連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


公的年金は30年後に2割減る!!

厚生労働省の試算によると、65歳から支給される国の年金は今後減少していき、サラリーマンの場合、30年後には今より約2割減る見込みです。

現在、モデル夫婦(40年間夫がサラリーマンとして働き、妻はずっと専業主婦だった世帯)の年金受給額は月約22万円。賃金や物価が今のままだと仮定すると、30年後の夫婦の年金額は合計で約18万円になります。

毎月18万円の収入だけで衣食住の費用やお小遣い、生命保険料、火災保険料、医療費など、一切の支出をカバーすることを考えてみてください。公的年金だけではとても暮らしていけないことがわかります。

公的年金で足りない部分は退職金と自助努力でカバーする必要が!!

公的年金だけで足りない老後の生活費は、会社から支給される退職金と自助努力でカバーする必要があります。自助努力とは、現役時代からコツコツと貯蓄や資産運用で自分の財産形成をしていくこと。親からの相続もこれに加えてもいいでしょう。

リタイアするまでに準備する必要がある資金は、退職金を加えて3,000万円とも4,000万円とも言われますが、実際には、個々の世帯の生活費の水準、マイホームやマイカーの有無、公的年金の受給額、勤務先の退職金の額など、各世帯によってマチマチです。

ただ、いずれにせよ、現役時代の過ごし方によって老後の生活はある程度決まります。勤労収入が得にくくなる老後に「お金に困らない生活」をするためには、現役時代の間にしっかりとした考えやビジョンを持ってライフプランを立て、実践する必要があります。

これからは、私たちの親の世代とは違って、年齢を重ねて勤務年数が長くなるほど収入が増える時代ではありません。退職金にも、確定拠出年金のように、自助努力の要素が入ってきています。また、国の制度は、公的年金が減るだけではなく、医療費や介護の負担も増えることが予想されます。

このような環境の中でも、私たちは働き、結婚をし、子供をうまく育て、家を持ち、親の介護もして、さらにその後の老後の生活も、できるだけ豊かな気持ちで送りたいと思っているはずです。

老後を見据え、収入・支出・資産の長期的な「バランス」を図る!

さまざまなライフイベントを経ながらも、家族が一定の満足感を得ながら暮らしていくために必要なキーワードは「バランス」です。自分と家族の生活を長期的な視野でプランニングし、収入と支出、資産のバランスを保ちながら家計のマネジメントをしていく発想が欠かせません。

現在20代、30代の方は、結婚、子供、マイホーム取得など、これからさまざまライフイベントを経験するはずです。大きな支出を伴うこれらのライフイベントを迎える前に、長期的にどんな視点で「バランス」を図る必要があるのでしょうか。

まずは、次のチェックリストのあてはまる項目にチェックをしてみてください。

□結婚する目標年齢を決めている

□結婚にはいくら程度かかるか考え、資金の準備をしている

□子供を持つときの夫婦の年齢を考えている

□子供の人数を決めている

□共働きをするか、片働きにするか決めている

□子供にどんな教育を受けさせるか決めている

□子供の教育資金の目標を立て、準備をしている

□マイホームを取得する年齢を決めている

□マイホームの予算を考え自己資金の準備をしている

□自動車を保有するかどうか決めている

□現在の会社で定年まで働くつもり

□定年まで務めると、退職金がどれくらいあるか知っている

□定年(60歳)から65歳までは働くつもり

□会社で財形貯蓄をしている

□投資信託などで資産運用をしている

□最低年に1度は、預貯金など資産額の確認をしている

□最低年に1度は、今後のライフプランと収入・支出・資産の関係を整理して考えている

次回以降では、数回に渡って、個々のライフイベントを長期的な「バランス」を図りながら行うポイントを考えてみたいと思います。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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