連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

iDeCo(イデコ)の加入者が2017年1月だけで8.3%増!

昨年から話題になっている「iDeCo(イデコ)」。もともと「個人型確定拠出年金」という名称で2001年から存在していましたが、2017年1月から、これまで加入が認められていなかった専業主婦や公務員などにも門戸が開放され、誰でも加入することができるようになりました。このことをキッカケに、「iDeCo(イデコ)」という親しみやすい(?)愛称がつけられ、昨年から大々的に広報されています。金融機関による顧客獲得競争も激化しています。

そのおかげもあってか、先日、厚生労働省が公表したところによると、iDeCo(イデコ)は2017年1月の1カ月間だけで、加入者数を8.3%も増やしました。とはいえ、1月末時点での加入者数は33万1,585人。昨年12月末が30万6,314人でしたので、約2万5,000人増えたにすぎません。

会社が導入を決めて従業員が加入する「企業型確定拠出年金」の加入者数が昨年12月時点で589万人であることを考えると、iDeCo(イデコ)の加入者はまだまだ少ない。ただそれだけに、普及の余地があるといえるでしょう。原則60歳まで引き出すことができない制約はあるものの、その代わりに極めて大きな税制優遇(掛け金が全額所得控除、運用益非課税、給付時の所得控除)がある仕組みです。老後の資金準備を効率的に行う有力な手段として積極的に活用してほしいものです。特に20代、30代、40代の方などは、少子高齢化の影響で、今よりも公的年金の受給水準が低くなると言われています。「自助努力」での財産形成がますます求められます。

企業型確定拠出年金の主な役割は退職金作り

企業型確定拠出年金の加入者数が多いのは、その主な役割が退職金作りだからです。もともと企業は従業員の退職金を企業の責任で準備していましたが、長く続く低金利など運用環境の悪化に伴い、退職金の一部、あるいは全部の運用を従業員に委ねることにしたのです。退職金の原資となる掛け金を従業員に支払い、その運用は従業員の自主性に任せるのが企業型確定拠出年金の基本的な枠組みです。労使の合意を経て導入した企業数は、昨年12月末時点で2万4,869社に及びます。

従業員側にとっては「会社が運用責任を放棄した」という後ろ向きな見方もあれば、「自分でうまく運用すれば退職金を大きく増やすこともできる」という前向きな考え方もできます。どうせ運用するのであれば、前向きに取り組みたいものですね。

企業型確定拠出年金を導入している会社の中には、「マッチング拠出」といって、会社が支払う掛け金とは別に、従業員が任意で自分の給与の一部を掛け金として拠出できるようにしている会社もあります。会社が支払う掛け金と自分の掛け金を一緒にして運用することで、「自分の財産形成」という意識が高まる効果があります。

サラリーマンが誰でもiDeCo(イデコ)に加入できるワケではない!

今年1月から専業主婦や公務員を含め、「誰でも確定拠出年金に」入ることができるようになりました。これは「誰でも個人型確定拠出年金(iDeCo)に」ではありません。

サラリーマンの中には、「自分も個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できる」と誤解している方もたくさんいると思われます。全員の方が入れるワケではありません。個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できるサラリーマンは、以下の通りです。

サラリーマンが個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できる?

勤務先に企業型確定拠出年金があり、マッチング拠出もある場合には、マッチング拠出を積極的に活用しましょう。企業型確定拠出年金は、個人型(iDeCo)と違って口座管理手数料などのコストを自己負担する必要がないため有利です。

勤務先に企業型確定拠出年金があっても、マッチング拠出がない場合には、会社が個人型(iDeCo)の加入を認めていれば加入することができます。しかし、それは会社の退職金制度の枠組みに変更をかけることにもつながりかねないため、実現が厳しい場合もあります。

勤務先に企業型確定拠出年金がない場合には、個人型(iDeCo)に加入することができます。なお、個人型(iDeCo)に加入できる場合も、条件によって拠出限度額が異なることに注意が必要です。

勤務先が企業型確定拠出年金を導入しているサラリーマンは、まずは足元の運用をしっかり行っていくことが基本です。個人型(iDeCo)に加入したくてもできない場合には、NISA(少額投資非課税制度)など活用して、有利な財産形成を行うようにしましょう。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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