連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
税金の負担が軽減される「生命保険料控除」
毎年、おもに10月から11月になると生命保険会社から「生命保険料控除証明書」というハガキが届きます。また勤務先からは、年末調整に向けた書類の提出が求められます。
年末調整とは、会社員や公務員が支払う1年分の所得税額の過不足を12月の給与支払い時に調整すること。所得税額は、1月から12月までの1年間の所得によって決まります。しかし、会社員や公務員は毎月の給与、毎回の賞与から所得税(源泉所得税)が差し引かれています。そのため、1年間の所得が確定する12月に、これまで払ってきた所得税の過不足を調整する必要があるのです。
払うべき所得税額は、家族構成や配偶者の所得額、また、生命保険や地震保険の加入などによっても変わってきます。たとえば、配偶者の給料が年収103万円以下の場合、「配偶者控除」という税制優遇があります。また、16歳以上19歳未満の扶養している子供がいる場合には「扶養控除」という優遇があります。これらは「所得控除」といい、一定の金額を所得から差し引いて税額の計算がされる仕組みです。
「生命保険料控除」も「所得控除」のひとつです。
1年間に支払う生命保険料の額に応じて、一定の額を所得から控除することができます。 2012年12月31日以前が契約日の旧制度と、2013年1月1日以降が契約日の新制度とがあるので、やや複雑なのですが、ここでは新制度を例にとってお話します。
■生命保険料控除(新制度)の種類
生命保険料控除には、保険の種類によって「一般生命保険料控除」、「介護医療保険料控除」、「個人年金保険料控除」の3種類があります。
■生命保険料控除(新制度)の控除額
「一般生命保険料控除」、「介護医療保険料控除」、「個人年金保険料控除」の3種類それぞれが、以下の控除額となっていま。
たとえば、加入している死亡保険、医療保険、個人年金保険の年間支払保険料がそれぞれ8万円を超えている場合、所得税については、それぞれで4万円の所得控除があるため、3種類合計では12万円の所得控除が受けられることになります。
妻が契約者でも、夫の所得から控除できる!
「生命保険料控除」は、保険の契約者が妻でも、保険料を支払っているのが夫であれば、夫の所得から控除することができます。この場合、保険会社から届く「生命保険料控除証明書」は妻宛に届きますが、夫の年末調整書類に記載して会社に提出するようにしましょう。
共働きの場合は、夫婦それぞれが保険の契約者になって、保険料もそれぞれが負担したほうがいいかもしれません。
なぜなら、年間保険料が8万円を超えると、その後いくら払っても所得税だと控除額の上限は4万円だからです。共働きであれば、夫婦別々に負担すると、2人合計8万円までの所得控除を受けることができます。
なお、生命保険料控除は、税率の高い人ほど、つまり所得の多い人ほど有利です。
所得控除額が4万円の場合、所得税率5%の方の節税効果は、4万円×5%=2,000円ですが、所得税率10%の方のそれは、4万円×10%=4,000円と倍になります。
また、生命保険料控除は、控除額などの条件が異なるものの、税率が一律10%(所得割部分)の住民税にも適用されます。
年末調整の手続きは、年に1回のことなので、なかなか慣れず面倒臭いと思うかもしれません。しかし、ちゃんと理解して手続きをすれば有利な面もあります。ぜひ、おざなりにすまさないようにしたいものです。
(※写真画像は本文とは関係ありません)
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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