IntelのX38 ExpressやAMDのAMD 790FXといった最新チップセットの特徴は、PCI Express 2.0への対応。これはグラフィックスカードでも同様である。実際にその効果を体感できるかどうかは別にして、これからパーツを購入するなら、決して無視できないファクターといってもよいだろう。そういった中、グラフィックスカードでは先陣を切ったものの、チップセットでは出遅れていたNVIDIAから、ついに対応チップセットとなる「nForce 780i SLI」が投入された。
MSI「P7N Diamond」
主な仕様メーカー | MSI |
---|---|
製品名 | P7N Diamond |
フォームファクタ | ATX |
対応ソケット | Socket 775 |
対応CPU | Core 2 Extreme QX/X、Core 2 Quad/Duo、Pentium D/4 |
対応FSB | 1333/1066/800MHz |
チップセット | NVIDIA nForce 780i SLI |
対応メモリ | PC2-8500/6400×4スロット(最大8GB) |
拡張スロット | PCI Express x16×4(帯域は4本目がx8)、PCI Express x1×2、PCI×1 |
ストレージ | SATA×6(チップセット×6)、eSATA×2(JMicron JMB363)、PATA×2(チップセット×1・JMicron JMB363×1) |
RAID機能 | チップセットSATA(RAID 0/1/0+1/5)、Jmicron JMB363 SATA(RAID 0/1/JBOD) |
ネットワーク | 1000Mbps×2(Realtek RTL8211BL) |
オーディオ | 8ch HDオーディオ(Realtek ALC888) |
インタフェース | USB2.0×10、IEEE1394a(JMicron JMB381) |
付属品 | Mコネクタ、Sound Blaster X-Fi Xtreme(PCIe x1) |
MSIの「P7N Diamond」は、NVIDIAの最新チップセット「nForce 780i SLI」を採用した1枚。PCIe x16スロット4基を備えており、チップセット最大の特徴ともいえる、グラフィックスカード3枚によるSLI、"3-way SLI"をサポートする。なお、4本のPCIe x16スロットのうち、青の2基がPCI Express 2.0対応。白と黄色のスロットはそれぞれPCI Express Gen1までの対応で、実際の帯域も白はx16だが、黄色のスロットはx8までとなっている。つまり、3-way SLIを構築する場合は、青2基と白1基の計3基を利用することになる。
バックパネルには、eSATAポート2基を備えるほか、USB2.0×6、LAN×2、IEEE1394a(6ピン)、S/PDIF出力(光)などを搭載。CMOSクリアスイッチがバックパネルに用意されている点も注目だ |
ノースブリッジは最新の「nForce 780i SLI SPP」 |
サウスブリッジとなる「nForce 780i SLI MCP」だが、シルク印字を見る限りは、従来の「nForce 570 SLI MCP」を組み合わせているようだ |
PCI Express 2.0はノースブリッジではなく、「nForce 200」と呼ばれるスイッチチップを別途搭載することで実現している。なお、このチップとノースブリッジは4.5GT/秒で接続されている |
チップセットの冷却は、最近のMSI製マザーボードではおなじみの「Circu-Pipe(サーキュ・パイプ)」を採用。ノースブリッジ上の扇形になったヒートシンクが特徴的である。nForce 780i SLIの場合、ノースとサウスの2チップに加えて、PCI Express 2.0用のチップが搭載されている。チップが増えれば発熱ももちろん増大する。銅製ヒートパイプによって強力な冷却を行うCircu-Pipeの存在は大変心強い。なお、ヒートパイプ式のファンレスチップセットクーラーの場合、放熱部に風をあてることを前提に設計されている。基本的にはCPUクーラーのエアフローが利用されるが、組み立てを行うときは、PCケースのエアフローについても十分に考慮しておきたい。
コンデンサがすべて固体型というのは、最近のマザーボードでは珍しいことではない。この製品で注目したいのは、CPU周りのコンデンサに"POSCAP"と呼ばれる高効率かつ低発熱のコンデンサを採用しているところだ。また、電源回路部分は4相(フェーズ)だが、各相をマスター/スレーブといったデュアルチャンネル仕様にすることで、電力効率を向上。ハイエンドCPUの利用時やオーバークロック時でも安定した稼働が期待できる。なお、MSI製マザーボードに付属するオーバークロックツール「Dual Core Center」を使えば、どの程度の効率で電力が使用されているかがチェックできるようになっている。
オンボード機能をチェックすると、ギガビットイーサ(GbE)対応のLANを2基備えるほか、IEEE1394aや8ch対応のHDオーディオを搭載。バックパネルのeSATAコネクタおよびボードほうのPATAコネクタをサポートするJMicron製のRAIDコントローラ「JMB363」を装備する。なお、オーディオに関しては、ボード上に8ch対応のHDオーディオコーデック「Realtek ALC888」が搭載されているが、別途Sound Blaster X-Fi Xtremeを搭載したPCIe x1対応のサウンドカードが付属する。
GbEはチップセット内蔵の機能を利用しており、ボード上にはPHYチップ「Realtek RTL8211BL」が2基搭載されている |
IEEE1394aはJMicronの「JMB381」。現在のところ非常に採用例の少ないチップだ |
最近では定番となりつつあるJMicronの「JMB363」。PATA1基とバックパネルのeSATA2基をサポートする |
オンボードには8ch HDオーディオコーデック「Realtek ALC888」が搭載されている |
P7N Diamondは使い勝手のよさも魅力。ボード上に用意された電源スイッチやリセットスイッチ、バックパネルにあるCMOSクリアスイッチなどは、特にオーバークロックを試みる際に役立つ装備。また、SATAコネクタが横向きに設置されているのも、ボード長の長いグラフィックスカードを装着した場合に干渉しにくいというメリットがある。また、電源スイッチや各種LEDといったシステムパネルのケーブルをまとめて装着できる"Mコネクタ"ももちろん付属する。
ボード上に設置された電源スイッチおよびリセットスイッチ。筐体から出して作業を行う際に便利な装備だ |
SATAコネクタが横向きだと、長いグラフィックスカードを挿しても干渉しにくい。ただし、PCケースによってはHDDベイが干渉するケースもあるので、注意が必要だ |
nForce 780i SLIは登場したてのチップセットだけに、その実力についてはまだまだ未知数なところが多い。3-way SLIについても対応グラフィックスカードがハイエンドモデルに限られているため、なかなか手の出しづらいソリューションである。とはいえ、パフォーマンスをトコトンまで追求したいユーザーにとっては非常に魅力的であることも事実。NVIDIA製チップセットは、オーバークロック耐性の高さでも定評がある。高い冷却力を誇る「Circu-Pipe」やデュアルチャンネル化された電源回路、高効率・低発熱が魅力のコンデンサ「POSCAP」といった装備によって、P7N Diamonは安定性の面でも期待の高い1枚といえそうだ。