期待の新アーキテクチャをベースとしたIntel新型CPU「Core i7」の販売がついに解禁された。このCore i7、コスト重視というよりは、性能重視のパソコンに向いたCPUと見られており、特にハイエンドユーザーの注目を集めているようだ。それだけに、自作パソコンのベースとなるマザーボードも妥協のない製品を選びたいところ。というわけで今回は、エムエスアイコンピュータージャパン渾身のハイエンドマザーボード「Eclipse SLI」を紹介しよう。

MSI「Eclipse SLI」

MSI Eclipse SLI

■主な仕様
メーカー MSI
製品名 Eclipse SLI
フォームファクタ ATX
対応ソケット LGA1366
対応CPU Core i7 Extreme/Core i7
チップセット Intel X58 Express+ICH10R
対応メモリ PC3-10600/8500/6400(6スロット、最大24GB)
拡張スロット PCI Express 2.0 x16×2(x16レーン)、PCI Express 2.0 x16×1(x4レーン)、PCI Express x1×2、PCI×2
マルチグラフィックス NVIDIA SLI、ATI CrossFireX
ストレージ SATA×10(ICH10R×6ポート、JMB322×4ポート)、eSATA×2(JMB362)、PATA×1(JMB363)
RAID機能 ICH10R SATA(RAID 0/1/5/0+1)、JMB322 SATA(RAID 0/1/JBOD)、eSATA(RAID 0/1/JBOD)
ネットワーク 10/100/1000BASE-T×2(Realtek RTL8111C×2)
オーディオ機能 7.1chオーディオ、Creative Sound Blaster X-Fi Xtreme Audioチップ搭載PCI Express x1カードを標準添付
インタフェース USB2.0×8(他ヘッダピン×4ポート)、IEEE1394a×1(他ヘッダピン×1ポート)

チップセットはIntel X58 Express(左)+ICH10R(右)。ネイティブSLIのプログラムも適用済みで、NVIDIA SLIを利用できる

チップセットはIntel X58 Express+ICH10R。さらにEclipse SLIのIntel X58 Expressでは、こちらの記事でも紹介したネイティブSLIの認証を受けており、ATI CrossFireXだけでなく、NVIDIA SLIも利用できるという特徴を持つ。さらに、Gen.2.0準拠の高速PCI Express x16スロットを3本(レーン数はx16+x16+x4)装備し、ハイエンドなマルチグラフィックス構成を狙うにも最適なマザーボードに仕上がっている。

バックパネル部。もはや"コダワリ"の域にまで達しつつあるのか、X58世代でもPS/2を2ポート装備

そして、このEclipse SLIにおける最大の"ウリ"は、豊富すぎるくらいに満載したMSI独自の機能群だ。近年の同社マザーボードが備えていた機能だけでなく、このX58世代から新たに搭載する機能まで、ほとんどの同社独自機能をフル搭載してきている。従来の同社の"Platinum"や"Diamond"といった製品グレードを表す製品命名規則を飛び越え、"Eclipse"という新たな名称まで採用しているあたりからも、如何にも力が入った製品なのだが、Eclipseは"伊達"ではないのだ。

まず注目したいのが、第2世代になった「DrMOS」チップの採用。高効率と低発熱を両立させる電源制御チップ……というDrMOSが、さらに高性能に進化した。ハイエンドマザーボードながら、Eclipse SLIのCPUソケット周りの回路や付随するヒートシンクなどの規模が比較的すっきりとまとまっているのも、同チップによる優れた電源制御の賜物だと同社ではアピールしている。省電力だけでなく高速動作にも貢献するそうで、オーバークロック時の安定動作でも優位性を発揮するとのことだ。

第2世代に進化した「DrMOS」。電源回路の横に設置されたRENESASのチップがそれだ

ハイエンドにしてはCPUソケット周りがすっきり、ヒートシンクも小規模。「DrMOS」のおかげだという

オーバークロックと言えば、ボード上のディップスイッチでFSBを設定できる「Easy OC Switch」も面白い。スイッチを使った"ちょっと懐かしい"オーバークロックが楽しめる、という副次的な面白さもあるが、BIOSを通さず強制的にFSBを設定できるという同機能は、とかく不測の事態が起こりやすいオーバークロックを行う上では、実用度も高い。あわせて、ボード上にはPower/Resetスイッチも搭載しているので、特に限界を目指してチューニングを繰り返すような"イジリ倒し派"のユーザーには安心だろう。

