連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
「マッチング拠出」では、最もリスクの低い「預金」で運用してもメリットあり!
退職金・企業年金の仕組みに確定拠出年金(DC)を採用している企業のなかに、「マッチング拠出」を導入する企業が増えてきました。
「マッチング拠出」は「加入者拠出」とも言われ、従業員が給与天引きで掛金を確定拠出(DC)口座に入れて運用することができる仕組みです。
確定拠出年金制度を、退職金作りのためだけでなく、自助努力による老後の財産形成にも役立てることができる仕組みなのです。
DC口座の中で運用をすると、運用の儲けに税金がかからない非課税効果や、60歳以降に受け取るときの税制優遇があるため、資産を効率的に築くことができます。
「マッチング拠出」は、新年度が始まる4月から導入する企業が多く、そんな会社のサラリーマン諸氏のなかには、ちょうど今ごろ、「マッチング拠出を活用しようか、どうしようか?」、「活用することにしたけれど、どの運用商品を選ぼうか?」と迷っている方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、「マッチング拠出はやるべし!」です。
さらに、自分が拠出する掛金分は、最もリスクが低くて低金利の「預金」で運用したとしても、実に大きなメリットがあります。
掛金からは税金が引かれないから、メリットがとても大きい!
会社から支払われる給与からは所得税・住民税が差し引かれます。しかし、マッチング拠出の掛金に税金はかかりません。つまり、会社から払われるお金を給与口座で受け取ると税金が差し引かれて手取りが減るのに対して、マッチング拠出の掛金としてDC口座に入れると税金が差し引かれない分、手取りが増えるのです。
たとえば、会社から支払われる給与の1万円は、給与口座で受け取る場合、税率が20%(所得税10%・住民税10%)とすると、手取りは8,000円になります。しかし、その1万円をマッチング拠出の掛金としてDC口座に入れると手取りも1万円。つまり100%受け取れるのです。給与口座もDC口座も自分の口座。中身が自分の財産であることに変わりありません。
30歳から60歳までの30年間、毎月1万円の掛金を給与口座で受け取った場合と、給与天引きでDC口座に入れた場合の手取り額は、給与口座が288万円、DC口座は360万円。差額は72万円にもなります。
DC口座に入れる時点で約20%も手取りが増えるのですから、一瞬で20%のリターンを得たことになります。そのお金を時間をかけて運用で増やさなくてもメリットがあります。リスクの高い投資信託を購入せず、安全確実で超低金利の預金で運用したとしても十分有利です。さらに、運用で増やすことができるのであれば、儲けに一切税金がかからない非課税効果が上乗せされてもっと有利になります。
なお、手取りが増える効果は、収入が多い人ほど大きくなります。なぜなら、所得税は収入が多くなるほど税率が高くなり、給与口座で受け取ると差し引かれる税金が多いからです。
原則60歳まで引き出せないことに注意
マッチング拠出の唯一といってもいい制約は、「原則60歳までDC口座から引き出せないこと」。DC口座での運用の目的は「老後のため」だけに限定されているのです。
したがって、マッチング拠出の掛金を決めるときは、60歳まで据え置けるムリのない金額に設定しなければなりません。天引きした分給与が減るので、生活に支障をきたさない程度にする必要があります。
ただ、ライフステージに応じて、給与天引きする掛金額は柔軟に変更できます。
教育費や住宅ローン返済などで家計が厳しいときは減額や停止、ゆとりが出てきたら増額や再開ができるようになっています。
(※画像は本文とは関係ありません)
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CPF認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。
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