連載コラム『公認会計士直伝! お金に振り回されない生き方』では、公認会計士の平林亮子氏が、公認会計士としての仕事をする中で分かってきた"お金との上手な付き合い方"について、マイナビニュースの読者の方々に"伝授"します。


親の介護をしたときは、相続で財産を多めにもらうことができる?

「親の介護をしたときは、相続で財産を多めにもらうことができますよね?」

相続のご相談や取材を受けた際、必ずと言っていいほどいただく質問です。

答えは、一応、

「はい」

です。

故人の財産の維持や増加に貢献した人は、「寄与分」として少し多めに財産を受け継ぐことができるという法律があります。

そして、介護による寄与分が認められる可能性はあると思いますので、一応「はい」という答えになるわけです。

が、寄与分はあくまでも、相続する人全員の、話し合いで決まる問題。金額を明確に計算できるような寄与分があった場合はともかく、そうでない場合には、そもそも寄与分として認められるか、認めたとしてもいくらなのかは、当事者同士の話し合いによるのです。

そして、実際には、介護をした人にとって、納得いく金額を上乗せしてもらえることはほとんどないでしょう。

介護での寄与分がいくらなのかを計算することは非常に難しいですし、介護の大変さは経験した人にしかわからない部分も多いもの。

介護に経済的な報いを求めない方がいいと取材の際にもお伝えしています。

もちろん、相続人のみなさんでご相談に来てくださった場合には、介護の大変さを伝え、介護をした人が経済的に少しでも報われるよう努力はいたしますが……。

ただ、そもそも、その発想が良くないのでしょうね。

「両親の年金と預金だけでは足りないかもしれない」という状況に陥りそうに

私もここ数年、介護を少し経験しました。介護と言っても、両親の家の近くに住み、病院につきそい、何かあったときにかけつけられるようにできるだけ家に待機している、という程度ですから、「介護」というほどのものではありませんでした。

それでも、年に何回も救急車騒ぎになったり、入院をしたり、もろもろの理由で警察沙汰になったりするので、それなりの負担はあります。日々、何が起こるのかわからないので、気を抜けないのです。重ねて、

「もしかすると、両親の年金と預金だけでは足りないかもしれない」

という状況に陥りそうになり、自分達の生活も切り詰めました。

私はこの状況を本当にありがたいと思いました。

もし、両親にお金があったら、

「大変だった分、お金をもらおう」

なんて考えてしまったと思います。そして、

「これだけやったのだから、いくらくらいはもらってもいいだろう」

などと考えてしまったかもしれません。

お金をもらえるから何かをしているのだとしたら「お金に支配された生き方」

でも本来はそうじゃない。

お金をもらえるから何かをしているのだとしたら、極端な言い方をすれば、それは

「お金に支配された生き方」

です。

こういう状況だったからこそ、

「親の介護は当たり前」

と考えることができたのだと思います。

もちろん、お礼や報酬があるのであれば、堂々と受け取ればいいと思います。そんなつもりではなかったとしても。

一方で、周囲は、金銭で報いるかどうかは別問題として、それだけの価値のあることとして理解すべきだと思います。

人の行動でお金が動く社会こそ、経済社会ですから。

でも、お金が判断基準となったり、前提となったりするのでは寂しい。

介護に限らず、お金とは無関係に

「したいこと」

「したくないこと」

「すべきこと」

「すべきじゃないこと」

がまずある。

お金は「感謝の気持ちを運ぶ道具である」と信じています。

(※画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。