AMD 890GXチップセットは、CrossFireX対応やSATA 6Gbps対応という面を見るとハイエンドユーザー寄りのチップ。しかしDirectX 10.1対応GPUを統合しており、ハイエンドと同時に省スペースPCの域もカバーしている。今回紹介するのエムエスアイコンピュータージャパンの「890GXM-G65」は、後者の省スペースPCに最適な一枚だ。

MSI 890GXM-G65

メーカー MSI
製品名 890GXM-G65
フォームファクタ マイクロATX
対応ソケット AM3
対応CPU Phenom II X4/X3/X2、Athlon II X4/X3\/X2
チップセット AMD 890GX+SB850
対応メモリ DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 1333/1066/800
拡張スロット PCI Express 2.0 x16×2、PCI Express 2.0 x1×1、PCI×1
マルチグラフィックス ATI CrossFireX
ストレージ SATA &Gbps×5ポート(SB850×5ポート)、eSATA×1ポート(SB850)、PATA×1(JMicron JMB368)
RAID機能 SB850 SATA(RAID 0/1/5/0+1)
ネットワーク 10/100/1000BASE-T×1(Realtek RTL8111DL)
オーディオ機能 7.1 HDオーディオ(Realtek ALC889)
インタフェース USB 3.0×2、USB 2.0×4(+ピンヘッダにより8ポートの拡張が可能)、DVI-D、HDMI、D-Sub 15ピン

AMD 890GXチップセットのグラフィック機能は「Radeon HD 4290」。DirectX 10.1止まりというのはAMD 785Gチップセットのグラフィック機能と同等だが、動作クロックは引き上げられており、統合型として見れば比較的強力なグラフィック機能だ。バックパネルには標準でDVI、HDMI、D-Subの3系統の端子を備えているので、ディスクリートGPUを追加しなくてもPCとして組み上げることができる。またサイドポートメモリとしてDDR3-1333メモリを128MB搭載しているのもポイントだ。組み合わせるサウスブリッジチップは「SB850」。SATA 6Gbpsをサポートしており、SATA 6Gbpsサポートに合わせてノース・サウスチップ間のバスも高速化している。

DVI、D-Sub、HDMIの出力端子を備え、AMD 890GXのDirectX 10.1グラフィック機能が利用できる。その他、USB 3.0やeSATAも装備しており、オールマイティな1枚だ

「RADEON IGP」の刻印があるAMD 890GX

刻印は「SOUTHBRIDGE」とだけしかないが、SATA 6GbpsをサポートするSB850

サイドポートメモリとしてHynix H5TQ1G63BFAを搭載。DDR3-1333メモリで容量は128MB(1Gb)

拡張スロットはPCI Express x16×2、PCI Express x1×1、PCI×1。2本のx16スロットは8レーン×2本のCrossFireXをサポートしている。統合グラフィックからローエンドからハイエンドまでのディスクリートカード、さらにはCrossFireXと、選択自由なアップグレードパスを用意している点はこの製品の大きなポイントとなっている。しかし、マイクロATXであるため、環境によっては2スロット厚カードのCrossFireX構成では冷却に気を配る必要があるだろう。

拡張スロット

CPU電源回路のフェーズ数は6。使用フェーズ数を示すLEDが4個であるため、コア4フェーズ、アンコア2フェーズの構成であるとみられる。特別多いわけではないが、少なすぎることもなく、公式に140W CPUにも対応する点からも十分と言える数である。ボード上のコンデンサは全て固体タイプなほか、コイル鳴きの無い固体チョークコイルが採用されており、マイクロATXマザーボードでも低コスト寄りというよりは高信頼向けのコンポーネントを採用している点が心強い。また、アクティブフェーズスイッチング(APS)も採用しており、負荷に応じて使用フェーズ数を制御することで省電力性能も高めている。

CPUフェーズ数はCPUコア4フェーズ、アンコア2フェーズと思われる。CPU用12Vは4ピン端子。140W CPUまで対応しており、APSのシルク印刷も確認できる

オーバークロック機能では、他の同社製品と同様に「Easy OC Switch」を備え、ディップスイッチからデフォルト、+10%、+15%、+20%の設定でFSBのオーバークロックできる。また、890GXM-G65では統合グラフィック機能に関しても「Auto OC Genie」によってオーバークロックが可能だ。

デフォルト、+10%、+15%、+20%の設定でディップスイッチから強制オーバークロックできるEasy OC Switch

ストレージではチップセット機能による6ポートのSATA 6Gbpsのうち、5ポートがボード上に、1ポートがeSATAとしてバックパネルに引き回されている。そしてPATA×1系統のためにJMicronのJMB368チップも搭載している。そのほかでは1番目のx16スロット手前にNECのUSB 3.0チップであるD720200F1が搭載されている。バックパネルの青い2つのUSBポートがこのUSB 3.0用のものだ。890GXM-G65ではSATA 6GbpsとUSB 3.0がともに利用できることになる。とくにUSB 3.0はガワも数多く登場してきており、転送速度では現在のHDDをフル性能で利用できるため注目のインタフェースだ。

SATA 6Gbpsポートはボード上に5ポート装備。うち4ポートはL字型でグラフィックスカードとの物理的な干渉を抑えている

PATAは1系統。JMicronのJMB368チップを搭載している

NECのUSB 3.0チップであるD720200F1。D720200F1チップ全般に言えることだが、ベンチマーク時にけっこう発熱するので、できればファンを当てて利用したい

その他のオンボード機能としては、GbE、HDオーディオが搭載されている。どちらもRealtek製チップであり、GbEがRealtek RTL8111DL、HDオーディオがRealtek ALC889だ。

1000BASE-T/100Base-T/10Base-Tに対応するRealtek RTL8111DL

8ch HDオーディオコーデックのRealtek ALC889

使い続ける中でステップアップしていける基礎体力に優れたマザーボード

PCパーツショップなどによると、現在のAMDユーザーのトレンドはマイクロATXだそうである。現在のAMD CPUのラインアップが、低価格や低消費電力に注力しているという点もあるのだろう。890GXM-G65は、そうしたAMDファンのトレンドに沿った製品と言えるだろう。また、SATA 6GbpsやUSB 3.0によって長期使用の観点からの将来性があり、長期利用していくなかで当初は統合グラフィック、ゲームやエンコードといった目的を見つけた時点でディスクリートGPUを2本まで追加できるなど、ステップアップ的な利用方法ができる点も魅力だ。