私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材を通して多くの人とお会いしてきました。そしてあるとき気がつきました。お金を貯めている人が、共通してやっている習慣があることを。お金が貯まる人は間違いなく節約家です。節約家というのはケチとは違います。ムダなことにはお金は使いませんが、ここぞということにはしっかり使います。本当に楽しいことや価値のあることにお金を使うために、日々のムダをなくす……そんな賢い節約家さんたちの習慣をご紹介します。

お得に買った食材は"おいしく保存する"

まずは、次のチェックリストで自分に当てはまるものをチェックしてみてください。

□冷蔵庫の野菜室に今、何が入っているかわからない

□冷凍室に霜焼けした肉がある

□ここ2~3カ月、冷凍室の底を見たことがない

□野菜室から溶けかけたにんじんを発見したことがある

□2袋で割安なもやしを買って、食べきれたことがない

□冷蔵庫に賞味期限ぎれのドレッシングやたれが3つ以上ある

□肉は買ってきたままのパックで冷蔵庫に入れる

□野菜室からシナシナのしょうがを発見したことがある

□納豆を干からびさせたことがある

□玉ねぎやじゃがいもがよく芽を出す

このうち3つチェックがついたら、あなたの食材の保存法では、残念ながらお金は貯まりません。食費を上手に減らすカギは3つあります。それは(1)ムダなく買う、(2)おいしく保存する、(3)しっかり食べきる、の3つです。この3つのカギのうち「ムダなく買う」は、前回の『「おうちごはん」の成功のカギは"買い方"にあり!』でお話しました。今回は2つめの「おいしく保存する」について説明します。

食材を捨てることは"お金を捨てる"のと同じこと

世の中、お金を捨てる人はいません。でも、冷蔵庫の野菜室で腐りかけている野菜、冷凍室で冷凍化石化したお肉、いつ買ったかわからない賞味期限ぎれの食品を捨てることはあります。捨てるときには、ちょっと心が痛むものですが、食べられないものを冷蔵庫に保存しておいても仕方ないなので「まあ、しょうがないよね…」と捨ててしまいます。でも、その捨てた食材は全部お金を出して買ったもの。つまり、食材を捨てることは、お金を捨てるのと同じというわけです。

私は仕事柄、これまでに何人もの「やりくり上手さん」と呼ばれる主婦の方を取材してきましたが、彼女たちは決して食べ物を捨てません。食べ物を捨てることは、お金を捨てるのと同じということがわかっているからです。お金を捨てるようでは、お金が貯まるわけがありません。

お肉は冷凍しないで下味をつけて保存する方法もあり

大量パックのお肉をそのまま冷凍室に直行させるのは、一番してはいけない最悪NG。大きなかたまりのまま凍ってしまい、使いにくいからです。よくあるのが、100gずつなど1回に使う分量を小分けして冷凍する方法。小分けするのが面倒なら、100g程度の少量パックを何個か買うのがオススメ。その場合でも発泡トレーをはずして、パックについていたラップで包んでから冷凍します。

さて、小分け冷凍も、もちろんOKですが、私は冷凍せずに下味をつけて、"冷蔵保存"することをオススメします。理由は(1)冷凍すると、どうしても味が落ちる、(2)解凍の手間と時間がかかる、(3)下味をつけておくと時短調理できることにあります。

塩、しょうゆ、酒などの調味料やしょうがには、菌の繁殖を防ぐ働きがあるので、お肉を長持ちさせることができます。下味をつけるときのコツが、使う予定に合わせて、薄味から濃い味にすること。味を濃くするほど保存可能な期間は長くなりますが、いったん濃い味にすると、味が邪魔をして用途が制限されるからです。

早く使う予定のお肉から次の順番で味つけします。

  1. 塩+酒

  2. 塩+酒+しょうが

  3. 塩+酒+しょうゆ

  4. 塩+酒+しょうが+しょうゆ

密閉できる保存容器に入れて、チルド室で保存します。「塩+酒」はお肉の臭みをとる程度ですから揚げ物、煮物、炒め物など、どんな料理にも応用可。カレー、シチュー、汁ものにもなります。「塩+酒+しょうが+しょうゆ」まで味をつけると、用途は狭まりますが、豚肉は焼くだけでしょうが焼きに、鶏肉は小麦粉をつけて揚げれば唐揚げになり、時短調理に役立ちます。

保存期間は「塩+酒」で3日、「塩+酒+しょうが+しょうゆ」で1週間が目安。下味→チルド室保存にむくのは、豚こま切れ肉、薄切り肉、ロース肉、牛こま切れ肉、鶏胸肉、鶏もも肉などです。

魚は傷みが早いので買った日に食べるのが一番ですが、そうもいかない場合は、しょうゆ漬けや味噌漬けにしましょう。お肉と同じように、保存期間が長くなると同時に魚の臭みがとれ、おいしく食べることができます。保存容器に入れチルド室で保存し、保存期間の目安は4日程度。

野菜は「畑になっていたときの向き」で立てて保存

野菜は水分の蒸発を防ぐために、ビニール袋に包んで野菜室で立てて保存。横に寝かせると野菜を重ねて入れることになり、葉物野菜は傷みやすくなるのでNG。また下の方の野菜も忘れがちです。白菜やキャベツは芯が下、きゅうりやなすはヘタが上など「畑になっていたときの向き」で立てて保存するのが基本。100円のプラスチックカゴや牛乳パックを利用して立てましょう。

ほうれん草、ブロッコリー(小房に分ける)、大根(短冊切りにする)を下ゆでしてから冷凍する方法もありますが、食感が落ちるのは否めません。野菜の冷凍でオススメなのはきのこ類。特売で買ったしいたけ、しめじ、えのき、えりんぎなどをバラバラにほぐしてから冷凍します。全部混ぜて自家製の冷凍きのこミックスにしておくと、炒め物、汁もの、シチュー、炒飯などに冷凍のまま使えて、重宝します。

冷凍以外にも水に浸けておくことで、保存期間が長くなる野菜があります。その代表がもやし。買ってきたビニール袋のまま野菜室に入れておくと、せいぜいもって2日。3日目には、もう酸っぱいようなニオイがするものです。密閉容器に移し替えて、かぶるくらいの水を入れて冷蔵保存しておけば、4~5日経ってもシャキッとしています。水は2~3日に1回取り替えます。しょうがも水に浸けて保存すると、驚くほど長持ちするのでオススメです。

もうひとつ野菜の保存で大事なのが、使いかけの野菜をカゴでひとまとめにしておくこと。中途半端に残った使いかけの野菜は、それぞれ切り口をラップでピッチリ包み、カゴにまとめて入れて、野菜室の目につくところに置いておきます。野菜一切れでも、お金を出して買ったもの。ムダにせずに食べきることが、お金が貯まる習慣の第一歩です。

<著者プロフィール>

村越 克子

フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。