連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
歴史的に超低金利の住宅ローン
住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供している全期間固定金利型の住宅ローン「フラット35」の2014年12月金利が5か月連続で史上最低を更新しました。
■2014年12月の「フラット35(買取型)」の適用金利
「フラット35」は、取扱金融機関によって提示している金利が異なりますが、返済期間が21年以上35年以下、頭金が1割以上(融資率9割以下)の場合、最もたくさんの金融機関が提示した金利は、年1.56%(最頻金利)です。
最長35年間もの長期にわたって、金利が年1.56%で固定される住宅ローン金利は、まさに歴史的といってもいいでしょう。
ただ、低いのは固定金利型だけではありません。
変動金利型も歴史的な低金利水準で、今や1%を下回る金利を提示している金融機関がたくさんあります。
住宅ローンの金利タイプには、半年ごとに金利が見直される「変動金利型」、最初から最後までずっと金利が変わらない「全期間固定金利型」、固定金利期間を選ぶことができ、その期間が終了した時点で金利が見直される「当初固定金利型」の3種類がありますが、一般的には、変動金利型が最も金利が低く、固定金利期間が長いものほど金利が高く設定されています。
現在の金利情勢・動向から判断するなら、「全期固定金利型」が無難
住宅ローンの金利タイプを選ぶときに、自分の家計の現状や将来のライフプランなどの「内部環境」を考慮に入れず、金利情勢や動向などの「外部環境」だけで判断するのであれば、どの金利タイプがいいでしょうか?
■現在の市場金利の水準はどこにあるか?
A:現在金利は高い水準にあり、今後下落していく。
B:現在金利は下落局面にあり、今後も下落していく。
C:現在金利は低い水準にあり、今後は上昇していく。
D:現在金利は上昇局面にあり、今後も上昇していく。
多くの人は、「C:現在金利は低い水準にあり、今後は上昇していく」と答えるのではないでしょうか?
住宅ローンの返済は、ふつう長期にわたります。10年、20年、30年超のレンジで考えてみたとき、現在の歴史的な低金利がそのまま続くとは想定しにくく、いずれは上がると考えるのが妥当でしょう。
だとすれば、適用金利が変わらず金利変動リスクもなく返済額も変わらない「全期間固定金利型」が無難な選択になります。現時点での適用金利は他の金利タイプよりが高いですが、「全期間固定金利型」としては歴史的に低く、今後市場金利が上昇しても返済額は変わりません。一方、「変動金利型」や「当初固定金利型」は、市場金利の上昇に伴って「全期間固定金利型」よりも適用金利がアップし、返済額が逆転して増える可能性があるからです。
家計にゆとりがある場合は、「変動金利型」も選択できる
ただし、自分の家計の現状や今後のライフプランなどの「内部環境」も検討材料に加えると、選択できる金利タイプが異なる場合があります。
将来家計にゆとりが生まれる場合は、金利変動リスクを積極的に取りに行くことができます。つまり固定金利の期間を短くしたり、変動金利型にすることが可能になります。
なぜなら、家計にゆとりが生まれると、金利が上昇して毎月の返済額が多少アップしても対応することが可能だからです。また、ゆとりができると貯蓄ができます。そのお金を使って繰上返済をし、ローン残高を一気に少なくすれば、利息の負担を軽減することができるからです。
たとえば、ローン残3,000万円、金利3.0%の場合の年間の利息額は90万円ですが、繰上返済でローン残を1,000万円に減らすことができれば、金利が9.0%にアップしても年間の利息額は変わりません。
ゆとりが生まれやすい家計は、次のような家計です。
家計にゆとりがない時期は、金利の上昇に伴って住宅ローンの返済額がアップすると家計に大きな負担がかかってヤリクリが大変になるため、固定金利のほうが無難です。しかし、ゆとりができるようになると、場合によっては変動金利でも対応できるでしょう。
最後に、金利タイプを決めるときの3つのポイントは、
現時点の金利だけをみて、相対的に低い「変動金利型」に決めない
長期的な金利の先行きを想像して、家計の運営に支障をきたさない方向で決める
金利情勢や動向だけでなく、自分の家計の現状や将来のライフプランを検討し、自分にとって最適な金利タイプ(変動金利型や、固定金利の期間など)を選ぶ
です。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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