Clarkdaleの登場によって、ハイエンドからエントリーまでのCore iシリーズCPUが出揃った。これによりソケットもLGA775からLGA1156へと移行が一気に進むことになるだろう。LGA1156 CPUのローエンドモデル「Pentium G6950」は価格も9,000円弱と安価。一方で、マザーボードもClarkdaleに対応したH55、H57、Q57のチップセットが新登場し、安価な製品も出揃っている。なかでも際だってコストパフォーマンスに注目なのが、今回紹介するBIOSTAR「TH55B HD」だ。

BIOSTAR TH55B HD

メーカー BIOSTAR
製品名 TH55B HD
フォームファクタ マイクロATX
対応ソケット LGA1156
対応CPU Intel Core i5/i7
チップセット Intel H55 Express
対応メモリ DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 2000(OC)/1800(OC)/1600(OC)/1333/1066/800MHz対応
拡張スロット PCI Express (2.0) x16×1、PCI Express x1×1、PCI×2
ストレージ SATA II×6ポート(H55×6ポート)、PATA×1(JMicron JMB368)
RAID機能 RAID 0/1/5/10(H55)
ネットワーク 10/100/1000BASE-T×1(Realtek RTL8111DL)
オーディオ機能 6ch HDオーディオ(Realtek ALC662)
インタフェース USB 2.0×4(+ピンヘッダにより6ポートの拡張が可能)、IEEE1394×1(+ピンヘッダにより1ポートの拡張が可能 VIA VT6315N)

基本機能のみに特化したデザイン

TH55B HDが採用しているのはIntel H55 Expressチップセット。現在のLGA1156ソケットをサポートするチップセットとしては最もベーシックなチップセットだ。グラフィック機能を統合したClarkdaleを搭載すれば、バックパネルのHDMI、DVI-D、D-Sub15ピンアナログ端子からディスプレイ出力可能なほか、PCI Express x16スロットを備えるため、グラフィック機能を搭載していないLynnfieldにも対応する。バックパネルはシンプルそのもので、USB端子は4ポート、PS/2端子もキーボード用のみ、あとはLANとオーディオ入出力のみである。

チップセットはIntel H55 Expressを採用

バックパネルにはHDMI、DVI-D、D-Sub15ピンという3系統のディスプレイ出力を装備。ほか、USBポートは計4ポートと少なめで、LAN、PS/2、オーディオとシンプルさが際だつ

搭載コンデンサを見てみると、多くの部分は通常のアルミ電解コンデンサが採用されているが、CPU周辺回路にはしっかり固体コンデンサが採用されている。CPU電源回路は計5フェーズ。5フェーズという構成はハイエンド製品と比べると少ないが、例えばIntel純正でH55マザーボードの標準とも言える「DH55TC」と同じ規模でなので、まず問題は無いだろう。メモリはDDR3で、4ソケットで最大16GBまでサポートされる。

全体的にはアルミ電解コンデンサが多く採用されており、CPU周辺回路やメモリ周りの一部など重要な部分にのみ固体コンデンサが採用されている

拡張スロットは前述のPCI Express x16のほか、PCI Express x1を1スロット、PCIを2スロット備えている。PCIスロットの後方にチップセット機能を利用したSATAポートが6ポートあるが、PCIのロングカードも今や珍しく、干渉する恐れはほとんど無い。

拡張スロットはマイクロATXとして標準的なPCI Express x16×1、PCI Express x1×1、PCI×2という構成

SATAポートはチップセット機能の6ポートのみ。H55標準サポートのRAID機能も利用可能。中央に見えるH55チップセットのヒートシンクもシンプルなデザイン

オンボードチップを見ていくと、LANはPCIe接続でギガビット対応のRealtek RTL8111DL、PATA用にはやはりPCIe接続のJMicron JMB368を搭載している。一方でオーディオ機能は現在主流の8chサポートの製品ではなく、5.1chサポートのRealtek ALC662を採用している。とはいえ、8chオーディオは多くのユーザーにとってスペックオーバーであることも確かで、5.1chサポートでちょうど良いバランスと言えるかもしれない。

PCIe接続の1000BASE-T/100Base-T/10Base-TチップRealtek RTL8111DL

PCIe接続のPATAチップJMicron JMB368(1コネクタで2デバイスまでサポート)

5.1chサポートのHDオーディオコーデックチップRealtek ALC662

さて、低コストなところばかりを見てきた気もするが、実は使い勝手が良いところもTH55B HDの特徴。低コストとは相反する印象だが、例えばオンボードスイッチを搭載していたり、消費電力を抑えるBIOSTAR G.P.U (Green Power Utility)に対応していたり、さらにはBIOSTAR Toverclockerというオーバークロック用ユーティリティも付属する。実際、DDR3-2000やDDR3-1600といったオーバークロック動作もサポートに入っており、低価格ながらひとクラス上も目指せる製品なのだ。

電源・リセット用のオンボードボタンも備えている

シンプルに徹したマザーは安くてかつ堅実

見ていただければ分かるとおり、BIOSTARの「TH55B HD」はシンプルさが際だつ製品だ。必要最低限のLANやオーディオ、PATAといった機能は追加チップを搭載しているが、追加SATAやIEEE1394等は無く、最近よく見るeSATAも搭載していない。だが、そんなところが良いのかもしれない。追加チップやコンポーネントが最小限であるがゆえに、トラブルも少ない、と見ることもできる。そしてやはり価格。プラットフォームの移行はコストがかかることが多いのだが、本製品の実売は1万円前後で、例えばPentium G6950との組み合せなら2万円でお釣りが来る計算だ。移行の敷居を大きく引き下げる面でも評価したい。

また、一方で、今回のTH55B HDはじめ同社のTシリーズに属するマザーボードは、オーバークロックも楽しめるし、その際に便利なオンボードボタン類もしっかり装備している。価格対効果の高さで、大いに注目の製品と言えるだろう。