今年の1月初め、Intelの"Sandy Bridge"こと第2世代Coreプロセッサがついに登場した。高い性能からさっそく人気となっており、秋葉原のPCパーツ店などではCPUのリテールパッケージが一部モデルで入手困難な状況にもなっているようだ。あわせて各マザーボードメーカーが対応製品の投入を開始しているが、今回紹介するエムエスアイコンピュータージャパンの「P67A-GD65」は、その中でも定番の一枚となりそうな製品に仕上がっている。
MSI P67A-GD65
メーカー | MSI |
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製品名 | P67A-GD65 |
フォームファクタ | ATX |
対応ソケット | LGA1155 |
対応CPU | 第2世代 Intel Core i7/i5/i3シリーズ |
チップセット | Intel P67 Express |
対応メモリ | DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 2133(OC)/1866(OC)/1600(OC)/1333/1066MHz対応 |
拡張スロット | PCI Express (2.0) x16×2(x16シングル or x8+x8)、PCI Express (2.0) x1×3、PCI×2 |
マルチグラフィックス | NVIDIA SLI、ATI CrossFire |
ストレージ | SATA 6Gbps×2ポート(Marvell SE9128)、SATA 6Gbps×2ポート(Intel P67)、SATA II×4ポート(Intel P67)、eSATA×2ポート(JMicron JMB362) |
RAID機能 | RAID 0/1(SE9128)、RAID 0/1/5/10(P67) |
ネットワーク | 10/100/1000BASE-T×1(Realtek RTL8111E) |
オーディオ機能 | 7.1ch HDオーディオ(Realtek ALC892) |
インタフェース | USB 3.0×2ポート(+ピンヘッダにより2ポートの拡張が可能)、USB 2.0×8ポート(+ピンヘッダにより4ポートの拡張が可能)、IEEE1394×1ポート(+ピンヘッダにより1ポートの拡張が可能) |
最新プラットフォーム対応とともに独自進化も
今世代のマザーボードは、CPUとチップセットの両方が次世代へ移行する大幅なプラットフォーム変更がされているわけだが、このP67A-GD65のボード自体は、実は直近の前世代までの同社製品との差異が一見しただけではわからない。これは、前世代の後期の製品において到達した円熟のデザインを、奇をてらうことなく真面目に、プラットフォーム刷新後の第一弾モデルとは思えないほどに、新モデルへ惜しみなく投入していることの現われだろう。ボードを細かく見てみると、同社らしい実直な進化を遂げていることが確認できるのだ。
CPUの電源回路周り。MSIマザーボードと言えば高効率電源回路「DrMOS」だが、今世代でもしっかり採用。MOSFET4個分に相当する電流を、効率よく低発熱で供給できる |
電源フェーズ数の利用数を動的に最も効率的な数に調整する「APS」機能を搭載。写真の真ん中あたりに写っているLEDは、その際の動作中のフェーズ数を視覚的に見えるようにしたもの |
ヒートシンクはヒートパイプ内蔵だが、大袈裟な感じではなく、全体的にも基本的にはスタンダードなレイアウトに見える。派手さは無いが"堅そう"というのが第一印象だ |
バックパネル部のインタフェース。青いコネクタのUSBポートは、USB 3.0対応。レガシーフリーの声が大きい時代だが、この世代でもPS/2ポートが残ったことが個人的にちょっと嬉しい |
さて、では細かく見て行きたいが、まずは同製品の最大の特徴から紹介しておくと、同社が「ミリタリークラスII」と呼ぶ品質基準への準拠がある。ミリタリークラス自体は、同社が前世代の製品でもアピールしてきた品質基準の呼び名だが、ミリタリークラスIIからはこの基準をもう一段階引き上げ、コンデンサなど搭載部材には、さらに高品質、長寿命なものが採用されているという。なお、P67A-GD65は現行ラインナップではハイエンドに位置付けられるモデルだが、今世代では続く下位モデルでもひろくミリタリークラスIIへの準拠が進められている。今後も主なラインナップでは、MSIはSandy Bridge世代=ミリタリークラスII世代というメッセージを打ち出していく方針のようである。
