連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
民間の医療保険の加入の目的は、公的医療制度の補完
前回の「サラリーマンの公的医療保障は、自己負担3割だけではない!」で触れたように、日本の公的医療保険は充実しています。そのため、民間の医療保険は、公的医療保険で不足する部分をカバーするために加入するのがポイントです。公的医療保険の自己負担費用など、すべての出費を民間の医療保険でカバーしようとすると、保障を厚くする必要があり、毎月の保険料が高くなって家計を圧迫します。多くの保険料を払っても、その後病気やケガによる入院・手術がなかった場合、保険料がムダになってしまいかねません。
したがって、民間の医療保険では、病気やケガによる出費の一部をカバーするにとどめ、残りは貯蓄を活用すると割り切って考えた方がいいでしょう。
民間医療保険の選択ポイント
民間医療保険は多くの保険会社が提供しており、それぞれ特徴が異なります。また、保障範囲等にも様々な選択のポイントがあります。契約する人の考え方や家計の状況によっても違いますが、ここでは筆者の考え方にもとづいて、どのような選び方をしたらよいかを示したいと思います。
上の表を、民間の医療保険を加入するときの判断に役立てていただければ幸いです。
がん特約を付ければ、別途「がん保険」に加入する必要はない
近年は、民間の医療保険にがん特約を附帯できるものが増えてきています。がん特約を付ければ、別途「がん保険」に加入する必要がないとも言えます。
元々、がん保険の最大の特徴は、入院給付金の支払限度日数が無制限であることでした。何回入院しても何日入院しても、無制限に入院給付金を受け取ることができれば、長期入院の経済的負担を軽減することができました。
しかし、最近のがん治療方法は、入院・手術だけではなくなっています。また、入院した場合の日数も短くなり、2014年の患者調査(厚生労働省)によると、がんの平均入院日数は、18.7日。75歳以上の高齢期の平均でも25.3日となっています。
近年のがんの主な治療方法は、「入院・手術治療」、「抗がん剤治療」、「放射線治療」です。「抗がん剤治療」や「放射線治療」は、入院を伴わない通院で行われるケースもあります。
したがって、民間の医療保険に標準的な保障である「入院給付金」「手術給付金」「先進医療給付金」に対して、がん特約として、「抗がん剤治療給付金」「放射線治療給付金」、さらに、使いみちが自由な「診断一時金」を附帯すれば、別途がん保険に加入する必要はないでしょう。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。
「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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