本格派のアナログシンセをニンテンドーDSで動かせる「KORG DS-10」。今回は曲作りに欠かせないシーケンス機能やニンテンドーDSの通信機能を活用したマルチプレイ機能などを使ってみよう。

6系統独立の本格的なステップシーケンサ

DS-10が備える2基のアナログシンセ、そして独立した4系統のドラムマシンモジュールには、それぞれシーケンサが用意されている。入力インタフェースはドラムマシンなどでおなじみのステップシーケンサ風で、縦列がピッチ、横列がステップ数を表す。画面上をタッチして白い□を表示すると、そのステップで音源がトリガーされる。またピッチだけでなく、上部の矢印ボタンをクリックすると表示が切り替わり、「GATE」画面では音の長さ、「VOLUME」では音量、「PAN」では左右のステレオバランス、「KAOSS」ではカオスパッドのX/Y別に各ステップのパラメータを調整できる。

マップ画面の「SYN1 SEQ」をクリックするとシンセサイザ1用のシーケンサ画面が開く、なおステップ数は上部の「STEP」ボタンから1~16ステップの範囲で変更することができる

アナログシンセ用のシーケンサ画面。画面をタッチして白い「□」を置いたステップでシンセがトリガーされる。消すときは再度タッチすればよい。縦列はピッチで、左端のスライダを上下することで表示範囲が移動する

シーケンサ画面左上の矢印ボタンをタッチすると、各ステップの音の長さを設定する「GATE」や音量を設定する「VOLUME」などに画面が切り替わる

マップ画面で「DRUMS SEQ」をタッチすれば、ドラムマシン用のシーケンサが開く。一見するとピッチ調整ができないドラムマシン用のステップシーケンサに見えるが、右端の「1」~「4」ボタンをタッチすると、4系統のドラムモジュールそれぞれのシーケンサ画面が用意されている。もともとドラムマシンではカオスパッド機能が利用できないため「KAOSS」画面が用意されていないという違いはあるものの、機能的にはドラムモジュールそれぞれで、アナログシンセのシーケンサとほぼ同等というわけだ。ドラムマシンでシンセベース風の音を作ったときなど、これを活用すればかなり自由な演奏ができるはずだ。

「DRUMS SEQ」で開くドラムマシン用シーケンサ画面、各列が4つのドラムモジュールに対応しており、この画面ではピッチを鳴らし分けることはできない

「1」~「4」ボタンを押すと開く各ドラムモジュール用のシーケンサ画面。アナログシンセ用と同じくピアノロールが表示され、ステップだけでなくピッチも指定できる

各シーケンサで入力したパターンは1つしか使えないわけではない、マップ画面で「PATTERN」をタッチすれば16種類のパターンが使えるようになっている。そしてこの16種類のパターンを組み合わせ、切り替えながら演奏するための画面が「SONG」だ、ここでは縦列がパターン画面の各ボタンに、横列が小節となっており、最大100小節の曲を作り上げることが可能だ。

パターン画面ではシーケンサに読み込み演奏する。エディットするパターンは16種類切り替えることができる。各ボタン左上のインジケータが点灯中のパターンが現在読み込んでいるもの

ソング画面では横列が小節位置、縦列がパターンの選択となっている。作成した16種類のパターンを組み合わせて曲の形にする

世界を広げるマルチプレイ機能

DS-10にはミキサーとエフェクトも用意されている。ミキサーはシンプルなもので、2基のアナログシンセと4つのドラムモジュールそれぞれのボリュームとパン、そしてソロ/ミュートを一画面で調整できるインタフェース。エフェクトはディレイ、フランジャー、コーラスが用意され、シンセ1のみ、シンセ2のみ、シンセ1+2、ドラムモジュールすべて、そして全音源にかけることが可能だ。

マップ画面の「MIXER」をタッチして開くミキサー画面。各音源の音量バランスなどはここで調整する。さすがにオートメーション機能などは搭載されていない

マップ画面の「FX」で開くエフェクト画面。エフェクトをかける対象は選べるが、それぞれに違うエフェクトをかけることはできない。またドラムモジュールは4つに一括して適用される。

このように本格的な音楽制作ソフトといって差し支えないDS-10だが、完成した曲を出力する方法は基本的にニンテンドーDSの内蔵スピーカ、そしてヘッドフォンジャックからの音声信号のみで、たとえばパソコンにファイルをコピーするといったことはできない。ただしDS-10で作成した音色や曲データをまったく外部に出せないかというとそういうわけではない。ニンテンドーDSの通信機能を使い、他のニンテンドーDSに「セッションデータ」を渡すことができるのだ。セッションデータとは音色やパターン、ソングデータまで含めたDS-10の保存形式である。

またこの通信機能で興味深いのは、最大8台のニンテンドーDSをワイヤレスで接続し、同時に演奏できるマルチプレイだ。これは1台のニンテンドーDSをマスターとし、残り最大7台のニンテンドーDSをスレーブとして同期させるもの。接続した状態ではマスターとなるニンテンドーDSしか操作できないのだが、プレイボタンをタッチすると各ニンテンドーDSが完全に同期し、読み込んでいるセッションデータを演奏する。残念ながらこの状態ではキーボードやカオスパッドを使ってリアルタイム演奏することはできない。しかし実際にやってみるとかなりインパクトがある。個人でそこまでの環境を作り上げるのはなかなか難しいが、8台のDS-10とミキサーを使えば、ステージ上でも作品として通用するすごい曲を作ることは十分可能だろう。

マルチプレイを設定するには、メインメニューの「MULTI PLAY」をタッチし、セッションデータを読み込んで複数のDSを接続する。まずマスター側(左の黒いDS)から設定し、次にスレーブ側(右の白いDS)のニンテンドーDSを操作する、という手順になっている。最大8台のニンテンドーDSを同期させることができる

接続状態ではマップ画面に受信状況のアイコンが表示される。この状態ではマスター側のプレイ/ストップ操作しかできない。プレイボタンを押すと複数のDS-10が完全に同期して演奏される。音声信号の出力自体はマスターのDSにまとまるわけではなく、各DSのスピーカ/ヘッドフォンから出力される

DS-10はニンテンドーDS用ソフトということもあり、ゲームソフトとして捉えている人もいるかもしれない。しかしその中身は本格的なアナログシンセサイザ+ステップシーケンサに他ならず、逆にいえばゲーム的要素は一切ないといえる。パソコンのソフトとは違い同時に複数のシーケンサ画面を開くことはできないため、複雑な曲を作るのはちょっと大変なところまでアナログシンセっぽいのだ。これだけのソフトが4,800円で手に入る。既にニンテンドーDSを所有している人はもちろんだが、アナログシンセが好きでどこでも使いたい人なら、DS本体ごと買っても後悔はしないだろう。