サラリーマンが副業で稼いでいいのか?

副業で稼ごうと思った時に、多くのサラリーマンが心配するのは、そんなことをして大丈夫なのかということでしょう。実際、日本労働研究機構の1996年の調査によると、「副業を禁止している」企業は38.1%、「許可を必要とする」企業は37.1%と、ほぼ4分の3の企業が副業を事実上禁じています(「マルチジョブホルダーの就業実態と労働法制上の課題Ⅱ」)。

しかし、会社の就業規則に副業禁止規定があったとしても、(1)ライバル企業で就業しない、(2)勤務時間中に副業をしない、(3)副業によって本業に悪影響を与えない、という3つの条件を全て満たしていれば、仮に副業をしていることが会社にバレて会社から懲罰を受けたとしても、裁判を起こせば、労働者が就業規則に違反した責任を問われることは、ほとんどありません。

ただ、なかには副業禁止規定の有効性を無制限に認めている判例もあるので、副業は会社にばれないように、そっとやったほうが良さそうです。堂々と「愛人がいますよ」と宣言をするのではなく、そっとばれないように「仕事の不倫をする」というのが、一番賢い方法でしょう。

ネット社会の到来によって、副業の環境は一変

しかし、会社にバレない副業はあるのでしょうか。昔は、会社の休みの日に、他の会社で働くというのが普通だったので、会社にバレてしまうことが、よくありました。スーパーでレジ打ちをしていたり、警備の仕事をしていたら、いつ会社の同僚に見つかってしまうかもしれません。ただ、ネット社会の到来によって、副業の環境は一変しました。ネットで稼いでいる分には、会社にバレる可能性が、非常に小さいからです。

ネットで稼ぐといったときに、真っ先に思い浮かぶのは、アフィリエイトかもしれません。自分のホームページなどに企業のバナー広告を貼り付け、そこを読者がクリックして、商品を買ってくれると、一定の報奨金が支払われる仕組みです。ただ、アフィリエイトは、まさに弱肉強食の世界で、1か月に数十万円稼いでいる人もいれば、ほとんど稼げない人もいます。私も、私のホームページにバナーを貼っていたことがありますが、3年ほどやって、稼ぎは300円ほどでした。月に10円くらいしか稼げなかったということです。

アフィリエイトでたくさん稼いでいる人は、工夫と努力をしています。例えば、株主優待が得られる株式をたくさん持って、送られてくる優待品を片端から写真入りで紹介するサイトを作っています。そうやって株主優待が具体的に分かる情報を与えたうえで、株が欲しいと思った人のために、ネット証券会社のバナーを貼っておくのです。

料理の得意な人は、毎日新しいレシピを考えて、調理の過程を写真に撮り、ブログにアップして、調理に必要な食材を買えるサイトへとバナーから読者を誘導しています。

誰でもできるのが、ネットでアンケートに回答するという稼ぎ方

また、ある女性タレントさんとロケで一日ご一緒したときのことです。ロケバスのなかで、彼女はずっとメイクをしたり、髪形を変えたり、アクセサリーを変えたりしながら、自撮りを繰り返していました。一体何をしているのだろうと思って聞くと、そこに使った化粧道具や化粧品、アクセサリーなどを販売するサイトに読者を誘導して、報酬をもらっているということでした。

いずれのケースでも、アフィリエイトで稼いでいる人は、大変な努力を積み重ねています。つまり、いくらネットの世界とは言え、働かずに稼ぐと言うことはなかなかむずかしいのです。しかも、稼ぐのには、それなりの才能とか知名度が必要になります。

一方、誰でもできるのが、ネットでアンケートに回答するという稼ぎ方です。比較的報酬の高いものでも1回につき100円、なかには10円というものもたくさんあります。こうなると、内職と一緒で、相当な時間をつぎ込まないと、ビジネスにはなりません。

もちろん、小さな稼ぎを積み重ねたほうが、リスクは小さくなりますし、会社にもバレません。だから、私は副業ではなく、複業を持ちましょうという話をずっとしてきました。小さく稼いで大きく育てるのです。それにしても、こんな小さな稼ぎばかりでは仕方がないと思われる方も多いと思います。実は、ネットにはもう少し稼げる手段が眠っています。それは、来週またお伝えしましょう。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 森永 卓郎(もりなが たくろう)

昭和32年生まれ、58歳。東京都出身。東京大学経済学部経済学科卒業。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所等を経て、現在、経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。
専門は労働経済学と計量経済学。そのほかに、金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。
主な著書に『<非婚>のすすめ』(講談社現代新書、1997年)、『バブルとデフレ』(講談社現代新書、1998年)、『リストラと能力主義』(講談社現代新書、2000年)、『日本経済「暗黙」の共謀者』(講談社+α新書、2001年)、『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社、2003年)、『庶民は知らないアベノリスクの真実』(角川SSC新書、2013年)など多数。