連載「ワーママのモヤモヤ整理します」は、託児付きランチサービス「ここるく」の経営者で、育休復帰・働き方改革のコンサルティングも手掛ける山下真実さんが、ワーママが抱えるモヤモヤを整理・解消に導いていく企画です。
5回目となるモヤモヤ整理は、番外編。来年に結婚を控えた27歳の女性が相談者です。大企業の総合職として働いていると、男性と同じようにキャリアの階段を上がっていっているのは子どもがいない女性ばかり。キャリアアップを考える上で、出産・子育てがネックになる組織の現状にモヤモヤしているといいます。
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【今回の相談者】
みゆさん(27歳) 来年に結婚を控えている。幸せを感じる日々である一方、出産・子育てなどのライフイベントを考えると、これからのキャリアに悲観的になってしまう。
出産したら、組織の中でのキャリアアップは難しい?
山下さん: 「まずはご婚約、おめでとうございます! 新居や式場探しなど、これから楽しいイベントが満載ですね。ただキャリアに関しては、不安要素もあるということですが?」
ゆみさん: 「いわゆる大企業と呼ばれるような大きい組織で、総合職として働いているのですが、今後のキャリアアップに関して不安があります。管理職、さらに上の経営幹部の顔ぶれを見ていると、男性、独身女性、もしくは結婚はしていてもお子さんはいらっしゃらない女性ばかり。出産したらやはり出世は諦めざるを得ないのかなぁという気がしてしまうんです。女性の同期とも『子どもがいたら、うちの会社では上がれないよね』とよく話しています」
「現状」を見て悲観するのはもったいない
山下さん: 「これからの時代、子育てしながら働く女性を応援し、その能力を活かして企業価値の向上を達成できない会社は淘汰されていくでしょう。消費者に選ばれなくなったり、良い人材が取れなくなったりするので、未来を描いている会社であればあるほど、子育てしながら働き続けたい人のチカラをいかに引き出すか、真剣に考えているはずです。ですから、今現在、会社の幹部や経営陣に子育て中の女性がいないからということだけで、『子どもがいたら出世できない』と考えてしまうのはものすごくもったいないと思います。現状はそうでなくても、組織の在り方はこれから確実に変わっていくはずです」
みゆさん: 「確かに組織のトップは、山下さんのおっしゃるような組織作りに理解があると感じます。ただ、私たちが直に接する中間管理職はなかなか変わらないなぁと感じることも多いです。子育て中の女性の働き方に理解がなかったり、戦力外と考えている節があったり……」
山下さん: 「残念ながら、子育てしながら働く女性に理解のある中間管理職ばかりではないのが現状としてはありますよね。ただ、少し時間はかかるかもしれませんが、それも必ず変わっていきます。そしてそのような変革を待っている間にも、子育て中の女性たちのチカラを引き出して成果を出していく管理職が、一人二人と現れるようになるはず。その人の成果が社内で知られるようになればなるほど、他の管理職もそれに追随せざるを得なくなっていきますから、そういう変化を見逃さないことも大切ですよ」
みゆさん: 「なるほど、私が今できることは、子育て中の女性の力を引き出してくれる管理職を、応援することかもしれません」
山下さん:
「選挙に行くのと同じように『あの部長とは仕事がしやすい』『あの部長の下だからこそ、子育て中の女性が活躍できる』というのは、上層部の耳に入るようにするといいかもしれませんね」
「子育て中の女性たちは、『自分はお荷物なんじゃないか』と、会社の中で引け目を感じがち。でもこれからの時代を考えれば『私たちだから、この会社を良くしていける』という自負を持っていいんですよ。 その代わりに、もしみゆさんも将来子育てしながら働く時が来たら、会社の企業価値を高めることや、組織のゴールに向かって真剣に取り組む姿を見せていけるといいですね」
山下真実
株式会社ここるく 代表取締役・社会起業家・2児の母
米国留学によるMBA取得、米系投資銀行・金融コンサルを経て、ママになったことをきっかけに子育て支援という全くの新領域へ。人気レストランから選べる託児付きランチサービス「ここるく」を2013年にスタート。サービスを通じて集まる働くママのインサイトと、MBA・コンサルで得た専門知識の両面から、ママ向けサービス開発や育休復帰・働き方改革コンサルティングなども手掛ける。
『第14回女性起業家大賞』、三菱UFJ銀行主催『Rise Up Festa』最優秀賞受賞。