連載コラム『公認会計士直伝! お金に振り回されない生き方』では、公認会計士の平林亮子氏が、公認会計士としての仕事をする中で分かってきた"お金との上手な付き合い方"について、マイナビニュースの読者の方々に"伝授"します。


日本の借金残高が1000兆円超、竹中平蔵氏も「財政破綻後のことはわからない」

2014年5月9日、2013年度末の日本の借金の残高が1000兆円を超えたと発表されました。

「日本の借金」をどう定義するかはそもそも難しい議論なのですが、国債や借入など、いつか返済をしなければならない額が1000兆円超もあるということは確かです。本当に由々しき問題です。

とはいえ、1000兆円と言われても想像もできない額ですし、自分が借金をした覚えもないのに「国民1人1人の問題です」と言われても実感がわかないという人は多いでしょう。国民1人あたりの金額に置き換えても、やっぱりピンとこないなあ、と感じるのは私だけでしょうか。

間違いなく言えることは、借金はいつか返済をしなければならないものだということ。踏み倒そうというのであれば、別ですが(笑)

そしてもしもこの借金を返済できなくなれば、 財政破綻となります。破綻したらどうなるのかについては、企業が相次いで倒産するとかインフレになるとか言われていますが、おそらくそういった事態が起きるのでしょう。

ちなみに竹中平蔵氏はテレビで、

「この先、5年から10年の間に財政破綻する。破綻した後のことは、混沌だからどうなるかわからない。」

とおっしゃっていました。

数年先のことは、竹中平蔵氏でもわからない、ということですね。

大切なことは「貯蓄できるように、お金をコントロールすること」

そんな時代に、どんな備えができるでしょうか。

備えというと、思い浮かぶのは「貯蓄」つまり、お金を貯めることかもしれません。

もちろん貯蓄は大切なことですが、少し頑張って貯めた程度では、財政破綻となって不況下でのインフレが生じた途端、すぐに使い果たしてしまうことでしょう。

たとえば、生活を切り詰め、いろいろ我慢して100万円を貯めたとします。

貯めたところでインフレとなり、物価が2倍になれば、100万円というお金の価値は半減します。「我慢」と引き換えに手に入れた貯蓄の価値が半減するということは、「我慢した甲斐」が半減するということです。

今なら100万円で買える車が、インフレによって100万円では買えなくなるかも知れない……。

そう考えると、本当に貯蓄に意味はあるのでしょうか。

貯蓄なんかやめようとか、貯蓄に意味がないと言いたいわけではありません。

むしろ、貯蓄は常にすべきだと思います。

ただ、将来に備えるという目的のみに固執すると、頑張った割りに報われないという事態になりかねないということです。

もちろん、貯蓄の目的の1つは将来に備えるため。でも、それと同じくらい大切なことは、

「貯蓄できるように、お金をコントロールすること」

なのです。

「お金を貯める」ということは、お金をコントロールする"トレーニング"

お金をしっかり貯めようと思えば、何にお金を使い、何に使わないようにするかを考えます。そして、それを実行することで、お金が貯まります。このように、限りあるお金を何に使い何に使わないのかをコントロールすることが大切なことなのです。

その力があれば、物価が変動しようとも、その変化に合わせて、お金をコントロールして使って行くことができますからね。

「お金を貯める」ということは、そのためのトレーニングになるのです。

空気、栄養、時間、お金、etc……。

生きて行くために必要な資源がいくつもある中で、おそらく、一番容易に貯められるのはお金です。逆に言えば、お金はもっともコントロールしやすい資源だということです。

お金を貯めるというのは、そのコントロール能力を養う、効果的な方法なのです。

時間の流れを止めることはできません。

でも、お金の流れは努力次第で変えることができます。

お金をコントロールする力をつけることは、刻一刻と変化する世の中で幸せに生きるための、大切な備えの1つだと思います。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。