今まで本連載で紹介してきた関数の数式では、セルのアドレスの前に「$」を付けて絶対参照にしているケースが数多くありました。今回はこの絶対参照の基本的な使い方(相対参照との違い)と、相対参照で記述した数式のアドレスを簡単に絶対参照に変換するショートカットキーについて確認していきます。

本連載では、「よく使うけど忘れやすいMicrosoft Officeの操作」をキーワードに、Officeアプリケーションの使い方を解説していきます。記事の制作には、執筆時点で最新の状態にアップデートしたMicrosoft Office 2016を使用しています

絶対参照は、数式をコピーしても参照セルが変わらない

Excelの数式では、参照するセルを行・列のアドレスで指定します。「A1」のように通常のアドレス記述で指定した場合は「相対参照」となり、数式を他のセルにコピーすると、参照するセルのアドレスもずれていきます。たとえば「A1」とアドレスを記述した数式は、下のセルでは「A2」を参照します。

同じ行内のセルを参照しているような数式をコピーする際は、相対参照が便利なのですが、数式の内容によっては参照範囲がずれてほしくないケースも少なくありません。以下、本連載125回で紹介した数式から、相対参照では問題が発生するという例を確認してみます。

  • 数式を入力したいセル(画面の例ではC3)をクリックして、数式バーに「=LOOKUP(」と入力し、検査値となるB2セルをクリックして数式に入力します

  • 「,」(カンマ)で区切って、検査範囲(画面の例ではE2~E7)をドラッグして数式に入力し、さらにカンマで区切って対応範囲F2~F7をドラッグしてカッコで閉じ、「=LOOKUP(B3,E2:E7,F2:F7)」という数式を完成させます

  • [Enter]キーで確定させると、検査範囲のE2~E7セルで検査値の「2」に対応するE3セルの対応範囲となるF3セルの値(文字列)「努力」がC3セルに表示されます

  • 数式を入力したC3セル右下のフィルハンドルを下にドラッグし、C4~C7セルに数式をコピーします

  • C6とC7セルの値がおかしくなってしまいました。C6セルを選択して数式を確認すると、相対参照で記述した検査範囲と対応範囲のアドレスが下にずれてしまい、何もないセルを参照していることがわかります

相対参照を絶対参照に修正するには、[F4]キーが便利

このように、相対参照で問題が発生するケースでは、数式のアドレスの前に「$」を付けて絶対参照で指定するのがよい解決策となります(A1ならば$A$1)。とはいえ、多数のアドレスを一つずつ絶対参照に修正していくのは面倒な作業です。Excelには相対参照を絶対参照にするためのショートカットキーが用意されており、これを活用することでスムーズに変更できます。

  • 数式の検査範囲と対応範囲を絶対参照に修正します。まずは数式を修正したいC3セルをクリックして選択します

  • 数式バーで絶対参照に変更したい検査範囲と対応範囲部分をドラッグして選択し、キーボードの[F4]キーを押します

  • 選択した範囲のアドレスの前に「$」が付いて絶対参照に修正されました。手動で「$」を入力していくよりも効率的なので、このショートカットキーは覚えておくと便利です

  • [Enter]キーで確定させたら、修正したC3セル右下のフィルハンドルを下にドラッグして、もう一度C4~C7セルに数式をコピーしてみましょう

  • 今度はC6、C7セルも正しい値(文字列)が表示されました。C7セルを選択して数式を確認してみると、検査範囲と対応範囲は絶対参照なのでそのまま、相対参照の検査値のみが変更されていることがわかります