これまでのマルチGPU構成では、ATIならRadeon複数枚でCrossFireX、NVIDIAならGeForce複数枚でSLIを構成し、3Dパフォーマンスを引き上げるというのがセオリーだった。ところがイスラエルの半導体メーカーLucidLogix Technologiesが、RadeonとGeForceの混載、さらにセグメントの異なるGPUを搭載しつつもグラフィックパフォーマンスを引き上げる「HYDRA」チップを発表した。そのチップをマザーボードとして最初に採用、製品化したのが、今回紹介するエムエスアイコンピュータージャパンの「Big Bang-Fuzion」だ。

MSI Big Bang-Fuzion

メーカー MSI
製品名 Big Bang-Fuzion
フォームファクタ ATX
対応ソケット LGA1156
対応CPU Intel Core i5/i7
チップセット Intel P55 Express
対応メモリ DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 1333/1066/800MHz対応
拡張スロット PCI Express (2.0) x16×3(x16+x16またはx16+x8+x8帯域)、PCI Express x1×2、PCI×2
マルチグラフィックス Lucid Hydra A/N/Xモード
ストレージ SATA II×10ポート(P55×6ポート+JMicron JMB322×4ポート)、eSATA×2ポート(Power eSATA対応 JMicron JMB363)、PATA×1(JMicron JMB322)
RAID機能 RAID 0/1/5/10(P55)、RAID 0/1/JBOD(JMB322)
ネットワーク 10/100/1000BASE-T×2(Realtek RTL8111DL)
オーディオ機能 8ch HDオーディオ(Realtek ALC889)
インタフェース USB 2.0×10(+ピンヘッダにより4ポートの拡張が可能)、IEEE1394×1(+ピンヘッダにより1ポートの拡張が可能 VIA VT6315N)

基本設計はBig Bang-Trinergyを継承。nForce 200からLucid HYDRAに変更

Big Bang-Fuzionは、同じBig Bangシリーズの「Big Bang-Trinergy」と基本設計を同じとした製品となる。チップセットはIntel P55 Express、全面的にタンタル固体電解コンデンサ「Hi-c CAP」を採用した高信頼向けの設計となっている。ただし、Big Bang-TrinergyではnForce 200を搭載していたのに対し、Big Bang-FuzionはLucid HYDRA 200チップを搭載している点が異なる。まずはそのあたりを見ていこう。

Intel P55 Expressチップセット。PCI Express x16#1の後方に位置しているのはBig Bang-Trinergyと同様

Lucid HYDRA 200チップ。製品型番はLT24102。搭載位置は従来のマザーで言うノースブリッジにあたる場所

以前、MSIが開催した製品説明会でもLucid HYDRAの詳細には触れられているが、HYDRAチップにはPCIe Gen1に対応したHYDRA 100シリーズとGen2に対応したHYDRA 200シリーズがある。Big Bang-Fuzionが採用しているのはHYDRA 200チップであり、PCI Expressの転送速度はフルに利用できるものとなる。また、「LT22102」「LT24102」「LT22114」の3製品がラインアップされているHYDRAチップのなか、本製品が採用しているのはLT24102である。LT24102はオートコンフィギュレーションに対応し、計48レーンを利用することが可能。これによりグラフィックスカード3枚時には、CPU-HYDRA間がx16接続、グラフィックスカード#1がx16で他の2枚はx8接続という柔軟な構成が可能となる。なお、LT22102はx16×3-wayのみの対応、LT22102はスモールフットプリント版だが計24レーンに制限されているという。

グラフィックスカードの搭載イメージ。RadeonとGeForceの混載や、異なるセグメントのGPUを混載させ、かつパフォーマンスの向上が可能とされる。こうした運用が可能なのは現時点でこの製品のみ、ということになる

PCI Express 2.0 x16スロットは計3基。#1と#2の間は2スロット、#2と#3との間は1スロットとなる。なお、3枚搭載時のレーン数はx16+x8+x8。これにCPU-HYDRA間のx16レーンを足して計48レーンとなる。PCIe x16#3の下にはOC GENIEボタンとCMOSクリアボタン、PCIe x16#1と#2との間にはOC GENIEチップが搭載されている

さて、その他の特徴もピックアップしていこう。バックパネルのレイアウトはBig Bang-Trinergyと同様。10基のUSB2.0端子が用意されており、うち2基がeSATA共用となっているほか、ワイヤードのオーバークロック用リモコン「OCダッシュボード」用の端子も備えている。また、CPU電源回路にはHi-c CAPのほか、コイル鳴きしないという「SFC(スーパーフェライトコアチョーク)」、高効率な電源生成チップ「DrMOS」、さらにDrMOSのフェーズコントロールを行う「APS(アクティブフェーズスイッチング)]も搭載している。また、同社によればこれだけでも発熱はかなり抑えられているとのことだが、極太のヒートパイプを用いたヒートシンク「Super Pipe」を搭載しているのがCPU周辺部分での特徴だ。

Hi-c CAPとSFCで構成されたCPU電源回路部分。極太ヒートパイプのSuperPipeを外せばその下にDrMOSも確認できる

APSでコントロールされたフェーズ数は、CPUソケット横のLEDによって、数値化され確認できる

このほか、基本的にBig Bang-Trinergyと同様となるが、SATAポートは10基(チップセット6基に加え追加チップを搭載)、PATAが1系統、2系統のGbE、IEEE1394aなどのオンボード機能を搭載している。また、タッチセンサー式の電源、リセット、グリーンパワースイッチ、ATXパワーコネクタ横には「V-チェックポイント」「V-スイッチ」を搭載。そして「Quantum Wave オーディオカード」も付属する全部入りな内容だ。

SATAポートは内部だけで10基。黒いポートがチップセット機能によるポートで、青い4ポートが追加チップによるもの

この画面内だけで3つのJMicronチップを搭載。SATA×2ポートを利用できるチップが2基、PATA機能のために1基が搭載されているが、このほかボード上にはさらに1基のJMicronチップが搭載されている

各種電圧を変更可能なV-スイッチ(左)とその電圧をテスターで確認できるV-チェックポイント

Quantum Wave オーディオカード(手前)とOCダッシュボード(奥)

GPU選びがもっと自由になる

確かに、トップパフォーマンスを狙うのであれば同じ世代の同じカードを2枚以上、SLIやCrossFireXするのがベストではある。それができるならばBig Bang-Trinergyで良いのだろう。しかし高価なハイエンドGPUを2枚以上揃えることは簡単ではない。そしてこれまでなら1世代古いカードを生かす手段は無かった。Big Bang-Fuzionは、その1世代古いカードを生かせる製品だ。そしてそれがRadeonだろうとGeForceだろうとお構いなし。日和見でRadeonとGeForceを行ったり来たりしたとしても大丈夫。さらにはミドルクラスからハイエンドへと移行した場合にも活用できる。GPU選びの自由度が増すという点をBig Bang-Fuzionの第1のメリットとして挙げよう。

なお、大注目の一枚であるBig Bang-Fuzion、そのパフォーマンスの詳細については、近日中に追ってレビュー記事をお届けする予定だ。