連載「ワーママのモヤモヤ整理します」は、託児付きランチサービス「ここるく」の経営者で、育休復帰・働き方改革のコンサルティングも手掛ける山下真実さんが、ワーママが抱えるモヤモヤを整理・解消に導いていく企画です。
3回目となるモヤモヤ整理は、時短勤務で復職したばかりのWeb編集者、ななみさんが主人公。勤務時間中に仕事が終わらず、家でサービス残業してしまう現状に、モヤモヤしているといいます。
【今回の相談者】
ななみさん(31歳) この春復職したばかりの1児のママ。産前は20~21時まで残業をしていたが、現在は16時までの時短勤務。就業時間内に仕事が終えられず、自宅でサービス残業している現状にモヤモヤしている。
『自分の実力不足』で残業しているから、申告できない
山下さん: 「勤務時間内に終わらない業務を、自宅に持ち帰っているとのこと、子育てをしながら大変だと思います。他の人に業務の一部を担ってもらったり、業務量を減らしてもらったりして解決するのは難しそうですか?」
ななみさん: 「産前、フルタイム勤務だった頃に比べると、任されている業務量は少ないと思うんです。加えて仕事を振ろうにも、仕事の性質上、やっぱり私しか担当できない・切り分けできない業務があって……どうしても締め切りに間に合わなかったりすると、土日や早朝、深夜に家で作業してしまいます」
山下さん: 「上司はそんなななみさんの現状を把握しているのかな?」
ななみさん:
「私から伝えていないので、知らないのではないでしょうか……。今渡されている仕事は、上司が『時短勤務でも、できるはずだ』と思って渡してくれていると思うんですよね。そう考えると、それができなかったときに『私の実力不足』と指摘されるのが怖くて。実は今の会社に転職して編集者としてのキャリアは2年弱くらいしかないので、自分でも実力不足は認識しています」
「もし残業していることを申告したら『勤務時間内に終わるように仕事の効率を上げて』と言われるだろうなって思って……自分では、効率よく仕事が進むようにかなり工夫しているつもりなのですが」
山下さん: 「努力はしていても、なかなか勤務時間内に仕事を終えるのは難しい現状があるんですね」
ななみさん:
「これ以上今の仕事を効率化することは難しいと思っている部分があります。でも、時間内に仕事が終えられないことで『仕事ができない人』という烙印を押されたくなくて、影で帳尻を合わせている感じです」
「勤務時間外は子どもとの時間を大切にしたいと思っています。でも、仕事も中途半端にするわけにはいかないから、すごく葛藤があって……仕事を変えた方がいいと思い、最近まで転職活動もしていましたが、転職するタイミングでもないのかなぁ……」
山下さん: 「なるほど、モヤモヤしそうですね……ちなみに、ななみさんの会社では、在宅勤務とかも可能なの?」
ななみさん: 「制度として成立しているわけではありませんが、小さい会社なので、基本的に任された仕事をしていれば、どこで仕事をしようと問題ありませんね。成果を出していれば大丈夫、という雰囲気があります。実際、子どもの看病をしながら、家で仕事をしていることもあるので」
山下さん: 「与えられた業務をやりきって成果を出すことで評価されるのであれば、『時短勤務+家で残業』で成果を出しても、『フルタイム勤務』で成果を出しても、評価としては同じということになりますよね。そもそもなんだけど、どうして時短勤務で復帰することにされたんですか?」
ななみさん: 「先輩のママ社員が時短勤務で復帰したこともあって、初めての子だし、初めての復職だし、時短勤務の方がいいのかなぁと思いました……でも確かに、私の場合、言われてみればフルタイム勤務に戻すのもアリなのかもしれません」
自信と経験がないから「時短をやめられない」のはもったいない
山下さん: 「フルタイム勤務に戻すという選択、私もアリだと思います。まずはなるべく主観的にならないように、土日や早朝・深夜に行った残業の実績を1カ月分くらい整理して情報として持っておいて。そして『これだけ業務外で働いているので、フルタイム勤務に切り替えたいです』と会社に伝えられたらいいのではないでしょうか。会社としても残業している実態は、報告してほしいはずですから、誰も不幸になりません」
ななみさん: 「でも、時間内に仕事ができないからフルタイム勤務、とは言いづらいです……」
山下さん:
「言葉の端々に、『転職して2年』とか『実力不足』などのワードが出てきているから、ななみさんとしては、その点も気になっているのよね。自信もないし、経験もなく、この業務量でフルタイム勤務とは言いづらいってことなのかな。でも、いつになったら『自信も経験もある』と言えるんだろう?」
「すごいパフォーマンスを上げている人でも自信のない人はいっぱいいるし、全然成果を出していなくても自信だけはある人もいっぱいいます。それは本人がどう表現しているかだけでは測れない部分もあって、本当にななみさんは、パフォーマンスを上げられていないのでしょうか? 意外と上司は、評価してくれているかもしれませんよ。だから、『今はまだ自信と経験が伴っていないからフルタイムに戻しづらい』というのはもったいないと思います」
ななみさん: 「いつになったら編集者として一人前と言えるのか……いつになっても言えなそうだなと私も自覚はしています(笑)。そうですね、実力不足と思ってしまうことと、現状の業務・働き方は割り切って考えないといけませんね」
山下さん: 「実力不足と考えてしまって、そのためにサービス残業をしてしまうというのは『本当はこの時間内でここまで到達したい』という自分の中の理想像がしっかりあるということなので、それは素晴らしいことです。ななみさんのようなクリエイティブな仕事は、斬新なアイデアや面白い視点など、勤務時間に左右されない部分で、成果を出せるチャンスも多そうですよね。フルタイム勤務に戻すことで、より一層、経験や実績を積みやすくなるし、チャンスも増えると思いますよ。どきどきするけど大丈夫。応援しています!」
山下真実
株式会社ここるく 代表取締役・社会起業家・2児の母
米国留学によるMBA取得、米系投資銀行・金融コンサルを経て、ママになったことをきっかけに子育て支援という全くの新領域へ。人気レストランから選べる託児付きランチサービス「ここるく」を2013年にスタート。サービスを通じて集まる働くママのインサイトと、MBA・コンサルで得た専門知識の両面から、ママ向けサービス開発や育休復帰・働き方改革コンサルティングなども手掛ける。
『第14回女性起業家大賞』、三菱UFJ銀行主催『Rise Up Festa』最優秀賞受賞。