「レディース デビュー ライド」レポートの2回目は、バイクの引き起こしについて。チカラのある男性にとっては何でもないことかもしれないが、私達女性にとって、倒れているバイクを起すことはものすごく大変なこと。しかも大きく重いハーレーともなると、できなくて当たり前に思っていた。しかしこれが意外に簡単だという。

スポーツスター 1200ナイトスターに試乗中

車両引き起こしは女性の最大の課題

会場中央に設置されているテントでは、テクニカルアドバイザーの男性とアシスタントの女性が、立ちゴケを防止する取り回し方法や、乗り降りのコツ、車体の引き起こしをステージで実演していた。そこで引き起こしに有効なカスタムパーツとして、エンジンガードが紹介されていた。エンジンガードを装着すると、転倒時に車体が傷つくことを防ぐだけでなく、横倒しの角度も浅くなるので、転倒しても引き起こしやすくなる。ハーレー初心者には必須のカスタムパーツらしい。エンジンガードを装着した車両と、そうでない車両を横倒しにして比べてみると、確かに装着車両のほうが車体が起きているので、起こしやすそうだ。

試乗に来ていた何人かの女性ライダーに話を聞くことができたのだが、面白いことにハーレーに乗ってみたいという未経験者と同じくらい、すでにハーレーを所有している女性が多かった。しかも納車半年以内という人が多く、この夏にツーリングへ行きたいから、立ちゴケや車体の引き起こしを解消するために来たという。やはり自分のバイクを倒して、引き起こしの練習というのは気が引ける。ショップの試乗車両でも、売り物なので引き起こしはさせてもらえないだろう。そんなわけで、引き起こし用の車両が用意されているこの「引き起こし体験」は、とても注目度が高かった。

ハーレーは、他のバイクとは違いハンドル幅が広く、低重心ということもあり、教習所で教わった引き起こし方法とは違う、独特の引き起こし方法があるという。車体を引き起こす時は、最初は慌てずエンジンを切って、ギアをローに入れる。これはハーレー以外の車両でも同じ。なぜギアをローに入れるかというと、起こしている最中にタイヤが動くのを防ぐためだ。

教習所で教わるバイクの引き起こし方法は、ハンドルを倒れている方向へ切り(下向き)、シートの下あたりリヤのグリップを持って、タンクやシートに腰を当てるようにして起す方法だったと思う。この方法では腰を使ってもかなり力が必要なので、教習時代に苦労した女性は多いはずだ。

しかし、ハーレーが推奨している方法は、ハンドルを倒れている方向と逆の方向に切り、肘を伸ばしてグリップを握って、下から押し上げるようにして起こす方法だった。車体の引き起こしはテコの原理を利用するのが基本だが、ハーレーは車高が低くハンドルの幅が広いため、シートやリア部分を支点とする方法より、グリップを支点にしたほうが力点との距離を長く取れるために、女性のような力が弱い人でもで起こすことが可能なのだという。私も実際に体験してみたが、教習所ではやり直したりして何分もかかった引き起こしが、1回でできてしまったのには驚いた。

この引き起こしは、ステージでの実演後に希望者が順にやってみたのだが、希望者はとても多く、長蛇の列になっていた。引き起こしという作業が女性ライダーにとっていかに心配で、重要な課題だということがわかる。私も引き起こしについては苦手で、山中などで1人で走っているときに「ここでバイクを倒したらどうしよう」と不安になることが少なくない。逆にこの列を見ていて、不安に感じているのは自分だけでないことがわかって、ちょっと安心した。

1回でも「自分だけでバイクを起こすことができた」という経験をすると、自信を持つことができる。すると立ちゴケそのものも少なくなるから不思議なものだ。ハーレーに乗ってみたいけど不安な人、不安を持ちながらハーレーに乗っているという人は、このイベントに参加してみてるといい。きっと不安が解消されると思う。

エンジンガードを付けることで、倒れた車体の角度は大きく違う。右がエンジンガードを装着した車体。この角度で引き起こしに使う力の量は大きく変わってくるという

ステップを払いやすくするサイドステップエクステンダーというアイテムも、女性には人気だそうだ

引き起こしを体験する参加者。グリップを持つとき、肘を伸ばすことがポイントだ

右の写真の状態で、下から一気に持ち上げるようにすると車体が持ち上がる。コツを掴めば女性1人でも引き起こしが可能だからスゴイ!

ハーレーは単なるバイクでなく共同体

引き落としに負けず、女性ライダーにとって大きな問題は足付き性だろう。ハーレーはシート高が低いとはいえ、それでも足が付くかどうかはとても心配だ(特に私はそう)。それもハーレーはわかっていて、純正のカスタムパーツとして、シートがいくつも用意されている。これも会場に体験コーナーが用意されていて試すことができた。足つきが良くなる細身のシートや、着座位置が前方になるシートなど、いくつか種類があるようだ。私も実際に跨らせてもらったが、シートだけでずいぶん違うと目から鱗だった。

イベントには、スタッフや来場者などハーレーに乗っている女性にたくさん出会えるのもメリット。体験談や苦労話を含めたバイクライフを聞くことができるので、勇気づけられると思う。「ハーレーに乗りたい」という、共通意識があるので知らない人同士でも情報交換をしている景色は所々で見られ、参加している人はとても楽しそうだ。

ハーレーは単なるバイクではなく、コミュニティーのような共同体の性格がある不思議なブランドだと前々から感じていた。参加者同士だけでなく、スタッフを含めがたみんなが「ハーレーが好き」という雰囲気を持っている。このイベントは、「ハーレーを買って下さい」というより、「ハーレーで楽しんで下さい」というメッセージの方が強く、ハーレーに興味を持たなかった人でも、乗ってみたくなるようなとてもいいイベントだと思った。

実際にシートを交換することで、乗りやすさの違いを体験するブースも用意されている

女性に一番多いカスタムはシート交換。シート幅を狭くしたものや、着座位置を前にすることでハンドルまでの距離を縮めてくれるものがある

子ども用ゲームのアトラクション。家族連れでも楽しめる工夫がされている

アコースティックディオ「ケイタク」のライブも開催された

ソフテイル納車1ヶ月で参加したという参加者。ハーレーに乗るために大型免許を取得し、バイク歴もまだ1ヶ月らしい

ご夫婦で参加。現在、大型ビラーゴに乗っており、いつかはハーレーに乗りたいと話していただいた

中学生の娘さんと2人で参加された方。娘さんが免許が取れる年になったら、一緒にハーレーに乗りたいとのこと

ハーレーに乗るため大型免許を取得したというリターンライダーさん。右の方はソフテイルを納車して半年、左の女性はスポーツスター1200が納車されて1ヶ月。夏は一緒にツーリングする計画を立てているところだという

レポート:加藤真貴子(WINDY Co.)