ブランドとして展開していたが、先日行われた新製品発表会において今後は「SONAR」シリーズなどソフトウェアと同様に「Cakewalk」ブランドで統一する、と発表された。そのため本製品にもCakewalkロゴが入っている(図2参照)。

図2

UA-1GはCakewalkブランドで展開されるため、本体にもCakewalkロゴが入っている

まずサイズが160(W)mm×58(D)mm×28(H)mm、重量165gとコンパクトな外観で、電源はUSBバスパワーで供給される。本体前面には大型の「インプットレベルノブ」が配置されており、入力レベル調整が快適に行える。またこの前面パネルにはIN/OUTインジケータに加えてクリッピング時に点灯する「PEAKインジケータ」も配置されており、レコーディング時に便利だ(図3参照)。本体はラバー調のような仕上げになっており、なかなか高級感がある。なお同製品はUSBケーブルが本体に一体化されており、取り外すことは出来ない(図4参照)。

図3 図4

ギター/マイク入力やアナログ入力の入力レベル調整を行うインプットレベルノブは大型で操作性良好。クリッピング時に点灯するPEAKインジケータは、音声入力時に点滅するINインジケータとは別に用意され、パソコンのディスプレイを見なくてもクリッピングを判別できる(左)。USBケーブルは本体と一体化されている(右)

入出力はアナログ入出力各2系統、デジタル入出力各1系統、プラグインパワー対応のマイク入力1系統、そしてギター/マイク入力1系統を備える(図5~6参照)。ギター/マイク入力はエレキギター/ベースの直接入力に対応しており、DAWのアンプシミュレータやエフェクトを活用し、ギタープレイに使うことも可能だ。またデジタル出力も装備しているためデジタルスピーカに接続できるなど、接続機器を選ばないのもポイントだろう。

図5 図6

本体右側面にはアナログ入出力各2系統を装備、端子形状はRCAピンで金メッキ処理が施されている(左)。左側面にはギター/マイク入力、マイク/デジタル入力、ヘッドホン/デジタル出力、ヘッドホンレベルノブを搭載。動作ドライバモードを切り替えるためのADVANCED DRIVERスイッチもこちらに配置される(右)

専用ドライバとスイッチ切り替えですべての機能が活かせる

ドライバは専用ドライバのほか、OS標準のドライバでも動作する(図7参照)。ただしレイテンシを小さく出来るASIOドライバは、付属ディスクから専用ドライバをインストールしなくてはならない(図8~9参照)。そして標準ドライバと専用ドライバを切り替えるのが、本体左側面にある「ADVANCED DRIVERスイッチ」だ。パソコンにあらかじめ専用ドライバをインストールしておき、このスイッチをオンにしてUA-1Gを接続すれば専用ドライバ、オフで接続すれば標準ドライバでそれぞれ動作するという仕組みだ。

図7 図8

ADVANCED DRIVERスイッチオフの状態でパソコンに繋げば、OS標準のドライバがインストールされ、すぐに使える状態となる(左)。付属ディスクにUA-1G専用ドライバが用意されている(右)

図9

専用ドライバをインストールしてADVANCED DRIVERスイッチをオンにすれば、対応アプリケーションではASIOドライバが使用できる

専用ドライバと標準ドライバでは、対応サンプリングレートなども異なる。具体的には標準ドライバでは最高16bit/48kHzまでしか使うことができない。24bit/96kHzで高音質に録音するなど音楽制作で本格的に活用するなら普段から専用ドライバで使うことになるだろう。しかし専用ドライバがインストールされていない出先のパソコンでも、とりあえずUA-1Gを繋ぐだけで音が出せるのは便利だ。

サンプリングレート設定などは本体背面のディップスイッチで行う(図10参照)。またUA-1Gではデジタル/アナログ入力の同時録音、また24bit/96kHzでの同時録音再生が出来ないが、その設定もここのスイッチで行う。24bit/96kHzでの同時録音再生不可については人によっては気になるかもしれないが、これはUSB1.1では転送速度不足となるためであり、そこが気になる上級者はUSB2.0かFireWireの製品を選ぶしかないだろう。

図10

サンプリングレートや録音ソースは背面のディップスイッチで設定、設定方法も刻印されているので出先で説明書がなくても大丈夫。設定変更後は一度パソコンからUA-1Gを取り外し、繋ぎなおすことで反映される

なおUA-1Gには波形編集ソフトの「Audio Creator LE」がバンドルされる(図11参照)。このソフトはリニアPCMレコーダ「R-09HR」などに既にバンドルされていたもので、基本的な波形編集やノイズ除去といったエフェクト処理、音楽CD作成などができる。UA-1Gにバンドルされるものは新バージョン1.5となっており、曲間に無音部分が入らないギャップレスCD作成が可能となっている。VSTプラグインにも対応しているため好みのエフェクトを追加することもでき、UA-1Gを活用して録ったライブをCD化するときなど、役立つソフトとなるはずだ。

図11

バンドルされる波形編集ソフト「Audio Creator LE」、新たにギャップレスCDの作成が可能になり、曲間に無音部分が入らないライブCDも自作できる

このように低価格でありながら、機能的にはDTM向けとして不足のないUA-1G。実際のサウンドも素直な傾向で、やはりパソコン標準のサウンド機能とは一味違っている。初めてオーディオインタフェースを買おうとしている人はもちろん、マルチ入出力は不要なので手軽に持ち運べるサブ的な機材が欲しい人にも、ちょっと気になる製品ではないだろうか。