連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


通勤手当は一定額を超えると税金がかかる!

サラリーマンの皆さんには、通勤にかかる交通費が会社から支払われているはずです。電車やバスで通勤している方は定期券代、自動車で通勤している人には通勤距離やガソリン代などに応じた金額が「通勤手当」として支払われます。

交通費は実費なので、いくらかかっても税金はかからないと思っている方が多いと思いますが、実際には、一定の額を超えると所得税・住民税がかかる仕組みになっています。これまでの非課税限度額は、月10万円でした。

たとえば、新幹線や高速道路を使って、月13万円の通勤費がかかる人の場合、13万円のうちの10万円には税金はかかりませんが、残りの3万円は給与とみなされ税金がかかっていました。所得税と住民税の税率が合計で20%の人の場合、税額は3万円×20%=6,000円です。この人は、1カ月で支出する額は13万円なのに、通勤手当の税引き手取り額は12.4万円となっていたのです。年間にすると税負担は7万2,000円になりますから相当な負担です。

今年から非課税限度額が月15万円に引き上げられる!

まだ正式に決まっているわけではありませんが、昨年末に発表された与党の平成28年度税制改正大綱によると、通勤手当の非課税限度額が今年から月15万円に引き上げられます。今国会で成立すれば、1月1日にさかのぼって適用されます。現在の国会は、衆議院も参議院も与党が過半数を占めているので、税制改正大綱に記載された通りに決まる見込みです。

昨年末に発表された与党の平成28年度税制改正大綱によると、通勤手当の非課税限度額が今年から月15万円に引き上げられます

非課税限度額が15万円に増額されたとはいえ、これまで月10万円以内の通勤手当の人が、これからはちょっと豪華にグリーン車に乗って月10万円を超えても月15万円までは非課税になるか、というわけではありません。

非課税限度額は「通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期などの金額」と決められています。したがって、たとえば、新幹線通勤の運賃は非課税の対象になるものの、グリーン料金は対象に含まれません。また、通勤手当を増やすために迂回した経路を申請することもできません。

東海道新幹線の定期券フレックス(通勤用)を使って東京駅まで通勤する場合、熱海-東京間の1カ月料金は85,410円、三島-東京間は92,220円、新富士-東京間は118,740円、静岡-東京間は133,860円、掛川-東京間は172,220円となっています。

双方の駅までの交通費がかからない場合、これまでは三島-東京間が非課税でしたが、今後は静岡-東京間までが非課税になります。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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