赤い部分が「Easy OC Switch」。隣の「D-LED2」ボタンについては後述

もちろんBIOS上のオーバークロック設定も豊富。Easy OC Switchとあわせて使いこなしたい

そういったチューニングでも役に立つのが、「Green Power Center」の存在だ。電源回路の動作フェーズ数のコントロールができ、電力消費量や変換効率などをリアルタイムで監視できるという機能である。もちろん、Eclipse SLIではGreen Power Centerの機能を拡張する追加コンポーネント「Green Power Genie」を標準装備。これによりメイン電源コネクタから直接情報を取得でき、さらに細かなデータを監視できるようになっている。

細かなシステム監視ができる「Green Power Genie」を標準装備

「Green Power Center」の機能のひとつで、BIOS上から電源フェーズ数のコントロールもできたりする

さらに、現在の仕様フェーズの数をボード上のLEDから視覚的に確認することも可能

ついでに、Eclipse SLIではボード上のステータスLEDまで"てんこ盛り"だったりする。ちなみに左がDDR Phase LEDで、右がQPI Phase LEDなどなど……で、動作中はこういったLEDがボード全体にわたり各所で輝く

「D-LED2」も便利な機能。小型液晶を備える追加コンポーネントなのだが、LEDの点灯パターンで不具合個所が判る既存機能「D-LED」のバージョンアップ版で、ボード上に用意された専用コネクタへ装着すれば、液晶部にエラーメッセージや、動作周波数、温度、電圧などの様々な情報を表示できるというものだ。

液晶表示部を備える「D-LED2」のコンポーネント。先ほどの「D-LED2」ボタンを押すことで各種情報を表示したりできる。サンプル版なので基板が剥き出しだが、製品版では"殻"がつくかも

「D-LED2」コンポーネントを接続するためのコネクタ(JDLED2のシルク印刷があるコネクタ)がこれ。D-LED2の右の方から伸びている赤黒のコードは温度センサにつながっている

ところで、上記のEclipse SLIの仕様表を再度確認していただきたいのだが、地味(?)に凄いのが、ストレージインタフェース用の追加チップの搭載量だ。内蔵ストレージを大量に搭載できるだけでなく、eSATAを2ポート、しかも、このeSATAまでRAIDに対応させているという充実ぶりだ。eSATA接続のデータ領域を2重化したり、工夫次第で色々と便利な使い方が考えられる。

左からJMB322(SATA)、JMB362(eSATA)、JMB363(PATA)。ストレージインタフェースの豊富さは特筆モノだろう

そろそろ紙面の限界も近いのだが、ほかにもコンデンサが全て固体タイプであったり、チョークコイルが全てノイズ低減効果のあるシールドタイプであったり、Creativeの「Sound Blaster X-Fi Xtreme Audio」搭載のPCIe x1対応サウンドカードや、ケースパネルとの簡単接続を実現する「Mコネクタ」を同梱していたり……と、先にも述べたように、とにかく紹介しきれないほど"満載"なのが、このEclipse SLIなのだ。

「Sound Blaster X-Fi Xtreme Audio」カードと「Mコネクタ」が付属

10/100/1000BASE-Tも2系統。チップはRealtekのRTL8111C×2個

ハイエンドこそ、後悔の無い選択を

LGA1366にソケットが変わっていることもあり、Core i7の導入には既存システムの刷新に近いような買い替えが必要となる。当然、ちょっとでも安く揃えたい、というのも間違った選択肢ではないと思う。しかし一方で、今回紹介したEclipse SLIの現時点での実勢価格は45,000円前後と、各社とも高級品だらけのX58搭載マザーボードの中で見ても、決して安い方ではない。

が、そもそもCore i7自体が登場したばかりの最新ハイエンドクラスであり、この時期にせっかくCore i7で組むのであれば、"この先数年は戦える構成"を目指すことをオススメしたい。"財務大臣"(筆者の場合は奥様)を説得する必要があるなら、初期投資は高くても、長い目で見れば総コストは安くなるのだっ! という言い訳が比較的通りやすい。……冗談はさておき、マザーボードは他のパーツと比べれば買い替え頻度が少ない。システム刷新の時期だからこそ、Eclipse SLIのようなハイエンドマザーを選びたいのである。

「Eclipse SLI」の製品パッケージ