CrossFireXやSATA 6Gbps……。AMD 890GXチップセットの持ち味を最大限引き出すにはATXサイズのケース、ATXサイズのマザーボードが最適だと思われる。今回紹介するのはASUSTeK Computerの「M4A89GTD PRO/USB3」。最新のAMD 890GXを搭載するだけでなく、独自機能による機能拡張にも積極的なATXマザーボードだ。
ASUS M4A89GTD PRO/USB3
メーカー | ASUSTeK Computer |
---|---|
製品名 | M4A89GTD PRO/USB3 |
フォームファクタ | ATX |
対応ソケット | AM3 |
対応CPU | Phenom II X4/X3/X2、Athlon II X4/X3/X2 |
チップセット | AMD 890GX+SB850 |
対応メモリ | DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 1866/1333/1066 |
拡張スロット | PCI Express 2.0 x16×2、PCI Express 2.0 x4×1、PCI Express 2.0 x1×1、PCI×2 |
マルチグラフィックス | ATI CrossFireX |
ストレージ | SATA 6Gbps×6ポート(SB850×6ポート)、eSATA×1ポート(JMicron JMB361)、PATA×1(JMicron JMB361) |
RAID機能 | SB850(RAID 0/1/5/0+1) |
ネットワーク | 10/100/1000BASE-T×1(Realtek RTL8111E) |
オーディオ機能 | 7.1 HDオーディオ(Realtek ALC889) |
インタフェース | USB 3.0(NEC )×2、USB 2.0×4(+ピンヘッダにより8ポートの拡張が可能)、IEEE1394×1(+ピンヘッダにより1ポートの拡張が可能 VIA VT6308P)、DVI-D、HDMI、D-Sub |
AMD 890GXに組み合わせるサウスブリッジ「SB850」は、チップセットとしてはいち早くSATA 6Gbpsをサポートしており、しかもノース・サウスチップ間接続バスの転送速度も引き上げられ、SATA 6Gbpsの性能を十分に活用することができる。
AMD 890GXは統合グラフィックス機能「Radeon HD 4290」を搭載しつつも8レーン×2本のCrossFireXをサポートする、幅広いニーズに対応するチップセットだ。また、M4A89GTD PRO/USB3はサイドポートメモリも搭載することで、統合グラフィックスの性能を引き上げている。一般的に統合グラフィックス機能ではメインメモリの一部をフレームバッファとして利用するが、サイドポートメモリはその負担を軽減する効果がある。搭載されているのはDDR3-1333メモリで、容量は128MB。ディスプレイ出力はDVI、HDMI、D-Sub15ピンの3系統だ。
サイドポートメモリとしてDDR3-1333 128MBを搭載。実装されているのはHynixの「H5TQ1G63BFA」 |
PS/2が1基搭載されているほか、緑のパワーeSATA、青のUSB 3.0といった端子が特徴的。そのほかにもGbEやIEEE1394、HDオーディオ出力等を備える |
CPU電源回路は8+2フェーズ。EPUも搭載しており、同梱ソフトウェアと組み合わせることで使用フェーズ数の切り替えが可能だ。また、同社が「Xtreme Phase」と呼ぶ、リップル電圧を低減し安定性を高める独自回路を採用している。ヒートシンクは最近の製品としては比較的大型。CPUレギュレータとAMD 890GXノースブリッジチップをヒートパイプで結ぶデザインだ。
メモリスロットは最近のASUSTeKマザーでよく用いられる片側のロック機構を省いた「Q-DIMM」。よくPCI Express x16スロット使用時に干渉する際、そちら側をQ-DIMMにしているのを見かけるのだが、本製品では逆側に同機構を用いている。
拡張スロットはPCI Express x16×2、x4×1、x1×1、PCI×2というレイアウト。2本のx16スロットは8レーン×2本のCrossFireXをサポートしている。メモリスロットは4本。片方のロック機構を廃した装着が容易なスロットを採用している。また、x16スロットを1本しか利用しない場合には、もう一方にターミネーター基板を装着して利用する。
8レーン×2本のCrossFireXをサポートする拡張スロットレイアウト。2スロット厚のカードを挿す場合も、間に1スロットの空きスペースを作ることができる |
使用しない方のグラフィックス用スロットにはターミネーターカードを装着する。ターミネーターカードも最近ではあまり見かけなくなった |
オンボード側のストレージは6ポート。これは全てSB850の機能によるものであり、6Gbpsをサポートしている。レイアウトは独特で、2ポートがL字型コネクタで横を向き、残り4ポートは垂直型コネクタを採用している。2ポートずつそれぞれ間隔を持たせている理由は不明だが、あまり密になりすぎてもケーブルの着脱が不便であるため、これはこれで便利である。PATA機能に関してはJMicron JMB361チップを搭載しているとともに、外部のパワーeSATAに関してもこのチップの機能だ。
特徴的なレイアウトのSATAポート。そしてJMicron JMB361チップによりPATA×1系統も装備している |
1ポートのSATA、1ポートのPATAをサポートするJMicron JMB361チップ。本製品ではeSATAとPATAとして利用している |
また、本製品ではモデル型番でもわかるが、USB 3.0機能も追加搭載している。チップは1本目のx16スロットの前方に実装されたNECのD720200FI。そのほかに搭載されているチップは、GbE用のRealtek RTL8111E、HDオーディオ用のRealtek ALC889、そしてIEEE1394用のVIA VT6308Pだ。
8ch HDオーディオチップのRealtek ALC889 |
IEEE1394チップのVIA VT6308P。1ポートをバックパネルに装備しているほか、ボード上のピンヘッダにケーブルを接続することでもう1ポート利用することが可能だ |
ハイエンドニーズもカバーするM4A89GTD PRO/USB3はASUS独自の機能も豊富に搭載している。まずは「CPU Unlocker」。これはAMDの一部のCPUで行われている一部のコアを無効化することでX3やX2となっている製品において、その無効化されているコアを有効化する機能だ。また、チップとして搭載されているオーバークロック機能が「TurboV EVO」。電圧やクロックジェネレータを直接制御することができ、TurboV EVOソフトウェアと連携しWindows上からオーバークロックすることが可能だ。そして統合GPUのオーバークロック機能として「GPU Boost」も搭載している。このほかオーバークロックでは「CPU Level Up」、メモリの相性解決では「MemOK!」、独自OSの「Express Gate」など、様々な機能が利用できる。
3コアCPUや2コアCPUのコア復活が可能な「CPU Unlocker」用スイッチ。コア復活に賭けてみるのもAMD CPUならではの楽しみ方 |
メモリ相性の解決を図る「MemOK!」用ボタン。SPD設定ではない動作が見込まれるパラメータを用いて起動を試みる |
充実機能のAMD 890GXハイエンドマザー
M4A89GTD PRO/USB3は、AMD 890GXチップセットマザーとしてはややハイエンドユーザー向けの製品と見られる。CrossFireXのサポートはもちろん、オーバークロック機能が充実しており、CPUフェーズ数も比較的多い。また、CPUコア復活機能を搭載することで、AMD CPUの醍醐味とも言える「大化け」も楽しめる。そのうえでUSB 3.0機能を盛り込み、USB 3.0、SATA 6Gbpsともに利用できる環境として、長く使う上でも安心だ。もちろんASUSのハイエンドには「R.O.G.」というシリーズもあるが、ミドルハイを狙うユーザーには本製品の価格的なバランスの良さも魅力的と思われる。