連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

我が家の財産を整理、把握する

今年も師走に入り、2017年(平成29年)ももうじき終わります。日頃、忙しい方も、年末年始は比較的まとまった時間が取りやすい時期でしょう。この時期を利用して、是非1年間の家計の整理・まとめを行って現状認識をしてほしいと思います。

仕事では、P(Plan)→D(Do)→C(Check)→A(Action)サイクルを回すことが大事だと言われます。このサイクルを繰り返すことで、仕事の目標達成が早まるとともに、仕事の品質もアップし、ノウハウも積み上がります。このサイクルは、個人の経済生活にも効果があるはずです。

  • P(Plan)→D(Do)→C(Check)→A(Action)サイクル

ただ、これまで何もやっていない人が、いきなり「Plan」を立てるのは困難です。まずは、現在の足元の家計の状況を正確に把握することから始めましょう。

把握するおもな内容は「財産(負債含む)」「額面収入」「税金・社会保険料」「主な支出」「1年間の積立貯蓄額」です。エクセルなどの表計算ソフトに入力しておくと、毎年記録して比較することもでき、家計の目標設定や進捗の確認に役立ちます。

「財産(負債含む)」については、以下の項目で整理し、把握するとよいでしょう。

  • 【金融資産】

結婚して共働きの夫婦は、それぞれの名義で明細を記録し、全体が一覧できるようにしましょう。また、世帯全体の「貯蓄」と「投資」の金額が集計できるようにすれば、金融資産がどちらか一方に偏り過ぎていないかなどの確認ができます。

金融資産の残高を把握することで、この1年間でいくら財産が増えたか(あるいは減ったか)を正確に把握ことができます。共働きでお互いの資産を共有していない夫婦は、必ず最低年に一度は、それぞれの金融資産を確認する機会を持ちたいものです。そうしなければ、家族のライフプランを具体的に立てることができません。

  • 【負債】

負債はマイナスの財産です。これも名義ごとに記録し、残高が合計できるようにしましょう。貯蓄残高からローンの繰上返済に振り向ける金額を検討することなどに役立ちます。

家計における主な「財産」は金融資産と負債ですが、その他の代表的なものには自宅(マイホームの場合)があります。自宅については、毎年でなくてもよいので、数年に一度程度、不動産会社に査定を依頼して、大まかな時価を把握するとよいでしょう。実際に売却するつもりはなくても、売却代金で住宅ローンを完済できるかどうかを知っておけば、家計と向き合う態度が変わるでしょう。

「額面収入」「税金・社会保険料」「主な支出」等のまとめ

給与明細や賞与明細や、銀行から差し引かれる主な支出など、履歴が残っているものだけでもよいので、主な項目を下のように月ごとの一覧表にまとめておきましょう。これらの他にも、把握できている支出項目も記録するようにしましょう。

  • 「額面収入」「税金・社会保険料」「主な支出」等

このような表を毎年作成しておけば、比較することができます。

会社員は、税金や社会保険料が給与天引きされているため、実際に自分がいくら負担しているかを意識する機会はあまりありません。このような表にまとめるとそれを意識するきっかけになります。水道光熱費やスマホ代などは、前年同月と比較することで節約の意識を醸成することにもつながります。

これらの作業をする過程は、家計について様々なことを考えるきっかけになります。また、今後の積立目標を設定したり、積立計画を立てたりする上での材料になります。年末年始には、少し時間を割いて、是非、これらの整理やまとめを行ってみてください。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

  • alt
  • alt
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

メルマガ「生活マネー ミニ講座」(平日・毎日配信)
HP「FPオフィス ワーク・ワークス」