JR東日本秋田支社は12月29日まで、連続3日間有効の「秋田・津軽由遊パス」を販売中だ(利用期間は12月31日まで)。JR東日本の秋田県、青森県西部のエリアと、由利高原鉄道、秋田内陸縦貫鉄道、弘南鉄道の普通列車自由席に乗り放題。大人4,600円、小児2,300円。紅葉の時期でもあるし、今回は北東北のローカル線と紅葉スポットを巡ってみたい。

五能線経由で運転される「リゾートしらかみ」(写真はイメージ)

有効期間の3日間をフルに使うなら、前日にフリーエリアに入って宿泊し、翌日から旅を始めたい。しかし、東京から秋田・青森に向かうなら、寝台特急「あけぼの」にも乗りたい。そこで今回、往復とも「あけぼの」利用で考えてみた。下り列車の秋田着は6時台、上り列車の秋田発は21時23分。初日の朝から最終日の夜までフリーエリアに滞在できる。

「秋田・津軽由遊パス」のフリーエリア

「秋田・津軽由遊パス」の販売場所は、フリーエリア内のJR東日本みどりの窓口、指定券発券機、びゅうプラザとおもな旅行会社。その他、フリーエリア内を目的地とするきっぷを購入する場合、フリーエリア外の窓口でも購入できる。「あけぼの」のきっぷと一緒に「秋田・津軽由遊パス」も買っておくといいだろう。

1日目 : タブレット交換と五能線を楽しむ

上野駅21時15分発のブルートレイン「あけぼの」は、翌朝6時に羽後本荘駅に到着。次の秋田駅まで乗って戻ってきてもいいけれど、長距離列車からローカルな駅に降りたほうが旅らしくていい。「ローカルな駅」といっても、羽後本荘駅は有人駅で、みどりの窓口も5時50分から開いている。「秋田・津軽由遊パス」を買い忘れたときなど、ここでも入手できるだろう。

羽後本荘駅から由利高原鉄道に乗って終点の矢島駅まで往復し、秋の鳥海山麓を映す車窓を楽しもう。注目は前郷駅のタブレット交換だ。タブレットとは列車の「通行手形」で、区間ごとに1列車のみ走行できる。正面衝突を防ぐしくみだ。かつては全国で見られたが、いまは由利高原鉄道のほかに津軽鉄道、くま川鉄道くらいしか残っていないという。

秋田駅からは「リゾートしらかみ3号」に乗り、風光明媚なローカル線として有名な五能線へ。日本海側の沿岸を走る区間が多く、四季折々の海の風景を楽しめる。沿線に有名な観光スポットも多いので、全線乗り通すだけではもったいない。どこかの駅で下車して観光し、3時間後の「リゾートしらかみ5号」に乗り継ごう。なお、「リゾートしらかみ」は普通列車だけど全車指定席なので、実際に乗るときは指定券の手配を忘れずに。

「リゾートしらかみ」停車駅の観光スポットとしては、十二湖駅から十二湖入口の観光施設まで無料送迎バスが出ているし、深浦駅はレンタサイクルで北前船の風街の港を探索できる。鰺ヶ沢駅ではブナ林探索を楽しむタクシー観光プランがある。今回は途中のウェスパ椿山駅で降りるプランにした。ウェスパ椿山はスロープカーの「しらかみ号」で展望台へ行くことができ、白神山地と日本海を一望できる。他にもガラス工房やドーム型開閉式展望露天風呂などがあって、3時間を過ごすには十分だ。

「リゾートしらかみ5号」は16時14分にウェスパ椿山駅を発車。10月以降は車窓から夕陽を眺められるだろう。国立天文台のウェブサイト「各地のこよみ」で日没時刻を調べておこう。この日は弘前で泊まる。弘前駅周辺では、「弘前プリンスホテル」「ホテルルートイン弘前駅前」がトレインビューホテルとして人気があるようだ。

2日目 : 弘南鉄道で紅葉の名所へ

2日目は弘前から弘南鉄道弘南線で終点の黒石駅へ。さらにバスに乗り換え、板留で下車する。徒歩5分で紅葉の名所「中野もみじ山」に行ける。10月下旬から11月上旬が見頃とのこと。この時期はライトアップも実施しているそうだ。ただし、前夜の到着時刻だとバスの便がないので、レンタカーを使うといいかもしれない。

弘南線の車窓からは岩木山を遠望できる。田舎館駅付近では、かつて弘南鉄道や同和鉱業小坂鉄道で活躍したディーゼルカーが並んでいるという。

弘南鉄道大鰐線の電車が発着する中央弘前駅

弘前に戻ったところで、こんどは弘南鉄道大鰐線に乗る。大鰐線の中央弘前駅は弘前駅から少し離れており、30分くらいを見込んで歩くことに。ちょうどお昼なので、付近で昼食も取りたい。筆者は中央弘前駅の建物内にある食堂で「りんごラーメン」を食べたことがある。麺にりんごを練り込んだそうで、甘くはないけれどほんのりとりんごが香る。

地図を見ると、大鰐線の沿線はりんご畑が多く、畑の向こうに岩木山を望むという景色のようだ。同路線の鉄道ファンにとっての見所といえば津軽大沢駅。ここには車両基地があり、東急ファンには懐かしい6000系が残っている。ここで降りて、駅舎やホームから観察してみたい。次の電車は1時間後だ。

大鰐駅で奥羽本線に乗り換え。さらに鷹ノ巣駅で秋田内陸縦貫鉄道に乗り換える。それぞれ数分の接続だから急ごう。こんなとき、「秋田・津軽由遊パス」があるときっぷを買う手間が要らないので便利だ。秋田内陸縦貫鉄道は山間部を走り、紅葉の車窓を期待できそうだが、秋の夕暮れは早い。この日は阿仁合で泊まろう。宿泊施設は「阿仁の森ぶなホテル」がある。駅から離れているけれど、送迎サービスがあるとのこと。

3日目 : 田沢湖の紅葉を遊覧船から

翌日は9時17分発の急行「もりよし1号」で角館駅へ。途中の比立内駅から阿仁マタギ駅までの区間が沿線屈指の「紅葉絶景ゾーン」で、列車もゆっくり走るという。角館は桜の名所として有名だが、今回は紅葉の時期だから、田沢湖線に乗り換えるだけ。田沢湖駅からバスで田沢湖へ向かう。「あけぼの」の発車時刻から時刻表を逆にたどると、4時間ほど滞在できる。遊覧船は15時から40分間の運行だ。湖上から紅葉を楽しもう。

今回の旅行の行程

その後、田沢湖線と奥羽本線を乗り継いで秋田駅へ。車窓は真っ暗だけど、途中の羽後長野駅で秋田新幹線「こまち40号」とすれ違う。在来線普通列車と新幹線のすれちがいは珍しいから見ておきたいところだ。秋田駅では1時間半の空き時間があるので夕食を済ませておき、21時23分発の寝台特急「あけぼの」に乗る。上野駅到着は翌朝6時58分だ。