ハイエンドクラスで一世を風靡したNehalemアーキテクチャの製品が、Lynnfieldコアを採用するCore i5とCore i7、そして対応チップセットであるP55 Expressの登場により、ついにメインストリームクラスへも勢力を拡大してきた。OSの切り替えともタイミングが近いので、Core 2や、中にはPentiumから、久しぶりのシステム刷新というユーザーも多いことだろう。例によってマザーボードも各社から大量のモデルが一斉投入されたわけだが、今回は、エムエスアイコンピュータージャパンの「P55-GD65」に注目してみたい。
MSI P55-GD65
■主な仕様 | |
メーカー | MSI |
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製品名 | P55-GD65 |
ATX | |
対応ソケット | LGA1156 |
対応CPU | Intel Core i5/i7 |
チップセット | Intel P55 Express |
対応メモリ | DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 2,133(OC)/2,000(OC)/1,600(OC)/1,333/1,066/800MHz対応 |
拡張スロット | PCI Express (2.0) x16×2(x16帯域)、PCI Express x4×1(エッジフリー)、PCI Express x1×2、PCI×2 |
NVIDIA SLI、ATI CrossFire X | |
ストレージ | SATA II×7ポート(P55×6ポート+JMicron JMB363×1ポート)、eSATA×1ポート(Power eSATA対応,JMicron JMB363)、PATA×1(JMicron JMB363) |
RAID機能 | RAID 0/1/5/10(P55) |
ネットワーク | 10/100/1000BASE-T×2(Realtek RTL8111DL) |
8ch HDオーディオ(Realtek ALC889) | |
インタフェース | USB 2.0×8(+ピンヘッダにより6ポートの拡張が可能)、IEEE1394×1(+ピンヘッダにより1ポートの拡張が可能) |
エムエスアイコンピュータージャパンは、P55チップセットを搭載するメインストリーム向けマザーボードとして、現時点で4製品をラインナップしている。P55マザーに対する同社の"意気込み"と"自信"は相当なものがあるようで、全モデルに同社独自の「DrMOS」を搭載してくるなど、各モデルともメインストリームクラスらしからぬ高スペック/高コストパフォーマンスに仕上がっている点も特徴だ。
今回紹介するP55-GD65も、独自機能や新装備を意欲的に盛り込んだ高スペックな製品なのだが、同社ATXサイズのラインナップでは、ちょうど真ん中に位置付けられるモデルで、店頭での実勢価格も1万円台後半と、コストメリットが目立つ。LynnfieldコアのプロセッサとDDR3のメモリモジュールをあわせても、5万円程度からNehalemアーキテクチャの高性能環境を導入することができるのだ。
さて、冒頭で述べたように、スペック面での不安は感じない。それでは、P55-GD65の機能を、特徴的なものから見ていこう。まずは、なんと言っても同社の売りである「DrMOS」の搭載だ。サーバボードクラスの品質やエネルギー効率に、通常の電源回路の2倍以上という大出力も備えた電源回路で、P55-GD65ではこれを6フェーズ搭載している。ちなみに余談だが、他の有力マザーボードベンダでも、DrMOS搭載製品を用意しているという話もあるそうだ。
ところで、6フェーズというと、昨今のマザーボードのトレンドから考えると、やはり少ないようにも思えるのだが、MSIでは、その高効率と高出力から、DrMOS×6フェーズであれば、通常の電源回路の24フェーズに相当すると説明している。さらに、電源回路の部品をコンパクトにしたことで、リーク電流を抑制できており、低発熱かつ、スイッチング速度にも優れるので、オーバークロック(OC)にも有効とされている。OC性能がシステムのピーク性能の鍵となるLynnfieldとの相性も良さそうだ。
OC関連の機能ではもうひとつ、「OC Genie(オーシージーニー)」も面白い。同社の同名の機能としては第4世代にあたり、機能を実現するために専用のハードウェアチップを備え、ボード上のボタンをひと押しするだけで自動OCできるところまで進化している。初心者でも簡単にOCを楽しめる機能の追加は嬉しい。一方で、従来の手動設定はもちろん可能だし、ボード上にはCPU V-COREやCPU VTT、DDR VCC、PCHの電圧を直接測定できる「V-Check Points」も設けられているので、こだわりのあるOCユーザーでも十分に満足できる。
ハイエンド志向のユーザーだけでなく、省電力環境を志向するユーザー向けにも、DrMOSによる高効率だけではなく、特別な機能が提供される。CPU、メモリ、チップセットの要求に応じて最適な電源系統を選択できる「APS(Active Phase Switching)」回路がそれだ。APSはOSに依存することなく、その名のとおり電源フェーズのロード数を動的にコントロールしてくれる。省電力だけでなく、電源回路の長寿命化にもつながるなど、これもメリットの大きい機能だ。
さらに、コンデンサは全てソリッドタイプ、チョークも全てシールドタイプ。加えて、冷却用のヒートシンクにも、ハイエンドGPU冷却で用いられるような直径8mm径のヒートパイプ「SuperPipe」を内蔵してくるなど、このクラスのマザーボードとしては過剰とも言える程の豪華な装備となっている。Lynnfieldの登場で、マザーボードが大きく世代交代するこのタイミングに、ユーザーに存分にアピールできる強力な製品を投入しようという、エムエスアイコンピュータージャパンの気合が伝わってくる一枚と言えよう。