30代は人生の節目といわれています。仕事で大きなポジションを任されたり、結婚したり、子どもを持ったり。自由にお金を使える20代と違い、30代はライフイベントに応じたお金の使い方を考える必要があります。

今回は、老後資金に関する悩みを紹介します。

「国民年金の上乗せとして、老後の資金をどのように蓄えたらよいか?」(39歳/既婚男性)

老後というと随分遠い未来のお話かと思われる方も多いと思いますが、近頃は20代の若い世代の方からも、同じご相談をたくさんいただきます。

  • 老後資金について悩みや不安を感じていますか?(写真:マイナビニュース)

    老後資金について悩みや不安を感じていますか?

人生80年時代

総務省のHPでは「我が国では人生80年時代と言われるようになり、定年後のセカンドライフは過去に比べるとずっと長くなりました。その一方で、少子化が進んだこともあって、公的年金制度を維持するために年金の支給開始年齢が少しずつ引き上げられています」と記載されています。

そのため、定年を迎えても年金が全額支給される年齢に至るまで働き続け、必要な生活費を確保することも必要となってきます。

老後平穏に生活できる資金はいったいどれくらい必要なのか? できれば定年退職後はゆったりと趣味の時間を持てるような、ゆとりのある老後ライフを過ごすためには、いったい今から何を始めたらいいのか?

そのようなご相談について、想定される老後資金と具体的な老後資金の準備方法をご紹介していきます。

老後資金はどれくらいかかるのか?

人それぞれ生活レベルや趣味趣向が違いますので必要とされる1カ月の必要生活資金は異なってきます。総務省が行った平成29年家計調査報告によると月々の支出は約27万円だそうです。

老後期間が何年続くかわかりませんが、仮に20年だとしたら6,480万円、25年だと8,100万円程度が生活費の目安になってきます。

ですが、その金額を全て自助努力で老後までに準備しないといけないわけではありません。老後には老齢年金が受け取れるので自己負担額は少し軽くなってきます。

同じく平成29年総務省の家計調査報告によると、高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の公的年金などの社会保障給付は、1カ月に約18万円だったそうです。

そうなると月々の支出約27万から公的年金の約18万を引いた差額約9万円がこれから準備していくお金の目安になります。老後20年の場合は2,160万円、25年の場合は2,700万円となるわけです。

ですが、この金額に老後に掛かる医療費や住宅の修繕費、車の買い替えなどがプラスされることを考えると目安として3,000万円と考えてください。(もちろん「ゆとりある老後」を考える場合は、これ以上の金額を想定してくださいね)

老後資金を作るにはどうすればいいか?

30代の方で、ご結婚をされてお子様がいらっしゃる、これからお子様をお望みの方もたくさんいらっしゃると思います。そうなるとこれから目先の支出として出産費用だったり、教育費の積み立てだったり、子供が小学校入学前には住宅購入をしたいな……などをお考えかと思います。

そうなるとついつい老後については後回しになりがちですよね。(老後がくるという実感もないでしょうし)ですが、ここで大切なポイントになってくるのは「時間」というキーワードです。

この後、いろいろな老後資金の作り方をご紹介しますが、全ての共通キーワードは時間です。お若い30代の方々は時間を味方につけなければいけません。ごく一例になりますが、以下のような積み立て方法がございます。

個人年金保険

生命保険会社が販売する個人年金保険。タイプは様々あり60歳から受け取るものや65歳、70歳受け取り開始などがある。また所定の条件を満たし、個人年金保険料税制適格特約を付加することにより、個人年金保険料として所得の控除の対象になるので税の軽減にもなります。

財形貯蓄

財形貯蓄は毎月のお給料やボーナスから自分で指定した金額が天引きで貯蓄される制度です。一般・住宅・年金といった種類があり、会社によって利用できる内容が異なります。住宅財形と年金財形であれば合わせて550万円までの非課税制度を利用することができます。

確定拠出年金(個人型だとiDeCo)

60歳までの間に毎月掛け金を拠出して投資信託や定期預金、保険などで運用していく制度です。

確定拠出年金には企業型と個人型があり、最近だといろいろな企業がこの制度を導入しています。ですが制度の重要性やメリットが周知されていない為、何となく制度を利用されている方がとても多いのが現状です。

ご自身の大切な老後資金のことですから、よくわからない場合は、インターネットや書籍でもたくさんの情報が得られますのでぜひ活用してご自身の運用に生かしてください。

個人型 iDeCo(イデコ)の場合は、掛け金の全額が所得控除になりますので税金が安くなります。確定拠出年金を導入していない会社のサラリーマンもiDeCoを利用できます。またiDeCoには様々は税の優遇処置がありますので活用しない手はないと思います!

つみたてNISA

従来のNISAは非課税で投資できる期間が5年だったのに対して、つみたてNISAは20年となっています。つみたてNISAの方がより長期間運用するにはメリットがある制度になります。

また、つみたてNISAの対象商品は金融庁が定めた投資信託・ETFに限定されているので初心者にも安心してスタートできる内容になっています。(ですが、金融庁が厳選した商品でも元本保証があるわけでも利益も約束されているわけでもないので、その点はご留意ください!)

上記の作戦は数ある方法の一例になります。ご自身のライフプランを考えた上で、自分のニーズにあった商品や制度を選ぶことが大切になってきます。税の軽減になるから! とか、テレビでお得だって聞いたから! といった目先の損得で考えるのではなく、どうか皆さまご自身のライフプラン全体を考えた上でご検討ください。

そして老後までの時間を活用して賢く老後資金を作っていきましょう。

※上記の数値は、所定の条件のもと算出したものですので、あくまでも参考値としてご覧ください。
※上記は2019年2月現在の税制・税率に基づき作成しております。税制・税率は将来変更されることがありますのでご注意ください。詳細につきましては、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

執筆者プロフィール : 佐藤衣織(さとう・いおり)

ソニー生命保険勤務。
ファイナンシャルプランナー(AFP・2級FP技能士)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会認定)、相続診断士(相続診断協会認定)、2019MDRT成績資格会員。
保険だけでなく、家計分析や資産運用、住宅購入や相続のアドバイス、企業の財務コンサルティングなどを多数手掛けている。