連載「ワーママのモヤモヤ整理します」は、託児付きランチサービス「ここるく」の経営者で、育休復帰・働き方改革のコンサルティングも手掛ける山下真実さんが、ワーママのモヤモヤを整理・解消に導いていく企画です。
これまで、モヤモヤを抱えたたくさんのワーママの皆さんにご登場いただきました。そこで、当時のモヤモヤはその後どうなったのか、過去の相談者さんを対象にした近況報告会(オンライン)を開催。第1回に引き続き、山下さんの格言、ためになるアドバイスを改めて振り返ってみましょう。
やりたい仕事にこだわることができた
まずお話してくれたのは、相談当時、初の育休復帰を控えていたはるみさん。復帰後、産休前とは異なる仕事、異なる職場で働くことに、不安を抱えていました(※クリックで過去記事に飛びます)。
今までと勝手が違う環境で、さらに時間の制約もある中で、やりたい仕事ができるのか……そんな悩みに山下さんは「根拠はなくてもいい、やりたいことがあれば『やれるかわからないけれど、やりたい』という気持ちを伝えましょう。伝えて初めて、上司ははるみさんがチャレンジしやすい環境を整備できます」と助言していました。
復帰して1カ月、はるみさんの近況は……?
「とにかく激動の1カ月でした。なんとか1つやりたい仕事を成し遂げることができましたが、今までと違う上司とのコミュニケーションが難しかったり、夜中も仕事をしてしまったりして、少ししんどいなと感じている部分もあります」(はるみさん)。
そんなはるみさんに、山下さんはこう声をかけました。
「復帰直後って、知らず知らずのうちにがんばってしまうんですよね。心身ともに緊張感もあるから寝不足になったり、多少の無理も気持ちでカバーしちゃったりする。その後しばらくしてから、しんどさが一気にやってきて、ダウンしちゃう人はけっこう多いんですよ」。
やりたい仕事は少しずつ実現しつつあるものの、仕事も家庭もストイックに取り組みすぎている自分に気づき始めていた、はるみさん。
「どうしたら"がんばりすぎ"って気づけますか?」との質問に、山下さんは「周囲に協力を仰ぎましょう」とアドバイスしました。
「両親や一緒に住んでいる旦那さん、同僚・友人に『いつもの様子と違うと感じたら教えてほしい』と伝えておくといいかもしれません。そしてそのように指摘されたら、休息をとりましょう。上手に息抜きしてくださいね」
世間一般の声に、惑わされなくなった
次は、子どもと過ごす時間が短いことにモヤモヤとした思いを抱えていたもえさんの近況報告(※クリックで過去記事に飛びます)。
保育園に夕食をお願いしていること、お迎えに行ってから寝るまでの時間がすごく短くなってしまうことなど、世間一般とは少し異なる子育ての仕方に、自信が持てずにいたのですが……?
「親子で納得しているのであれば、それが世間一般とは違っていても、問題ない。『我が家のルールはこれ』『外のルールと違っても気にしない』と自分の中で振り分けると、気持ちが揺れづらくなる、と言葉をかけてもらったのが、印象に残っています」
「実は息子が3歳のとき、よりよい環境で過ごしてもらいたいと思い、保育園を転園させたんです。"3歳で転園はかわいそう"と世間では言われがちなのですが『我が家はこれがベスト』と考え、決断できました」(もえさん)。
保育園が変わったことで、息子さんの夕食を園にお願いする生活も変わったそう。
上司にも「保育園の都合上、これからは18時退勤にします。でも、18時までの勤務でも結果を出すから大丈夫です」と伝え、働き方も変えられたもえさん。山下さんは働き方を変えるときのもえさんの姿勢に、見習うべき点が多いと指摘します。
「『18時に退勤することは決定事項、結果は出します』と言い放って働き方を変えたっていうのが、すごくかっこいいなと思いました。上司からすると、こんなに優しい言い方ってないんです。自らリスクテイクして『結果は出す』と言ってくれると、チームも協力しやすくなるし、協力しがいがある。典型的な周囲を味方につける言動ですね」
現在2人目妊娠中で、仕事も私生活もますます充実しているもえさん。これからも、自分軸の決断を大事にして、もえさんらしさにあふれた毎日を送っていただきたいですね。
営業の良さを見つめ直し、やりたいことにもチャレンジ
そして最後は、育休中にご相談をくださったあゆみさん。※クリックで過去記事に飛びます。
入社してからずっと続けてきた営業職、育休中、「本当に自分がしたい仕事なのか?」と疑問に思い、復帰してからは、コーポレート部門への異動希望を出してみたいと相談されていました。
さて、復職後のあゆみさんはどうなったかというと……?
「山下さんの『営業はいい仕事、だけど、結論から言えば、やりたいようにやって、そこでがんばればいい』という言葉が印象に残っています。悩んだ結果、復職後も営業の仕事をしています」
「ただ、やりたいこともやってみています。今いる部署では、コーポレート部門で取り組んでみたいと思っていた、働き方改革や業務の効率化について、営業の立場から発信しています。営業として働きながら、当事者として発信する方が向いていると感じていて、当面その方向で仕事をがんばろうと、今は前向きな気持ちです」(あゆみさん)
前向きな気持ちで働けている一方、テレワークが常の毎日で、仕事とプライベートの切れ目がなく、仕事との向き合い方、子どもとの向き合い方に迷うこともあるそう。
山下さんからは、このようなアドバイスがありました。
「ビフォーコロナのワーママは、職場を出て、電車に乗った瞬間に第2ラウンドのゴングが鳴っていたはず。家事、お風呂、寝かしつけ……第2ラウンドへの切り替えが自然とできていたけれど、在宅ワークでそのゴングが鳴らないんだろうなって思います。好きな音楽を聴いたり、お茶を飲んだり、仕事からプライベートへ切り替えるための自分なりの儀式を作ってみては?」
人生に対する向き合い方は人それぞれ
新型コロナ流行後の世界、これまでのワーママライフを振り返って、今後の生き方・働き方について考えた人も多いはず。
ただ、振り返りの機会を作ること、自分の気持ちを整理することは、自分のペースで進めればいいと、山下さんはアドバイスします。
「天才の考え方はこう、幸せな人の考え方はこう、生き方についての考え方は、さまざまな本で紹介されています。成功事例から学ぶのは良い事ですが、“きっと今より良い方法があったはず”と思いこみ過ぎても迷走します。大事な仕事の節目、夫から声をかけられたとき、年に1度じっくりと……人によって考えるタイミングも違えば、その方法も違います。自分なりの方法で向き合い続ければいいと思いますよ」。
ワーママライフの振り返り方は人それぞれ。だけど、モヤモヤ整理に煮詰まったら、ぜひこれからも、本連載を参考にしてみてくださいね。
山下真実
株式会社ここるく 代表取締役・社会起業家・2児の母。
米国留学によるMBA取得、米系投資銀行・金融コンサルを経て、ママになったことをきっかけに子育て支援という全くの新領域へ。人気レストランから選べる託児付きランチサービス「ここるく」を2013年にスタート。サービスを通じて集まる働くママのインサイトと、MBA・コンサルで得た専門知識の両面から、ママ向けサービス開発や育休復帰・働き方改革コンサルティングなども手掛ける。
『第14回女性起業家大賞』、三菱UFJ銀行主催『Rise Up Festa』最優秀賞受賞。