カワサキが誇る「Zシリーズ」の頂点に君臨する「750RS」(Z2)。時代を作り、今なおライダーたちを魅了するキング・オブ・バイクの詳細を振り返るとともに、今でもけっこう流通していたり売れていたりするものなのかをバイク王に聞いてみた。
ナナハン規制の時代に登場したバイクの最高峰
「Z2」の前には「Z1」が存在した。カワサキが1972年に海外モデルとして発売した900CCの「900 Super4」(Z1)だ。こちらのバイクは海外で瞬く間に高い評価を獲得するも、当時の日本では、国内メーカーが自主規制で750cc以上のバイクを販売していなかった。つまり、日本のライダーにとってZ1は手の届かない存在だったのだ。
そんな中、カワサキが国内モデルとして開発したのが750ccの「Z2」だった。
通常、900ccから750ccにスケールダウンさせる場合は、シリンダーボアを縮小して排気量を変更することが多い。しかしZ2は、この手法を用いていない。カワサキはシリンダーやクランク、コンロッドなどをZ2専用に設計し直した。このことからも、Z2に対するカワサキの本気度が伝わってくる。
ガソリンタンクは外観バランスを考慮し、容量をZ1の18Lから17Lへと変更しているが、フロントフォークサイズなどその他の部分はZ1とほぼ共通する。そのフォルムは50年以上前のバイクとは思えないほど洗練されていて、バイクの完成形と呼べるほどだ。今なお、多くのライダーの憧れであり続けている。
国内市場を席巻したZ2だったが、登場からわずか2年後の1975年限りで市場からその姿を消すことになる。しかし、販売から40年以上が経過した2020年、カワサキは愛好家向けにシリンダーヘッドの再生産を開始。この異例ともいえる対応も、Z2の人気の高さを物語っている。
バイク王の買取・販売状況は?
気になるZ2の流通状況だが、バイク王茅ヶ崎絶版車館の岡本拓也さんによれば、バイク王の2023年の年間買取台数は20台未満だったという。
「2023年は過去2年と比べて買取台数が減少傾向にあります。店頭に置いて販売できる状態の車両は2台ほどで、状態の良い車両はすごく少なくなっている印象です。やはり、買取車両は長く動かしていなかった車両が多いですが、なかには『エンジンはオーバーホールしてあるから大丈夫』とおっしゃられることがあります。でも、話を聞くとオーバーホールしてから10年ほど経っていることも珍しくありません。1度レストアしていても、時間が経っていればガスケットやシール類からオイル漏れをしていたりするので、再度オーバーホールが必要というケースは多いですね」(以下、カッコ内は岡本さん)
近年は価格が高騰していて、店頭販売では800万円前後の値が付くプレミアムバイクのZ2。実際のところ、売れているのだろうか。
「来店されるお客様が必ずと言っていいほど『かっこいいね』『乗りたいね』とおっしゃるのがZ2です。いまだに憧れのバイクであり続けていることは間違いありません。ただ、値の張るバイクでもあるので、店頭販売では年に1台売れるかどうかだと思います。通信販売は現状販売ということで、価格帯が店頭販売よりも低くなることもあり、年間1~2台ほどが売れている状況です」
買うにはそれなりの覚悟が求められそうなZ2。コンディションを保つために交換パーツの存在は欠かせないが、岡本さんによれば「社外メーカーのカスタムパーツやリプロパーツが豊富なため、整備や修理が比較的可能」とのことだ。注意すべき点は?
「私たちが整備をする際に点検をしていくと、フレームがねじれている車体がけっこうあります。これは必ずしも事故車両ということではなく、昔のフレーム素材の脆弱さもあって、単純に経年劣化でセンターがズレてしまっているケースがあるので厄介です」
フレームの歪みは、外装類などを外してまっすぐ立てたバイクを後ろから見ればすぐにわかるものから、目視ではなかなか見抜けないものまでさまざまあるという。
「フレーム修正はレーザーを当ててどれくらいズレているかを確認しながら行いますが、普段、歪みに気づくことはなかなか難しいんです。ただ、乗っていて左右のどちらかに流されたり、真っ直ぐ走らないと感じた場合には、何かしらの予兆やトラブルの可能性があります。その場合は一度、チェックをしてもらったほうがいいかもしれません」
■Information
取材協力:バイク王茅ヶ崎絶版車館
【場所】神奈川県茅ヶ崎市下町屋1-10-26
【営業時間】10:00~19:00
【定休日】水曜日
【備考】記載の情報は取材時のもの。車両の在庫状況や現車確認を希望の場合は0120-222-393まで要問い合わせ