連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
「ふるさと納税」の拡充によって、サラリーマンにより身近な仕組みになる
2015年度の税制改正大綱に「ふるさと納税」の拡充が盛り込まれました。2013年度にこの制度等を使った寄附金の総額は約130億円。今年からはより使いやすくなるために、寄附額は一層増え、寄附する人の数も増加することが期待されます。
「ふるさと納税」は、生まれ故郷や応援したい自治体に寄附をすると、2,000円を超える額について、住民税と所得税から一定の控除を受けられる制度です。ふつう私たちが払っている税金は、納付先や使い道を直接、具体的に決めることはできません。選挙を通じて政党や議員に投票することでしかそれはできません。しかし、「ふるさと納税」は、寄附先や金額を自由に選ぶことによって、納税者自身が直接、納付先や使い道を指定できる仕組みです。
寄附をすると、お礼として自治体から特産品や工芸品、宿泊券や優待券など、都会に住んでいては手軽に手に入らないものが届きます。たとえば、北海道紋別市のズワイガニや毛ガニ、愛媛県宇和島市のポンカン、佐賀県玄海町の黒毛和牛肉など。魅力的な特典が多いことからメディアがさかんに取り上げ、全国の自治体の特典をさまざまな切り口で検索できるサイトも充実してきたことなどから、注目が集まっています。
今年から拡充されるポイントは2つです。
2015年の1月1日からの「ふるさと納税」で控除を受けられる上限額が2倍になる
2014年4月1日以降にサラリーマン等が「ふるさと納税」を行う場合、寄附する自治体が5か所までは確定申告をする必要がなくなる
なお、今回の制度変更は、今月下旬から開かれる国会での審議・議決を経て正式決定されます。
給与収入500万円の人は、約68,000円の寄附までは自己負担が2,000円
「ふるさと納税」は、新規に税金を払って増税になる仕組みではありません。自分で選んだ自治体に寄附をすると、「寄附金額-2,000円」の税金を払わなくてすむ制度です。ただし、自己負担が2,000円ですむ寄附金額には収入や家族構成などによって上限が設けられています。上限額を超えた金額は自己負担になります。
たとえば、上限額5万円の方が、6万円寄附した場合、5万円までの自己負担額2,000円と上限額を超過した10,000円の合計である12,000円が自己負担額となります(寄附額6万円-上限額5万円+2千円)。
今回の制度拡充のポイントのひとつ、「上限額2倍」とは、「自己負担が2,000円ですむ金額が倍になる」ことです。昨年まで上限額が5万円だった人は、今年からは10万円までの寄附をしても、自己負担額は2,000円ですみます。
各地の自治体の特産品をたったの2,000円でゲットすることができるので、これまで上限額を超えないように「ふるさと納税」をしていた人は、もっと多くの額を寄附しようと考えるでしょう。また、これまでしたことがない人も、せっかくだから活用しようと思う人が増えるのではないでしょうか。
自治体5か所までは確定申告が不要になる
「ふるさと納税」で寄附をした人が税金の控除を受けるためには、寄附をした翌年の2月中旬から3月に中旬にかけて最寄りの税務署に確定申告をする必要がありました。
しかし、今回の制度変更により、サラリーマンなど、ふつう確定申告をしない人の場合は、1年間で寄附する自治体が5か所までは確定申告をしなくてもよくなります。
サラリーマンは勤務先が年末調整などを行うため、確定申告をする習慣のない人がたくさんいます。魅力はわかっていても、「確定申告のしかたがわからない」、「するのが面倒くさい」と考えて「ふるさと納税」に二の足を踏んでいた人にとって、今回の制度変更でハードルが大きく下がります。
なお、この変更は2015年4月1日以降の寄附が対象になります。3月までに寄附をした場合は確定申告が必要になるため、注意が必要です。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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