連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
一生涯の収支計画を作るタイミングは、ライフイベントの前が最適!
これまでファイナンシャル・プランナー(FP)としてたくさんのお客様からのご相談を受けた経験から考えると、私どものような職種の者に相談依頼をするのは、以下のようなことを思ったタイミングが多いようです。
つまり、今後生活環境が大きく変わるタイミングで、「変わってもこのままで大丈夫か?」、あるいは、「変わっても大丈夫な状態にするには何をすればよいか?」が知りたくて、FPという生活のお金の専門家に相談するのです。
もちろん、もっと具体的な次のような相談テーマもあります。
しかし、このような具体的な相談テーマの背後には目的があります。家計を節約して支出を抑えたいとか、もっと儲けたいとか、などです。それをもっと深く掘り下げていくと、「今も、将来も、老後も、一生涯お金に困らないバランスのとれた暮らしをするにはどうしたらいいか?」という点に行き着きます。
一生涯の収支計画書(キャッシュフロー表)を作ると家計の課題や問題点がわかる!
お客様が一生お金に困らない暮らしができるように、私たちFPは、お客様の家族構成や年齢、現在の家計の状況、将来の希望や夢などを、さまざまな視点からトコトンうかがって、お客様の一生涯の収支計画書を作成します。これを「キャッシュフロー表」といいます。
キャッシュフロー表の例(単位:万円)
キャッシュフロー表は、家計の収支を1年単位で試算して、夫婦の毎年の資産がどんな推移をするかをシミュレーションするものです。期間は一生涯ですので、95歳くらいまでの長期間でみていきます。
現在の家計の支出、収入、貯蓄額を元にして、将来予定するライフイベントの時期に希望する予算金額を入力していきます。具体的には、子供の教育費、マイホームを購入する場合は、自己資金とローン返済、自動車の購入資金などです。
最大のポイントは、キャッシュフロー表のいちばん下の行にある「資産残」です。
「資産残」のマイナスは、家計の破綻を示しています。
キャッシュフロー表を作成すると、家計の長期的な課題や問題点がわかります。
「当面の家計は問題ないが、今後のライフイベントに希望通りのお金をかけると、やがて家計が破綻する」とか、「現役時代はいいが、70歳代の後半になると貯蓄がなくなる可能性がある」などです。その理由を考えていくと、ある時期に、収入の割に支出額が大きくなっていることなどがわかってきます。
一生涯の資産残を常にプラスにするためには、支出のバランスをとったり、節約して支出金額を抑えたり、収入を増やす必要があります。また、少しリスクをとって資産運用をする必要があるかもしれません。
新しい年を迎えるにあたって、収支計画書(キャッシュフロー表)を作ってみよう!
2015年もあと1カ月余り。新しい年を迎えるにあたって、自分でキャッシュフロー表を作ってみてはいかがでしょう。一度作成すれば、その後は毎年見直すだけですみます。
毎年の支出額は、家計簿や通帳をみて項目別に集計すれば比較的簡単に把握することができます。教育費は、文部科学省などが統計数値を公表しています。住宅資金は希望する物件価格の1~2割を自己資金とし、残りを住宅ローン返済と考えます。住宅ローンの平均的な金利や返済額計算は、ネットを活用すれば簡単に把握することができます。その他も項目も、概算でよいので見込んでおきます。
収入は給与明細や源泉徴収票があれば、手取り額をすぐに計算することができます。老後の公的年金額も日本年金機構の「ねんきんネット」で試算することができます。
ぜひ自分で作成して、キャッシュフロー表を眺めてみてください。
数字ばかりが並んだ表ですが、自分の家計の課題や問題が浮き上がって見えてくるはずです。課題や問題さえわかれば、解決策はすぐに見つかります。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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