ミリタリークラスIIでは具体的には、わかりやすいところだと電源回路のチョークの素材が一新されている。これまでも固体コイルなどを採用するなどチョークコイルに拘っていた同社だが、今世代では固体チョークのコアにフェライトと呼ばれるセラミック素材を採用した「SFC(スーパーフェライトチョーク)」を搭載。いわゆる"コイル鳴き"は当然抑えられるし、電力効率や発熱面での性能も大幅向上を実現できているとしている。電源周りでは、おなじみのHi-c CAPコンデンサや、Solid CAPは引き継いでおり、通常利用時の信頼性はもちろん、オーバークロックにも適した耐性もさらに強化されたことになっているという。
もうひとつ特徴なのが、UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)準拠の「Click BIOS」の採用だろう。同社は割と早い段階でBIOSのEFI化へ取り組んできたメーカーであったが、ここにきてメインの製品ラインでもBIOSのEFI化が本格的なものになった。同社のClick BIOSでは、日本語を含む多言語対応やグラフィカルなUIなど、まず見た目部分に注目しがちだが、重要なのは目に見えない部分だ。16bitベースのBIOSと異なり、64bitベースのEFIでは、マルチOS環境やマルチタスク処理、2TBを超える大容量ストレージの利用などを標準でサポートできるよう設計されている。さらにClick BIOSでは、これを導入したチップを2個搭載しており、万が一Click BIOSでトラブルがあっても、2個目のチップがバックアップとなり、Click BIOSを復旧できる仕組みとなっている。
UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)準拠の「Click BIOS」がいよいよ主流になるようだ |
P67A-GD65の「Click BIOS」では、実装された2個のClick BIOSチップで万が一の際にも安心できる |
また、Sandy Bridge世代で気になっているユーザーも多いと思われる、オーバークロック関連の機能については、P67A-GD65でも特に強化されている点のひとつだろう。従来もOC Genieと呼ばれる独自機能を搭載していたが、P67A-GD65では「OC Genie II」として、その進化版が搭載されている。ボード上のボタン一発で設定できる、"初心者でも簡単にオーバークロック"というコンセプトはそのままに、新たにメモリや内蔵GPUのクロックや電圧も調整可能となった。Sandy Bridgeで機能強化されたTurbo Boost 2.0への対応を果たしており、簡単な例を挙げると、GPU内蔵モデルのSandy Bridgeであれば、GPUクロックも対象となる総合的なオーバークロックが可能なのだ。
システム更新の好機が到来
個人的な意見としては、Windows 7とNehalem世代CPUの登場したあたりで新規にシステムを組んだユーザーにとっては、今回のSandy Bridge世代のシステムは、まぁハイエンドユーザーでなければスキップもある、と考えていた。ところが実際に製品が登場してみると、Sandy Bridgeの性能そのものが想定以上であったことも大きいが、マザーボードの進化も著しかった。基本性能強化の恩恵を受けながら、EFIやUSB 3.0、SATA 6Gbpsなど、ここ最近までの新機能を一気に獲得しようと目論むなら、今は好機と言える。
価格の話もしておくと、P67A-GD65の店頭価格はおよそ1万円台後半と、2万円を切る、手の届きやすい価格帯に収まっている。さらに現在のところ、秋葉原などのPCパーツ店では、CPUとセットでP67A-GD65を買うと価格割引が受けられるなどの販促キャンペーンを実施する店舗を多く見ることができる。Core i5-2500KあたりとP67A-GD65のセットであれば、4万円以下で揃えることも可能だろう。
さらに、今回のMSIのマザーボードラインナップでは、マニア向けの電圧測定機能「V-Check Point」や、一部SATAポート数の削減、ヒートシンクの簡易化などを除けば、ほぼP67A-GD65と同等の性能・機能を有する「P67A-GD55」も用意されている。こちらであれば、さらに低コストな1万円台中盤の価格で入手できる。拡張スロットの構成はそのままだし、ミリタリークラスII準拠で利用部材も同等のようなので、実はこちらもかなりオススメの一枚である。用途により、あわせて検討することを推奨したい。