連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

「バランス型」の投資信託はリバランスが不要で手間いらず!

前回は、投資信託で資産運用をするなら、コストの安い投資信託がおすすめだということをお話しました。それは、購入時手数料がかからない「ノーロード」、信託報酬が安い「インデックス型」の投資信託でした。

今回ご案内するもうひとつのおすすめ投資信託の条件は「バランス型」の投資信託です。「バランス型」とは、1本の商品の中に複数の資産が組み合わされているパッケージ型の投資信託です。

資産運用の鉄則は「分散投資」だとよく言われます。分散投資とは、値動きの異なる複数の資産を組み合わせて運用することによって、リスク(ぶれ)を抑えながら安定的な収益を上げる可能性を高めるやり方です。 ノーロードでインデックス型の投資信託「eMAXIS」シリーズを例にとって見てみましょう。

資産別のリスク(ぶれ)の度合い

上表の(1)~(4)の投資信託は、それぞれ1種類の資産だけに投資されています。

値動きのぶれ幅の度合いを示す「リスク」をみると、債券は比較的ブレ幅が小さく、株式はブレ幅が大きいことがわかります。(1)の日本債券や(2)の先進国債券の投資信託で運用すると、あまり儲からない代わりに、あまり損もしません。一方、(3)の日本株式や(4)の先進国株式の投資信託の場合は、大儲けする可能性もありますが、大損するかもしれません。

「いつ、どの資産がいつまで値上がりするか?」ということは、プロでも予想できないのですから、私たち一般の投資家がうまく資産運用をしていくためには、ブレ幅を抑えて損する確率を下げながらできるだけ安定的に運用していなければなりません。その有効な方法が、これらの資産を組み合わせて運用する分散投資なのです。

分散投資をするための投資信託の選び方は?

分散投資をするための投資信託の選び方には、2つの方法があります。

ひとつは、個別の資産に投資をしている投資信託を複数選んで自分で組み合わせる方法です。上の表の例では(1)~(4)の投資信託を購入するやり方です。ただ、このやり方の場合、購入後に問題が生じます。それは、その後の相場の影響を受けて組み合わせの比率が変わってしまうことです。

図のように、相場の影響を受けて株式の比率が高まった場合、組み合わせ全体のリスクが高くなってぶれが大きくなります。ぶれの度合いを元に戻すためには、株の一部を売却し、その代金で債券を買い増して当初の組み合わせ比率に戻す必要があります。この手続きを「リバランス」といいます。

個別の資産に投資をしている投資信託を複数組み合わせて分散投資をすると、リバランスを自分で行う必要があります。そしてリバランスをするには、その前に、資産配分が変化していないか定期的にチェックをする必要があります。

その点、バランス型投資信託の場合はリバランスをする必要がありません。表の(5)のeMAXISバランス(4資産均等型)がバランス型投資信託で、この中には、日本債券、先進国債券、日本株式、先進国株式が25% ずつ組み合わされています。

バランス型投資信託は、一般的に相場の影響を受けてもリバランスは自動的に行われ、資産の組み合わせ比率は保有している間ずっと変わりません。つまり、バランス型投資信託は、手間のかからない投資信託なのです。

「ノーロード」&「インデックス型」&「バランス型」の投資信託の例

実際に「ノーロード」&「インデックス型」&「バランス型」の投資信託にはどのようなものがあるのでしょうか。投資信託の品揃えが多いことで定評のあるネット証券の代表格「楽天証券」のサイトで検索をしてみました。 検索条件は以下の通りです。

●投資信託の検索条件
・分配金:年1回
・NISA口座買付可能
・分配金再投資コース:あり
・購入時手数料:なし
・ファンドタイプ:バランス型
・積立:あり
・償還日:無期限
・運用年数:3年以上

検索された投資信託の中から、信託報酬が税込みで年率0.6%未満のものをあげてみましょう(一部にインデックス型でないものもあります)。

投資信託の例

なお、購入時手数料は、購入する金融機関によってマチマチです。上に挙げたものでも金融機関によっては購入時手数料がかかる場合があります。他の多くの金融機関のサイトにも投資信託の検索機能がついています。上記のような条件で絞り込んで投資信託選びに役立ててください。

絞り込んだあとは、投資信託ごとに組み入れている資産や配分比率、特徴、リスク(ぶれの度合い)などを確認して、自分の好みに合うものを選んで購入してみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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