連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
1年間にかかった医療費を確定申告すると税金が節約できる!
昨年2015年中の所得に関する確定申告の期間は今年2月16日から3月15日までですが、ほとんどの会社員の方は、税金の手続きすべてを会社に"お任せ"していて、確定申告をする方は少ないでしょう。毎年秋に年末調整の書類を会社に提出すればほぼ終了します。
確定申告をすれば税金が還付される「医療費控除」という制度があることは知っていても、医療費の支払い履歴をとっていない場合や、確定申告をしたことがない方の中には、面倒臭くて何もしない方が多いのではないでしょうか。
「医療費控除」とは、1年間に支払った自分や家族の医療費の合計額から10万円を差し引いた金額を所得から控除できる仕組み。たとえば、家族全員(生計一であること)の医療費が1年間で15万円かかった場合、10万円を差し引いた5万円を所得から差し引くことができるのです。
その人の所得税・住民税の税率が合わせて20%だったとすると、5万円×20%=1万円の税金が還付されることになります(実際には所得税は還付されますが、住民税分は翌年支払う金額が少なくなります)。
1年分の医療費を計算して確定申告をするには、病院やクリニック等で発行された領収書をちゃんと保管しておく必要があります。確定申告時にはその領収書を税務署に提出する必要もあります。
これまで確定申告をしていない方は、ぜひ、1月から自分や家族の医療費の領収書をきちんと保管して、年間の医療費の合計額が10万円を超えるようであれば、来年2月~3月に確定申告をしてほしいと思います。節税効果は少額かもしれませんが、同じ額を働いて得ようとするとたいへんです。
確定申告はとても簡単に行えます。
国税庁のHPの「確定申告作成コーナー」を使えば、すぐに申告書を作成することができます。
再来年からは所定の市販薬を買った場合も所得控除される仕組みができる!
2017年からは、ドラッグストアなどで買った市販薬の額が1年間で12,000円を超える場合、超えた金額を所得から控除できる新しい仕組みができる予定です。たとえば、家族全員が1年間で3万円の市販薬を買った場合、12,000円を差し引いた18,000円が所得から控除できるので、所得税・住民税の税率が合計20%の方の場合、3,600円の節税になります。
このことは新聞報道などで知っている方もいるでしょうが、この制度には以下の注意点があります。
まだ正式決定ではない。年始から始まった今年の通常国会で決まれば決定
制度のスタートは今年からではなく2017年1月から。しかも2021年12月までの期間限定
市販薬すべてが対象ではなく、医療用医薬品(処方薬)を市販薬に転用した「スイッチOTC」というものに限定される
所得から控除できる額に上限があり、最高88,000円まで
定期健康診断や予防接種、がん検診などを受けていることが前提
この新しい制度の適用を受けると、「医療費控除」の適用は受けられない
従来からある「医療費控除」制度も、2017年から新たにできる制度も、活用するには確定申告が必要です。家族全員の1年間の支出額を計算するには、支払いの履歴をとっておく必要があります。領収書はきちんと保管する習慣を身につけてほしいと思います。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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