JR東海は毎年、1月1日に限り有効の「新春 こだま&ワイドビューフリーきっぷ」を販売している。JR東海全線有効。在来線の特急列車も自由席に乗車可能。東海道新幹線も「こだま」だけでなく、名古屋~新大阪間では「ひかり」も乗れるという、まさに"お年玉"チケットだ。2013年版ではJR東海全線のほか、伊勢鉄道も乗車可能となった。料金は普通車自由席用が大人1万3,000円、こども3,000円。
1万3,000円といえば、東京駅からだと掛川駅まで往復(1万4,280円)すれば元が取れる。同きっぷはさらに2,000円プラスすればグリーン車指定席4回用も購入できる(大人1万5,000円、こども5,000円)。指定席という安心感もあるし、グリーン車用のほうが断然お得といえそうだ。販売期間は2012年12月1日から2013年1月1日まで。元旦当日も購入可能だ。
海外からの旅行客向けのレールパスなどを除くと、東海道新幹線に乗り放題というきっぷは少ない。貴重な機会だから、新幹線ファンとしては新幹線ばかり乗り続けたい。東海道新幹線の各駅で下車してもいいし、東京~新大阪間を何度も往復して、700系・N700系を乗り比べてみるのもいいかもしれない。でも新幹線だけだと、旅気分は薄めかも……。というわけで、筆者は在来線を絡めた1月1日の日帰り旅行を3パターン妄想してみた。
在来線特急で伊那谷、木曾谷車窓プラン
まずは新幹線と在来線特急車両373系、振り子式特急車両383系を楽しむ旅。「こだま631号」を豊橋駅で降りて、特急「(ワイドビュー)伊那路」と飯田線の普通電車で岡谷駅へ。ちょっとだけエリアを飛び出してJR東日本の中央本線に乗り、塩尻駅へ渡って特急「(ワイドビュー)しなの」で名古屋駅へ行き、「こだま680号」で戻るプランだ。
冬の伊那谷を北上し、北へ向かうに従って冬景色が深まる。諏訪・岡谷地域はあまり雪が降らないけれど、車内で雪見酒ができたらいいな。帰りの風景のハイライトは寝覚の床。座席は進行方向右側をキープしたい。
「(ワイドビュー)伊那路1号」に乗るためには、東京駅7時26分発の「こだま635号」でも間に合う。このプランでは早起きして、豊川稲荷でお参りしてみた。帰りも名古屋駅20時28分発の「こだま684号」にすれば、駅ビルで名古屋名物の夕食タイムだ。ただし東京駅23時16分着になるから、自宅までの終電の時刻は要確認だろう。
近江鉄道全線乗車&近江八幡お参りプラン
東海道新幹線の各駅で接続する路線には、魅力的な私鉄や第3セクターも多い。掛川駅で天竜浜名湖鉄道に、浜松駅で遠州鉄道に、豊橋駅で豊橋鉄道と名古屋鉄道に接続する。名古屋鉄道は名古屋駅や岐阜羽島駅でも乗換可能だ。名古屋駅では地下鉄や近鉄、あおなみ線にも乗り換えられるし、京都駅なども接続路線が多い。
その中でも、ひときわローカル色が濃い鉄道といえば近江鉄道だ。接続駅の米原まで、たっぷり「こだま」の旅も楽しめる。
出発は東京駅6時56分発の「こだま633号」。米原駅を通る「こだま」の始発列車だ。米原駅で早速、近江鉄道に乗換え。高宮駅から多賀線で多賀大社前駅へ。駅から多賀大社まで徒歩10分ほどらしい。お参りして、きっと出ているはずの屋台でお昼ごはん。多賀線に戻り、本線の終点である貴生川駅で折り返す。
貴生川駅からは信楽高原鐵道も出ているから、狸の置物を買いに行くプランも作れそう。でも今回は時間がないから折り返す。近江鉄道では、自社制作車両の220形や元西武鉄道の電車を改造した車両など、ユニークな電車に乗れる。彦根駅には古い電気機関車も保存されているし、車窓からチラ見できたらいいな。
八日市駅まで戻り、八日市線に乗れば近江八幡駅に行ける。ここから近江八幡へはバスとロープウェイを乗り継ぐ。近江八幡でお参りして、好天なら琵琶湖が見渡せるはず。近江八幡市街も見所が多そうだ。2時間では足りないかも!?
帰りは東海道本線で米原駅へ。JR西日本の区間なので別料金となる。帰路は米原駅から名古屋駅まで「ひかり」、名古屋駅から「こだま」で東京駅へ。なお、近江鉄道には土休日限定の「SSフリーきっぷ」があるけれど、大みそかと正月三が日は利用できない。
お伊勢参りと伊勢湾1周お参りプラン
3つ目のプランは、今回発売分から利用可能となった伊勢鉄道を通るプラン。お正月に伊勢鉄道を通るといえば、やっぱり伊勢神宮へ初詣だろう。かなり混雑しそうだけど、これは妄想だから大丈夫(笑)。「こだま」で名古屋駅へ向かい、ここから快速「みえ」に乗れば、伊勢神宮に近い伊勢市駅まで乗換えなしだ。
伊勢神宮は外宮と内宮があり、離れた両宮をバスが結ぶ。ひと回りしたら伊勢市駅に戻って帰路につく。でも、名古屋に戻って新幹線に乗るだけではいまひとつ芸がない。そこで参宮線の終点、鳥羽駅へ向かう。近鉄特急に追い越されつつ、のんびりと車窓を眺めながらの旅だ。鳥羽から伊勢湾フェリーに乗って伊良湖岬へ。お正月にプチ船旅としゃれこもう。
鳥羽駅に着く頃には日没の時刻となっていて、フェリーの旅は薄暮の中、遠くに街の灯を眺めながらの道中になりそう。途中で見える神島は、三島由紀夫の小説『潮騒』の舞台。映画のロケ地にもなっている。船からバスを乗り継いで三河田原駅へ向かい、豊橋鉄道で新豊橋駅へ。夜のローカル線の風情を楽しもう。豊橋市街の灯りを見ると、ほっとするかもしれない。帰りは豊橋駅から「こだま」だ。
なお、伊勢湾フェリーでは、乗船券と豊橋までのバス、豊橋鉄道をセットにした「豊橋~鳥羽割引キップ」(大人2,000円、子ども1,000円)を販売している。正月は繁忙期ダイヤとなり、船の便が増えるけれど、バスは普段の休日ダイヤで、接続時間にずれが生じている様子。伊良湖ターミナルでゆっくりおみやげを選ぶ時間ができそうだ。