連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

家計や資産を点検するときのポイント

2016年もあとわずか。シングルの方も夫婦2人の方も、お子さんがいらっしゃる方も、年末年始の休暇中に少し時間をとって、今年1年間の家計の状況をチェックし、来年の目標を作ってみてはいかがでしょうか。

まずは、1年間の金融資産の増減をチェック

通帳の残高などをもとに、今年の年始の金融資産残高と、年末の残高を比較しましょう。夫婦の場合は、世帯全体でみるのではなく、夫名義、妻名義ごとに年始と年末の金額を比較してください。単に通帳を見ながら比較するのではなく、表計算ソフトなどを使って口座ごとに記録して比べるとわかりやすいでしょう。一度フォームを作っておけば来年以降も毎年使え、金融資産の推移が時系列で把握できます。財産形成のプロセスが長期間に亘って記録でき、家計管理の質のアップが図れます。

資産が増えている方は、いくら増えているかをチェックし、増えている理由を確認しましょう。財形貯蓄や積立貯蓄、持株会など、積み立てによって増えている場合は、「計画的に増やした」と言えるでしょう。積み立てではなく「給与や賞与から支出して余ったお金が貯まった」場合は計画的だとはいえません。来年からは、できるだけ積み立て方式の貯蓄に切り替えるようにしましょう。

資産が減っている場合でも、減った理由が明確であれば問題ありません。例えば、「住宅を取得するための頭金や諸経費がかかったため」や「子供が学校に入学してまとまったお金がかかったため」、「かねてより予定していた旅行に行ったため」などです。

このようなライフプランの実現のための支出は、金融資産が減った代わりに豊かな暮らしや満足を得ることができます。しかし、「収入が減ったため」や「何となく減った」場合は問題です。

金融資産が特に理由なく減っている場合は、支出の内容を分析する!

「何となく金融資産が減った」家計は、金融資産残高を確認するだけのおおまかなチェックではなく、支出の内容を細かく分析して「今後どうやって支出を抑制して貯蓄余力を付けるか?」を検討する必要があります。

そのためには、家計簿を分析する必要がありますが、そのような方にかぎって、家計簿をつけていない方が多いのも事実。家計簿がなければ、支出を細かく分析することができません。そのような方は、過去にさかのぼるよりも、まずは「来年から家計簿をつける」ことを目標に掲げ、実践するようにしましょう。

将来使うお金を3種類に分けて、適切な金融商品や仕組みを選ぶ

現在の金融資産や今後増やしていくお金を、目的別に仕分けしましょう。「何に使うお金か?」を明らかにし、それぞれの目的に適した金融商品や仕組みを活用すれば効率的に財産形成をすることができます。

金融資産の目的別仕分け(例)

社会人になって3年くらいまでは、暮らしの基盤を作るための期間といってもいいでしょう。社会人としてそろえなければならないモノもあり、一般的には収入に対する支出の割合が高い時期でもあります。しかし、4年目くらいからは、将来のライフイベントの時期(年齢)考え、予算を見積もりましょう。

財産形成の具体例

見当がつかない場合は、一般的なライフイベントとその平均的な資金として、結婚資金:200万円、子供の大学入学進学費用:1人当たり200~300万円、住宅取得のための自己資金:700万円~1,000万円を目標にしてみてはいかがでしょうか。

具体的な今後の積み立て計画

会社での仕事には、目標やスケジュールが必ずあります。しかし、プライベートの暮らしにおいてこれらを明確に決めている人はあまりいないのではないでしょうか。「将来どうなるかわからないから、具体的なプランを作っても仕方がない」と考えるのでなく、だからこそ、「将来こんな暮らしをしたい! 」という目標や、実現に向けたスケジュールを決めた方いいと思います。目標や計画を持つことによって暮らしぶりや家計が引き締まり、メリハリのある生活ができるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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